第26話 栗毛武道家、狐耳と正式にパーティを組む。
岬の先端から南へ30歩、西に20歩の場所で"新風の証"を地面に押し付けることで開かれる平野にある隠し階段を降りて、岬の地下ダンジョンでミコさんと情報共有しながら流れで岩に座って今は雑談をしています。
「パーティなんぞ組んでも、雑談でもなければ他人をお助けキャラ程度にしか思うまいて。その点、そなたらはパーティと言うものをようわかっとる」
町長の長い話は大半が無視してよい内容で、報酬のアイテムは先渡しのため、ミコさんのパーティメンバーは会話の途中で離脱したそうです。ですがミコさんは残ったため、遊び方の方向性の違いからパーティを追放されたと言っていました。
「あはは⋯⋯。NPCとの会話を全部聞きたいくらいVR世界を楽しみたい人と効率よくモンスターを狩りたい人って一緒に行動するの難しいよね。⋯⋯私もほんの少し前まで葛藤があったからさ、わかるよ」
「ラピスちゃんは両方に折り合いを付けたんだよね」
「ほう。若いのに立派じゃな。我を通すだけでは生きていけんからのお」
ちなみにその長い会話の終盤に、このダンジョンへ入るヒントが隠されていて、問題の部分は以下の通りです。
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[入口は先端から南へ 30歩、そん時の封印術師様がな〜、いやー、ラーメン食べたいなんて言うもんでな? 伝統の木打ちラーメンを食べさせてやったんじゃよ。あの麺の出来は我が生涯でも5本の指に入るコシの強さを持った逸品じゃった。そしたら封印術師様がな、そこから西に20歩いこう。と言い出してな。なんも目印のない草むらに入り口を作ることになったんじゃ。いやはや、ワシらも場所を忘れてはいかんと思って岬への街道は整備したんじゃがな、下手に目印を立てて悪き者や力無き者にアレの封印を解かれるわけにはいかん。思い出したのじゃが、平野の木に実っとるウパの実はMP回復効果もある貴重品じゃ、1日に一つしか手に入らぬが良かったら取っていけ。あぁ、話が脱線したな。それ故に町長であるワシがそのバッジを授けた者のみが入れる隠しダンジョンを作成したのじゃ。とにかく、ワシらも場所はよく覚えてないし、それを探すのが冒険者じゃろ。⋯⋯北じゃ、北へいくのじゃ]
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「そういえば、ミコさんってさ。前にフワマルを殴ってた時は狐耳じゃなかったよね?」
アユちゃんの言葉に私は首を傾げます。えっと、ミコさんとは初対面だと私は思っていたのですけどアユちゃんは面識があったのでしょうか?と。
「アユは記憶力がちょっとおかしくないかのお⋯⋯。確かに、こんなダンジョン故に"狐月の慶祝"を外し忘れたままでそなたらに会ってしまったがな、わっちはこの世界に来てフワマルを素手で殴っておったのは一週間ほど前のことぞ? それなのに見ず知らずのわっちのことを覚えているとは⋯⋯恐れ入る」
「人を覚えるのは自信があるんだー。それにその時のラピスちゃんも似た感じだったからさ、ミコさんの戦ってる場面の印象は特に残ってるんだよねー。回復薬をいっぱい投げてたし」
アユちゃんの言葉をヒントに記憶を辿ると、カザグルの街についてすぐにフワマル討伐のクエストを受けた時に一人で戦っていた武道家の少女がいたのを思い出しました。
「あー、あの時の女の子のことだよね。こんな古風な喋り方とは知らなかったけど」
ちなみに見た目は狐耳少女のミコさんに私たちはラピス、アユと呼び捨てにされていますが、もし本当に年配の方なら仕方がない、違ってもそういうプレイだと解釈して気にしないことをアユちゃんとメールで決めています。
「まあ、あれを見られて"狐月の慶祝"も見たなら察しはついておるのじゃろう。わっちは、妖仙世界からコンバートしてきた呪術師じゃったんじゃ」
「過去系ってことはミコさんもラピスちゃんと同じ感じ?」
「同じとはなんじゃ?」
「えっと、私は──────」
聖女としてコンバートしてきたら信仰心が違うということで聖職者スキルが発動しないことを説明し、今は武道家として遊んでいることを伝えました。
「それは難儀じゃのお。わっちも似たようなものじゃが、そこまで酷くはないぞ。呪術師は護符を触媒にスキルを発動するんじゃがな、護符がこの世界でNPCから買うことができんのじゃ。それ故に武道家に転職をしたわけじゃよ」
「私には違いがわからないけど同じじゃないですか?」
「アユちゃん、違うんだよ。私はスキルを使えない。ミコさんはスキルを気軽に使えないけど、使うことはできる。この差は大きいんだよ」
アユちゃんに、ステータスの話をした時に教えた職業外スキルの説明を交えてもう一度します。
「他職で覚えたスキルは威力、効果時間など8割減で使えるんだよ。夜天世界にはなかったけど、呪術師ってたぶん状態異常特化だから隙を作るのに便利だと思う」
「⋯⋯ほう、ラピスも只者ではないか。それにじゃ、確かに今は買えぬが、生産職の職業が解禁されればまたスキル回数を気にせずに使える可能性はある。そこまで考えておるのじゃろう?」
私はミコさんの言葉に頷きます。
「はっはっはっ! 愉快ッ! 実に愉快じゃッ!
わっちは武道家の 小倉 ミコ じゃ。ラピス、アユよ、正式にわっちとパーティを組もうぞ」
しばしの沈黙は突然の笑い声で破られました。私もミコさんと話てて楽しいし、アユちゃんはアユちゃんで楽しそうです。
「ミコさん、よろしくお願いします」
「下手な敬語はいらん。いらんが、ラピス、お主の話しやすいように話してもらって構わぬよ。───パーティメンバーとは仲間であるからな」
こうして私たちは正式に3人でパーティを組み、ダンジョンを進み始めた。




