第42話 栗毛武道家、願いを託される。
「ラピスよ、たしかにお主は攻撃距離が短いのが難点じゃな。レベルも上がっておるし何かしらのスキルを取得してはどうかのぅ」
ミコさんにそう言われて私は考えます。思い出してみると、初期に振り過ぎたINT極振りの状態でアユちゃんとペア狩りが出来るようにとパッシブスキルでステータスを補うための武道家だった気がします。あとはパッシブスキルからの上位ステータス強化スキルがMPを大量に使うからだったような。
「⋯⋯そろそろ何か覚えてもいいかな?」
実際に前衛に必要なステータスポイントはもう十分に振れていると思います。また、スキルポイントを使って上げてきたパッシブスキル、STRとVITが上がる"オールウェイ・ストレングス"、"オールウェイ・バイタリティ"の二つのスキルはスキルレベルはカンストで、あとは使い込みで派生スキルが出てくるのを待つだけの状態です。スキルポイントが余った状態で戦っていたのに気付かされ、私が単純に武道家として踏ん切りがついていないことを自覚させられました。
「拳術の遠距離攻撃じゃと"空波拳"、"飛・正拳突き"とかになるかのぅ」
「なんかパンチが飛んできそうなスキルだね!」
「恐らくはどちらもその認識であっておる。スキルの威力や射程距離、命中範囲や溜めなどに差があるのじゃろうな」
ミコさんが自身のスキルウィンドウを見て二つの遠距離攻撃スキルを候補に上げます。同じスキルでしょ? という名前以外の差がぱっと見でわからないスキルが複数あれのはゲームではよくある事なのでそこは置いておきます。
「ねえ! 思ったんだけど拳術系統に拘る必要も無くない? ラピスちゃんはパッシブスキルばかりでスキルの派生は出てないし!」
「プリアちゃんってもしや天才!?」
「たしかに盲点じゃった。一度ナミノに戻って他の系統スキルも見てみるといいかものぅ」
私を含めたみんながハッとし、プリアちゃんの言葉に納得します。パッシブスキルは拳術に分類されます。しかし、職業が変わらなければスキル効果、この場合はステータス上昇値は維持されるのです。
『パッ! パッ! パパァーーーイヤッ!』
「なんじゃ!?」
「みんな伏せて! 放水 ッ!」
空から新たなトロピバードが襲って来ましたが、先ほどのと違う鳴き声に反応が遅れます。アユちゃんが牽制してことなきを得ます。
「降りて来ないねー」
「けど、上をグルグル回ってるから諦めてないっぽいかな」
「ふむ。ここは逃げるしかないかのぅ。トロピバードの遭遇場所はここで問題なさそうじゃし立て直して出直すとしようぞ」
ミコさんに皆が賛同し。私たちはナミノへと引き返しました。
「降りて来ぬ敵とはイヤなクエストじゃな⋯⋯」
「トロピバードって、⋯⋯あっ、果実鳥だから色々な種類がいて動きも違うのかな」
「そういえば、リンゴっぽいのがアッポーって鳴いてたね。聞きづらかったけど、さっきのはパパイヤかな」
「パパイヤ以外を狙えばよくない?」
「アユちゃん、多分無理! 出来るけどパパイヤにずっと狙われると辛いと思うよ!」
「となると、やはり遠距離攻撃スキルかのぅ。わっちは今、スキルポイントがないので覚えられぬが」
武道家のスキル系統は、拳術、弓術、槍術、剣術の四系統ありますけど拳術以外は武器を装備していないと基本的に使用できません。
「やっぱり今の私に必要なのは弓術かな」
「ラピスちゃんは弓術を選ぶんだ! それなら弓買わないとだね! あ、矢も忘れちゃダメだよ?」
軽くスキルを確認しようとして私は違和感を覚えます。その違和感を突き止めるためにスキルウィンドウをいじっていると、個別スキルから派生スキルまで戻るとスクロール出来る事に気づきました。
「⋯⋯弓術も取るけど、気になるスキルがあるから先に取らせてね」
そのスキルは七夕の願いが叶った結果だとスキル説明欄に書いてありました。
「回復ッ! 移動速度増加ッ!」
使える! この世界で聖職者スキルが使える⋯⋯。
「え!? 確か、加護スキルがないとラピスちゃんって聖職者のスキルが使えないんじゃ」
「なんでかわからないけど"夜天女神の加護"のスキルが出てて、取得したら本当に使えたの」
「なんとっ!」
「ラピスちゃん! おめでとう!」
武道家になる前に取得した回復に詠唱省略、移動速度増加を私は使えるようになりました。スキル取得時にメッセージが流れて応羽さんが私に加護スキルが取得出来るように願ってくれたと書いてありました。
「応羽さんってまさか⋯⋯。ううん、それは野暮かな」
七夕イベントで出会ったプレイヤー、応羽の正体は恐らくはあの時の神父さん。それは私だけが知る秘密です。
──────
[栗毛の聖女さんへ。あなたをあちらの世界で聖女にしてあげることはできませんが、他のプレイヤーと同じ聖職者、修道女としてのスキルの解禁は行われるべきだと調べて思いました。これは俺の願いです。]
メール機能は世界を超えることは出来ない。このメールは送信不可で戻ってくるだろうが、それでも願いの思いが伝わるように俺は栗毛の聖女に送る。ただの自己満足だがな。
と、思っていたらご機嫌な鳴海先輩がコピペしてメッセージとしてラピスに伝えたと言ってきた。⋯⋯恥ずかしくて死にたい。




