第40話 栗毛武道家、"カニッパーのハサミ"を集める。
『カニッ、カッニーッ!』
プリアちゃんが合流して、とりあえず納品クエストで"カニッパーのハサミ" 20個を集めるためにカニッパー狩りに出掛けした。
「───沈め! 泥沼 からのエアショックッ!」
『カ、カニーッ!?』
アユちゃんが砂浜に隠れているカニッパーの位置を特定して、今回は武道家の隠しスキルエアショックで叩き出します。
「ふんっ!」
「───正拳突きッ! 正拳突きッ! えいっ!」
『カニィ〜⋯⋯』
あとはこの前と同じ流れ作業で、襲ってきたところをミコさんが叩き落として私が弱点の打撃属性攻撃をして仕留めます。
「ヒール! お疲れ様だね。ちょっと気になったんだけどね、ラピスちゃんって拳突きしか覚えてないの?」
「うん。私、パッシブ型だから転職時に覚えたコレしかスキル使えないの」
戦闘が終わり、プリアちゃんは半分ほど減っていた私のHPを回復してくれました。極大消滅魔法の他に回復魔法のヒールしか使えないプリアちゃんですけど、ここに来るまでに聖職者として様々な人とパーティは組んできたようで、私の戦闘スタイルが気になるようです。
「そうなんだー! たしかにアユちゃんがいるから色々と攻撃スキル取るよりもそっちの方がいいかもね! うん、それにしてもいいパーティだね〜」
「ありがとう。私一人で対処出来ないことも、ミコさんがいるから安心してすぐに行動に移せるんだよ」
あれこれと今までの三人でのパーティの動きを外から見て、多少の被ダメを受けても対処できそうなところをプリアちゃんが意見を出しながら調整していきます。
「そうそう、ミコさんもそんな感じでもっと前に出てもらって大丈夫だよ! あっ。ラピスちゃん、この程度なら巾着袋は仕舞って回復は任せてね!」
「わかったのじゃ。被弾覚悟で踏み込む故、頼んだぞ」
「うん、それじゃあMPが持つならお願いしようかな。回復の優先度とか私と同じなんだね」
プリアちゃんは、ミコさんに安全な回避行動を行う動作時間も攻撃に回すように指示し、私はミコさんから借りている腕防具"次元の巾着袋"を装備したらそのまま殴っていいと言われました。
「私も⋯⋯、いつも後ろからラピスちゃんたちをただ見ていたわけじゃないからね! ──────それにラピスちゃんは私の憧れでもあるんだからさ!」
プリアちゃんのその言葉にみんなが小さく笑ったのが聞こえました。
「お主が憧れなら何の問題もないのぅ。安心して命を預けられるわい」
ミコさんはその言葉通り、そこからは自身の判断で限界まで張り付くような戦い方に変わり、アユちゃんも魔法発動までの詠唱時間や発動後の硬直時間の無防備になるため攻撃魔法を見送っていたところでも攻撃するようになりました。
「放水 ッ! ホーリーアドオンッ!」
『カニィ〜⋯⋯』
「"カニッパーのハサミ"は今、何個目?」
「これで 19個だよ。あと 1個っ!」
プリアちゃんを加えた戦闘は安全マージンの取り過ぎがなくなり、戦闘時間も安定して短縮されたため順調にアイテムが集まりました。
「やはり回復役がいると無茶が効くのぅ」
「自称・薬草娘だからね!」
「あははっ! この回復量とタイミング、VRゲーム初心者の私でも凄いってわかるよー。プリアちゃんが薬草なわけないじゃん、オート・ハイポーションくらいは名乗ってもらわないとね!」
狩りも終わりが見えてきたため緩い雰囲気で私たちは遊んでいます。いい感じのおバカな会話だなーと思いながらも、なかなかにミコさんもアユちゃんも打ち解けていて私はホッとしました。
「最後、私が決めちゃうね! アユちゃん、お願い!」
「りょーかい! ───沈め! 泥沼! って、カニッパーが 4体もいるよ!?」
「大丈夫、これで終わりなら任せて!」
必要なドロップアイテムが残り 1個となったためにプリアちゃんは極大消滅魔法を使うようで、アユちゃんは遠当てを使わずに時間経過の酸欠で出てくるまで魔法を発動させたまま放置します。
「⋯⋯慈悲なき慈悲、光こそ無への誘い、全精神力を糧とし、信仰の力にて陽光を集め玉と為す。───下級極大消滅魔法・陽光消滅玉ッ!」
『カ⋯⋯ニ⋯⋯』
プリアちゃんの頭上に出来た巨大な光の玉はカニッパーたちの潜む密集地帯に落ちていきます。泥の中から小さな悲鳴が聞こえてカニッパーたちは消滅しました。
「あはは⋯⋯、みんなごめんね! あとはお願い!」
残念ながらプリアちゃんのMPを全て消費しての攻撃はカニッパーを消滅させられましたが"カニッパーのハサミ"はドロップしませんでした。
「任されたのじゃ! ラピス、アユよ、行くぞ」
私たちが何回か殴らないと倒せないカニッパーを範囲攻撃で同時に一撃で倒したプリアちゃんの魔法は切り札になります。けれどMP全消費のデメリットは重く、討伐クエスト以外ではこのような事態も想定しておかないといけないと私たちは記憶しました。
「ラピスちゃん! 物欲センサーって怖いね!」
「うん。けど、いつものことだからねー」
プリアちゃんは笑っていましたけど、ほんとに怖いですね。けど、よくある事なのです。
「やったー! 落ちたよっ!」
アユちゃんの叫び声と共に 20個目の"カニッパーのハサミ"を手に入れ、私たちは湾岸都市ナミノへと帰還するのでした。




