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第29話 栗毛武道家、カザグルのクエスト完全制覇する。

 ダンジョンのボスであるフワマリンネを討伐した私たちはフワマリンネが消えないことが気になり祭壇を調べることにしました。


「ねー、ラピスちゃん。何かあった?」

「こっちには何もないよー」

「あちら側も何もなかったのじゃ」


 祭壇の外周を見てきたミコさんも成果なしのようです。となると⋯⋯。


「このフワマリンネに何かあるのかな」

「色も変わったしのぅ、何があっても不思議ではなかろう」


 禍々しい渦模様が消えて、今では鮮やかな水色に染まっているフワマリンネに3人で近づきます。


「やっぱり変化ないよね」

「ま、最初に調べたしね。ラピスちゃん、忘れないうちに"腰巾着"返した方がよくない?」

「あっ! ごめんなさいッ! ミコさんがコレを貸してくれたおかげで倒せました。ありがとうございました」


 慌ててお礼を言いながら装備を渡そうとしましたが、受け取ってもらえません。


「よい。ヒーラーの仲間が入るまでお主が持っておれ」

「え、けど⋯⋯」

「その代わりじゃがな、回復アイテムの補充は任せたぞ? そいつは消耗品アイテムが多く入るだけでアイテムが沸いて出るわけではないからのぅ。───金食い虫じゃぞ」

「あっ⋯⋯、アイテム代⋯⋯」

「それも良いわ。"フワマルの宝玉"は本当に助かったからのぅ、時は金なりじゃよ。⋯⋯それにラピス、お主に貸しただけじゃからな。勘違いするでない」


 そう言ってミコさんはボス部屋から出るために歩き出してしまいました。


「ほら、ラピスちゃん。こういう時は一言でいいんだよ。それが子どもってヤツでしょ?」

「アユ、お主⋯⋯。まぁよい、そういうことじゃ」


 ミコさんはアユちゃんの物言いに呆れて振り返りました。ここで言うしかないよね?アユちゃん。


「ありがとう!」


 私は最高の笑顔でミコさんに"ありがとう"を飾らずに伝えます。


「それでよい。ではゆくぞ」

「アユちゃんもありがとう」

「どういたしまして〜」


 アユちゃんにもお礼を言い、ヘラヘラとしながら何故かぎゅーとされました。そんなこんながありましたが、私たちはガザグルの街へと戻ることにしました。


──────


「まさか日を跨がないとクエストが進まない仕様とは驚いたね〜」


 翌日に、再び私たちはフワマリンネの祭壇を訪れていました。


「町長さんが封印術師が云々言ってたってミコさんが話してくれてとからね。一応、町長さんのところに戻って正解だったね」

「わっちはNPCの無駄話も好きじゃが、お主らまで付き合う必要はなかったのじゃがな」


 少し申し訳なさ気にミコさんがそんなことを言いますが、そもそも岬の地下ダンジョンに入る方法などを考えたら最後まで私とアユちゃんも聞いておくべきだと思って町長さんの長話を聞きました。


「覚悟はしてたけど、余談が20分は長過ぎじゃない!?」

「まあまあ、アユちゃん落ち着いてー。ミコさんにまた教えてもらうのも悪いし、3人で聞けば何か糸口が見つかるかもってアユちゃんが先に言ってたよね」

「そうだけどさー。町長さんの一方的な話を聞くのは拷問だよ。せめて会話っ! 会話形式にして欲しかったよ」

「お主らとおると退屈せんな。いつもこんなかの?」

「最近は、かな? VRゲームを満喫しようと思ったら、ただ効率的に戦ってレベルを上げるだけじゃVRじゃなくてもいいかなって」


 アユちゃんとの冒険があったから、ミコさんとも出会えたし、前よりもっと素の自分を出せるようになった気がします。


「それはともかく、フワマリンネも回復したはずだし早く見に行こうよ。そうだ! 岬からの歩数を数えずにこの街道からダンジョンの入り口を当てるゲームしない? 一番遠い人が1日だけ一番近い人の指定した喋り方に変えるって罰ゲーム付きで」

「負ける気はせぬし、よいぞ。わっちは乗ってやろう」


 北の岬へ向かう街道を歩きながらアユちゃんが思い付きでゲームを提案して、ミコさんも乗りました。


「私も乗った! ミコさんにお姉ちゃんって呼んで貰うの楽しみかな」

「なぜわっちが負ける前提なのかは置いておくが、手加減はせぬぞ」

「二人ともノリがいいね! 大好きッ!」


 アユちゃんが私とミコさんを左右にして肩を抱いてきました。


──────


「ラピスお姉ちゃん、このフワマリンネは移動用モンスターだったみたい」

「そうなんだ〜。ミコちゃんはフワマリンネに乗ってどこにいきたいのかな?」


 ミコちゃんが可愛い。それだけを考え、私は他に何も考えないことにした。たぶん、間違いなく今の私はミコちゃんにデレデレです。


「ほら、ラピスちゃんも自分で確認してね」


 アユちゃんに剥がされて渋々フワマリンネと会話します。


「なるほど、移動先は他の大陸ですか。ワクワクしますね〜」

「ラピスちゃん、行き先の一番下見てよ」




 【七夕限定】コンバート元の世界への移動




 な、なんでしょうか。織姫と彦星的なアレでしょうか。私はナツキさんとエミルさんが頭に思い浮かんで、急いで"セピア"さんにこの情報を伝えました。


 カザグルの街での全クエストクリアが条件なのでレベルが高くても耐性持ちとは必ず戦わなければならないし、七夕まで1週間もなかったため私たちも手伝いました。セピアさんはフワマリンネの討伐までクリアし、ついに七夕を迎えました。

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