第25話 栗毛武道家、成り行きでパーティを組む。
「ねえ、ラピスちゃんは気にならない?」
「あー、やっぱり? フワマルの爆ぜる音ってことは誰かが近くで戦ってるよね⋯⋯。見えないけど」
寝そべりVR世界を堪能して、周りの音が良く聞こえていた分だけそのパーンッと言う音が気になりました。
「よっと。それじゃ、そろそろ起きよっか」
「んっ、ありがとう。ちなみにさ、アユちゃんも音の出所の目星はついてるよね?」
「もちろんっ!」
アユちゃんに手を引いて起こしてもらい、二人して岬の先端へ向かいます。
「これは⋯⋯、なかなかだよね。落ちたらどうなるのかな」
「たぶん死亡判定だろうからモンスターにやられた時と同じで復活地点登録してある街とかに戻されるだろうね」
「ってことは経験値減少のデスペナルティもありそうだね」
「ならちょうどレベルアップしてたら落ちようかな」
「⋯⋯アユちゃん? 紐なしバンジーとか頭大丈夫? いくら現実じゃないVRでも友達の飛び降り自殺を私は見たくないかな」
個人の死亡判定後 60秒経過か、パーティメンバーの全滅判定後 15秒経過すると、次のレベルアップまでに必要な経験値の 3%を失います。しかし、必要経験値はマイナスにはならないのでレベルアップ直後の死に戻りや、強敵への挑戦するなど、この時はわざと死亡判定を利用するのが一般的です。ですが、アユちゃん⋯⋯その死に方はやめてほしいです。
「⋯⋯それはともかく。近くに降りられそうな階段とかはないんだよねー」
「やっぱり飛ぶ?」
「アユちゃん⋯⋯。自分を大切にしないと私、嫌いになるよ?」
「ごめんごめんって! ラピスちゃん、だからそんな微妙に距離取らないでよ〜。んー、まじめに考えてみたけど、近くに人がいるならその人に聞いてみるのも手じゃないかな?」
「どこにいるかわからないのに?」
「そこはほら、フワマルの爆ぜる音が聞こえるんだから叫んだら向こうにも私たちの声が届くかもだし、こうやって───フワマルと戦ってる方ーっ! 聞きたいことがありまーすっ! 私の声が聞こえていたらーっ! 返事をお願いしまーすっ!」
そう言ってアユちゃんは海に向けて大声で叫び、反応を待ちます。
ピコン。
【"小倉 みこ" よりパーティ加入申請が届きました。パーティへの加入を許可しますか?】
「ねえ、アユちゃん。周りに人っていないよね?」
「そだねー。見える範囲には誰もいないと思うよ」
「"小倉 ミコ"って人からパーティ加入申請が届いたんだけど、受けて大丈夫かな?」
突然届いたパーティ加入申請に、どうしたものかとアユちゃんに確認を取ります。ちなみに、パーティはリーダーからのスカウト機能による相手の承認、もしくはメンバーの誰かへの加入申請がリーダーへと送られて許可することでパーティに加入できます。そのため、迷惑行為でブラックリスト入りしていたり、何度拒否しても申請してくる悪質なプレイヤー対策でブロック機能もついていたりします。
「直接返事もないし、タイミング的にその人で間違いないんじゃない? OK押そうよ」
「うん。それじゃ押すね」
【"小倉 ミコ" がパーティに加入しました。】
『初めまして。あなたがこの付近でフワマルを倒していたプレイヤーの方ですか?』
『そうじゃ。礼儀正しいのお。わっちは大声で叫ぶほど若くはないのでな、パーティ会話を使わせてもらうぞ』
パーティ会話は、パーティメンバーとのプライベートチャンネルでの会話で、距離を無視して話ができる利点があります。ただし、聴覚の処理能力的に通常会話が遠くの雑音のように聞こえてしまうのと、独り言のようになってしまうので、パーティメンバーが近くにおり、戦闘音や人の多い街中での会話の時に使うのが一般的です。
『とりあえず聞きたいことはなんじゃ?』
『えっとですね⋯⋯』
私は、町長さんに北へ向かえと言われてここにきたこと、何も見つけられなかったこと、そんな時にフワマルが爆ぜる音が聞こえてきたことを話しました。
『なるほどのお。何があるか、どうやってわっちのところまで降りていくのかがお主らはわからんからそのような奇行に及んだわけか』
小倉 ミコさんは笑いながら納得したようで、そうして私たちは下に降りるその方法だけを教えてもらえました。




