第18話 栗毛武道家、夜更かししてしまう。
アユちゃんが落ちた後、私は 1人でフワマルの生息場所に足を運びました。
「ネットゲーマーなら誰でもやるよね。熟練度稼ぎ」
スキル攻撃や補助魔法は普通にプレイしていても熟練度は上がります。ですがパッシブスキルは常時能力向上という特性上、熟練度を上げるためには倍以上の戦闘中に攻撃した回数やダメージを受けた回数が必要になるため、安全に黙々と殴れるモンスターがいるのならやらない手はありません。
「いたいた。それじゃあ殴り続けようかな」
フワマルには私の与えるダメージは1なので倒すまでに時間はかかりますが、モンスターを探す手間が減るというメリットにもなるのです。
「えいっ、正拳突きっ、えいっ、正拳突きっ、えいっ、正拳突きッ!」
INTに振ってある分、通常攻撃の間に正拳突きを挟んでも私のMPが枯れることはありません。
「ふー、様になってきたかな?」
さっきも出来たけどアユちゃんに笑われるからね、腰が入ってなーい!とか言って。だから少し 1人でVRの練習をしたかったのも理由にあります。
「魔法職と違って動けと思って体を動かすから慣れるまでやっぱりぎこちないし、武道家はAGIに振ってヒットアンドウェイが基本らしいけど反撃を受ける前提でVITにもステータスを振るべきかな?」
深夜は落ち着きます。私はネトゲ廃人時代は夜行性でした。なぜ、廃人と呼ばれるコアなプレイヤーは夜行性になるのか?
「っと、またパッシブスキルのレベルが上がった。やっぱり無心で狩り続けるのは深夜に限るね」
その理由はモンスターの遭遇率、つまりは狩りの効率にあります。19時から22時くらいまではプレイヤーの人数が多いためモンスターを探す手間も増えます。なので廃人と呼ばれるプレイヤーは時間をずらすのです。
「元廃人とか不名誉な称号だけど元引きこもりだし⋯⋯」
そんなこんなで深夜3時過ぎ、私はやり過ぎたと後悔します。
「あはは、今度は私が先生から叱られそう」
こないだのアユちゃんを見てて、私も似たようなモノだなと思います。だって初めての武道家という職業が楽しいのだから。
「聖女になれなくても私はVRネットゲームが好き。うん、好きなんだ。よし、明日から頑張るぞー!」
翌日、一限目の森永先生の授業中に私は寝てしまい、起きたのは次の授業との間の休み時間でした。
「あれ?」
「ラピスちゃん、佐藤くんがラピスちゃんが寝てるって森永先生に教えてたんだけど『寝かしてやれ、授業が分からなくなっても自己責任だ』って起こさなかったんだよ」
そう茉実ちゃんが教えてくれました。夜更かししたのはすぐにバレて、初めての武道家が楽しくて寝付けなくてずっとゲームしていたのを正直に話したら、わかるーと共感してもらえて、友達と同じゲームをする宝物のような日常を私は過ごしているんだと思えました。
「勇気出して良かった」
「ラピスちゃん、何か言った?」
「なんでもなーい」
なお、次にログインした時にセピアさんからメールが届いていました。
[ラピス、お前の性格は分かっているから言わなかったが今日は早めに落ちて勉強もちゃんとしとけよ]
心配してくれた森永先生に申し訳ないので少しだけアユちゃんとカザグルの街を見て回ってから私はログアウトして勉強をしました。
「大人からの本気の言葉は重みが違う、それはMSOで学んだからね。本当に心配してくるてるなら応えないとね」
ネットゲームは様々な年齢、職業の人が遊んでいます。普通の子供が学ばないようなことを私は学んできたと思います。活かせるかは私次第だけど出来る限り活かしていこうと思うのでした。




