第22話 栗毛武道家、討伐クエストを受ける。
昨日は風車の街・ガザグルに着いてすぐにログアウトしたので今日は、アユちゃんと私は二人で手分けしてNPCに話しかけてクエストを探しました。ちなみに同時に受けられるクエストは最大15個までで、それ以上はクエストを破棄しなければなりませんし、破棄したクエストは一からやり直しとなるようです。
「アユちゃーん、こっちこっち」
「わかったー。すぐいくー」
「この人から受けられるのはフワマル15匹討伐かー」
この街でクエストを初めて受けた時にNPCの青年が説明してくれたのですが、この世界はクエストクリアでステータスをごく僅かながら獲得できるようです。ゲームを楽しんだ人ほど強くなれるシステムになっているようで私はこの|GOD・F・オンライン《GFO》がより好きになりました。
「アユちゃん、今のレベルは?」
「 6に上がったところだよー」
「私は今 8だけど筋力18、知力26になったくらいのはずだから少しは戦えるかなってレベルかな?」
「ラピスちゃん、ステータスとか覚えてるの?」
「計算が複雑にならない最初だけだよ。ちなみにアユちゃんは初期ポイントの20と合わせてINT38ってとこかな。道中のモンスターのHPを考えると魔法耐性持ち以外ならある程度はワンパンいけそうだね」
極振りの時は気にしませんでしたがレベルが 1つ上がるたびにステータスポイントが貰え、最初は+ 3、10レベルごとに+ 1ポイントづつ上昇値が増えていく仕様で、現在のレベルとストックしてあるステータスポイントは確認できますがステータスに変換されると数値は見えなくなります。
つまり、現在のステータスはプレイヤーから確認する術はなく、クエストで得られるステータスもわからないため取捨選択して効率的に必要ステータスのみ伸ばすのは困難な仕様となっています。
「ね、私またフワマルに会いたいな。一日 1フワマルで」
「⋯⋯アユちゃん、私が 1ダメージしか出せないの知ってて言ってるでしょ」
「あははっ、必死なラピスちゃん可愛いからしょーがないよー。フワマルも可愛いから会いたいってのもあるけどね」
「まあ、アユちゃんが倒してくれるから問題ないけどさ。とりあえず初の討伐クエストだし、アユちゃんご希望のフワマルにいこっか。慣れてるしどこにいるかもわかるからね」
アユちゃんが楽しそうならそれでもいいかなという理由以外にも、クエストで討伐を求められるモンスターで私たちの戦ったことのないモンスターは強さがわからない他、どこにいるのかわからないという致命的な問題もありましたので最初の目標をフワマルに決めます。
「やったー!」
「ほら、いくよー」
「りょーかいっ!」
生息域に辿り着くとちょこちょこと戦闘中のプレイヤーの姿を見かけました。
「みんなやってるねー」
「あははっ!見て見て。あの子も武道家でラピスちゃんみたいにフワマルを素手で殴ってるよ」
アユちゃんに言われて見てみると恐らく 1ダメージを積み上げながら回復薬を定期的に投げて生命力を回復しながら長期戦をしているであろう素手で戦う武道家の少女がいました。恐らくと付けたのはダメージは自身とパーティメンバーしか見えないからなので推測になりますが耐性持ちなので間違いないと思います。
「あっ、あの子、かなり回復薬使ってて辛そうだけど手助けした方がいいかな?」
「アユちゃん。オンラインゲームではね、助けを求められていないならモンスターに手を出すのはマナー違反なんだよ」
「そうなんだー、もどかしいね」
アユちゃんが『うーうー』言いながら見守っていますけど、そんな子がいたら誰かしら手を貸すのは世の常なのです。
「あっ! あそこの修道女の人が何か魔法を使ったの? 何か光って回復薬を使わなくなったよ」
「正解だよ、よくわかったね。防御光幕、防御力強化の魔法だね」
「ねぇラピスちゃん、手を出しちゃダメなんだよね? アレはいいの?」
私がアユちゃんを止めたのに修道女の人の支援はいいのか。そんな疑問に私は答えます。
「うん、あれはいいの。私は"モンスターに手を出すのは"マナー違反だって言ったんだよ。戦ってる人を支援して応援する分には問題ないんだよ。⋯⋯まあ、パーティ組んでる人たちへの支援はあまり良くはないんだけどね」
「それはなんで?」
「詳しいことはそのうちに教えるよ。大人数パーティを組むようになれば自然とわかるから」
「そっか。そうだねっ! 色々な人とパーティを組んで冒険するのもオンラインゲームの醍醐味だよね! あの子もさっきの人に声かけてもらってパーティ組んだみたいだよ」
ふと目をやると戦闘は終わっており、さっきの修道女の人とパーティメンバーらしき剣士の男が武道家の少女に声をかけているのが見えました。
「たしかにクエストをクリアしていくなら他の人ともパーティ組んだ方がいいかもね。私たちで対処できないモンスターもこれから出てくるだろうし」
「そうなの? ラピスちゃん、壁って言うのかな? 前衛として頼もしいと思うけど」
「私はコンバートで持ってきた指輪だけで防御力+ 11に通常攻撃耐性もあるからね。簡単に言えば攻撃力 13以下のモンスターからの通常攻撃は全部 1になるんだよ。ただ、ステータスポイントを体力に振っていないから生命力は初期値だし、モンスターが強くなってダメージが 1から 2や 3に増えただけでも耐えられないんだよ」
今はまだ大丈夫なだけで壁またはタンクと呼ばれる攻撃に耐える前衛としての限界はすぐにくると私は思っています。
「それに、アユちゃんもクエスト制覇したくない?」
「もちろんしたいよ!」
力強い返事、クエストがあるなら見つけたのは全部クリアしたいよね。それがゲーマーだもん。
「私がフワマルにダメージが与えられないみたいに私たちの攻撃が通じない耐性持ちがそのうち出てくると思うんだよね」
「それは私も思ってる。ラピスちゃん、パッシブスキルを伸ばすために素手縛りになっちゃってるしね」
「まあ、そんなとこ。武器を使ってもいいけどスキル取る気ないから弱いと思うし」
「と言ったラピスちゃんでしたが素手縛りはお金がないからでした」
「アユちゃん、もう忘れよ? それっぽい理由があるんだからいいじゃん」
ウインドウショッピング事件、私はこれを闇に葬ります。
「とりあえずフワマル討伐クエストをクリアしよっか」
「おっけー」
フワマル 15匹討伐を終わらせてから街に戻り、クエストクリアの報告をして私たちは報酬を貰いました。
「とりあえず今日はここまでだねー。明日は二つくらいクリアしたいね」
「うん、また明日だよ! それじゃあおやすみー」
「おやすみー」
ドロップアイテムの精算も終わり、今日は解散しました。
「さて、ノルマをこなしますか」
フワマル討伐クエストは何回でも受けられるようで私は受注して生息地に再び向かいます。自分に課したノルマなんて本当はないのですけどとりあえずフワマルを殴ってスキル熟練度を上げます。
「えいっ、正拳突きっ、えいっ、正拳突きっ、えいっ、正拳突きッ!」
非効率ながらも フワマル15匹討伐クエストの 2回目をクリアしましたが、そこで強烈な睡魔に襲われて今日は寝落ちしました。




