第39話 栗毛武道家、"薬草娘"が仲間になった。
プリアちゃんと再会し、立ち話もあれなので私たちは喫茶店にやってきました。
「ひゃー、すーずーしーいー」
プリアちゃん、少し性格が変わったかな? ここまでオーバーリアクションする子じゃなかったと思うけど……。
まぁ、|ロールプレイングゲーム《RPG》ですしコンバートをしたけど聖職者として1からプレイする上で何かあったのかもしれないですね。
「って、ラピスちゃん。そういえばなんでゲーム内で暑いとか寒いを感じるの?」
「それは、ちょっとリアルな話になるんだけど。VRヘッドとVRゲーム機本体を繋ぐケーブルって何本もあるでしょ? その中には冷却用の空気を送るためのケーブルもあってね、VRヘッドが高温になって火傷とかしないように温度管理機能が付いてるの」
「もしかして、熱い場所や涼しい場所ではVRヘッドの温度を冷やすための設定温度を調整してる?」
「正解! アユちゃん、理解が早くてすごいね。今すぐにログアウトすればVRヘッドはひんやりしていると思うよ」
「へーそうなんだ。ちょっと確認してくる!」
アユちゃんの暑さや寒さを感じる理由を説明してあげると確認するためにログアウトしていきました。
「あやつは……まったくもってせわしないのぅ。それにしてもラピスよ、お主は詳しすぎじゃなかろうか?」
「昔にカゲミツさんからちょっとね」
「あの頃のラピスちゃん、一日中ずっとログインしてたからねー。みんな心配してたんだよ?」
「プリアちゃんもごめんね。それと、心配してくれてありがとう」
「友達だから当然だよ! あんな子も側にいるんだもん、今ならリアルも心配してないよ!」
長時間ログインは排熱機能の低下を招き、プレイ時の映像処理機能を低下させて遅延が発生します。それによって回復スキルが遅れて、モンスターからの追撃に間に合わなかったりしたためカゲミツさんに相談したことがありました。
『お前のそれは長時間ログインのしすぎだ。技術が進歩して熱処理技術が上がろうが限界はある。……俺がVRの技術的なことを教えてやる。VRMMORPGをプレイするなら仕様や原理を知っておけば仕様の裏をついた効果的な支援の順番や、VR機器のコンディションや設定の最適化による快適なプレイが可能になるだろうからな』
時間ならあるだろ? と、笑いながら私に色々と教えてくれたのです。前にアユちゃんに話した視覚と聴覚を追求してVRをよりリアルにしていることもその時に教えてもらった知識です。
「ミコさん。プリアちゃんとアユちゃん、それにセピアさんは知ってるけど、私って学校には行っていない、いわゆる不登校ってやつだったんです。みんなのおかげで今は高校に行けてますけど、みんなの助けには感謝しています。おかげでリアルのアレコレにも興味を持てましたし」
エミルさんは居場所を、セピアさんは勉強を、プリアちゃんは流行りを、ジャスターさんは男はバカだってことを、カゲミツさんは知識を。そして、アユちゃんは学校での処世術を。
「なるほどのぅ。⋯⋯お、バカ娘が戻ってきよったわい」
「ちょっと! 私がいない間に何を話してたの!?」
「アユちゃんも、ありがとう」
そんなことを話しているとアユちゃんが戻ってきました。意味がわからないといった顔で何故か私がむぎゅーっとされました。
「さて、現状を振り返ろうかのぅ。わっちらはお金がなくて装備が買えぬ」
「レベルも足りなくてクエストもほとんど受けられないね」
「うむ。その状態で狩りを続けるのは回復アイテムも足りなくなると判断したわけじゃ」
ミコさんとアユちゃんがプリアちゃんに今の私たちの問題を説明していきます。
「そこに聖職者の私が現れたわけだね! 薬草役なら任せて! それ以外は私に求めちゃダメだからね?」
今のプリアちゃんの話を聞くと、ステータスは知力に大半を振っているようですが、防御面で体力にも少なからず振ってあるらしいです。
「プリアちゃんならINT極振りだと思ったけど違うんだね」
「ラピスちゃん、極振りなんてものはラピスちゃんが支援してくれてカゲミツさんがいたたからできたんだよ?」
「それわかるかも。ラピスちゃんとミコさんが周りを見て危なそうなら指示くれるし、HPも赤くはなってもやられたことはないから極振りのままでいいかなってなるよね」
「自衛のためにVITに振るのが普通じゃしな」
そっか、最大火力を追い求めるプリアちゃんが極振りできなかったのは私のせいなんだ⋯⋯。そんな風に考えたのがバレたのかプリアちゃんが少し不機嫌になりました。
「普通はそうなんだよ? それにカゲミツさんはこの世界に来ていないからラピスちゃんだけじゃフォローできない攻撃も出てくると思ったし」
「なんじゃ? わっちを見て」
「セピアさんから聞いたよ? カゲミツさんとやり合っていい勝負をしたって」
「カゲミツ殿にはまだまだ及ばんよ。手合わせして積み上げた技術の差はわっちにもわかったからのぅ」
「そんなことないって! ミコさんも凄かったよ!」
謙遜するミコさんをアユちゃんが持ち上げます。私から見てもあのカゲミツさんとあそこまでやれる人は見たことがありませんでしたのでミコさんは実際に凄いのです。プリアちゃんもカゲミツさんがどんな人にも手を抜かないのを知っているので話しか知らないミコさんの実力を認めているのでしょう。
「だから私は⋯⋯、今からはINT極振りでいくね!」
プリアちゃんは昔の話し方とテンションに戻ります。それはこのメンバーなら前と同じで好きに最大火力を追い求められると思ったからだと後で聞かされました。
「改めて私はプリア、回復魔法の系統スキルは回復のみです! だけど薬草くらいにはなれるでしょ?」
確かに回復アイテムで困っていた私たちには文字通りの渡りに船でした。アユちゃんもミコさんも問題なさそうなので、プリアちゃんを新たにパーティに加えて私たちは納品クエスト件レベル上げに出掛けます。




