第20話 茉実、紅碧毛との出会いを思い返す。
スキルを覚えて色々なモンスターを倒す。違う街へ向かう。そんなロールプレイのゲームとしての醍醐味を体験して私は高揚感に包まれていた。
「視界も音もリアル! そして自由に冒険している感じ! これがVRMMORPGなんだ」
ラピスちゃんがフワマルに焦った顔や、イワマルやヨウチューにダメージが通って嬉しそうにはしゃいでいた場面をこっそりとスクリーンショットを取って、今はそれをタブレット端末で眺めています。
「一緒に冒険できて楽しいよ。───ラピスちゃん、本当にありがとう」
私はSSを見ながらゲームを始めたきっかけについても思い返していきました。
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彼女の輝く髪がとても綺麗で好きだ。
光で照らされるそれはシルバーブランドに青みがかかり、見方によって赤みを帯びる長い髪は紅掛空色、別名"紅碧"とも言う色をしていた。暗い場所では青みが更に強まりるがそれはそれで美しいと思う。
そんな彼女はラピス・ラズベリー、私の大切な友達だ。
私、孤島茉実は転勤族の父に付いて一家で頻繁に転校を繰り返してきた。多くの学友と過ごしてきた私から見て、彼女は比べる対象がいないほどとても可愛いかった。
「私、ラピスって言うの。ハーフでお父さんが外国人なんだ」
そう言って初めて声をかけてくれた彼女の声は震えていた。周りからの視線、それは好奇であったり気味の悪いモノを見るような悪意を孕んだものだった。
『あの幽霊女、可愛くなったよな』
『けど根暗だぜ? オレは無理だな』
『何年も学校に来ていなかったのに高校デビューとか当てつけかしら』
『声なんて初めて聞いたかも』
陰口は私の耳に入ってきます。もちろん、彼女の耳にも。
私は中学卒業と同時に引越しが決まっていたので、高校は引越し先から通える高校を選んでいたので彼女の小・中学生時代を知りません。けれど、こんな可愛い子が勇気を出して話しかけてくれているのはそんな"私"だからなのだとわかります。人間関係を何度もリセットしてきた私だからわかります。
一から人間関係を私と本気で築いていきたいのだと、私はわかります。
重い高校デビューの紅碧毛の女の子と、見知らぬ地で知り合いのいない私。ぎこちなくとも少しづつ話が続くことでラピスちゃんの緊張は溶けていきました。
「やっぱりラピスちゃんって笑うと可愛いね、もっと笑えばいいのに」
彼女が明るくなるにつれ、好奇な視線を送っていた人を虜にし、悪意を孕んだ視線を送っていた人はさらに悪口を露骨に言うようになりました。
転校を繰り返した私はいつもクラスの"アイドル"でしたから、人心掌握はどうやったらいいかもわかります。入学してしばらくする頃には私中心のグループを作り上げてラピスちゃんを持ち上げながら守ります。
彼女の過去は知りません。不登校だったという噂話は聞いた事がありますけど、その先は?その時に手を差し伸べなかったのはあなたたちでしょ?周りの子たちは悪意は持ってないし、今のラピスちゃんを好ましく思っていると思うけど信用はしていない、私は絶対にこの子を守る。だから私は"アイドル"のまま卒業まであり続ける。
そんな関係が変化したのは割りとすぐで、私が書店でゲームの雑誌を読んでいる時でした。
「狐島さんもゲームやるの?」
も、ってことはラピスちゃんも好きなんだ。そりゃそうか、前まで不登校だったんだから家で何をしてたかなんて限られてるよね。失礼だと思いつつもそんな結論が導き出されます。
「うん、RPGが好きなんだよねー」
「あ、それ、新作VRMMORPGのページ⋯⋯」
「お母さんを説得してお父さんにVRゲーム機を入学祝いに買って貰えるから、せっかくならオンラインゲームやりたいなーって」
「それなら私が───」
そこからマシンガントークをしてきたラピスちゃんは、何日もかけてMSOというプレイしているゲームの話をしてVRMMORPGの良さを語りました。
けれど、私が実際にVRゲーム機を買って貰えるころには自分がやっていたゲームからコンバートという機能を使って、私のためにサービスが開始されて日が浅い私の気になった新作ゲームに移動してくれると言い出しました。
「けどいいの? 私がそのMSO? ってゲームを始めても一緒に遊べるよ?」
かなり悩んだはずです。ゲーム内のフレンドやギルドメンバーとかの話も聞いてましたし、ラピスちゃんにとって大切な人たちのはずですから。
「その人たちから言われたんだ。せっかく出来た友達なんだから私がおんぶに抱っこは違うだろって、せっかくなんだから一から一緒に遊んでこいって、成長したんだろ?なら俺たちがいなくても大丈夫って見せてみろよって、どこにいても私たちは大切な友達だって」
目を瞑り、思い出しながら何人かから言われた言葉をラピスちゃんは呟きます。
「うん、これまでも話に聞いていたけど本当にいい人たちだね! ならお願いしていいかな? VRMMORPGの遊び方、ラピスちゃんに教えてもらっても」
「───うんっ! 任せて! コンバートのやり方とか調べてくる。⋯⋯茉実ちゃんと一緒に遊べるの楽しみだよっ!」
その人たちの想いを無駄にしないために、私はこの子と全力でゲームを遊び倒す。そんな決意を秘めて小さな体を抱きしめて耳元で囁きます。
「ありがとう、ラピスちゃん」




