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第16話 栗毛武道家、ウインドウショッピングをする。

 私は道場の床の上で白い道着を着た大柄な男と向き合っています。


「よし!今日からお前も武道家だ。己と向き合い鍛錬に励む様に」

「オッス!⋯⋯やっぱり恥ずかしい」

「いいじゃん。青春っぽい感じで(笑)」


 武道家には装備を外して"正拳突き"のモーションを30回行うことで転職する事が出来ました。私の転職に付き合ってたアユちゃんが道場の隅からNPC師範代と私のやりとりを見て笑っています。やっている方は真剣なんだよー!


「見習いジョブの時にやれって言われなくて良かったー」


 ちょっとアユちゃんが本気で他人事だからと笑っています。いいもん、様になるまでこっそり練習しておくから


「装備が道着になったねー。ラピスちゃん、似合ってるよ」


 転職時に受け取った初心者用道着に着替えて、いざ初陣と言いたいところですが、まずは店売りの装備とアイテムを見るためにNPCの商店へと向かいます。


「へー、こんな感じなんだねー」

「基本的に店頭にあるのはサンプルで店の奥から新品のアイテムが出てくるんだよ」


 割りとこじんまりした店内には特価品の剣やら盾やらが樽に押し込まれて入っていたりしてまともな装備があるの?って雰囲気を醸し出していますが、そこは雰囲気作りのようで品揃えは初心者が手の届く価格帯の転職時に貰える装備より良いモノが揃っていました。


「んー、どれがいいかな」


 武道家のスキル系統は、拳術、弓術、槍術、そして剣術の四系統スキルとなっていて、スキルの育成方針によって武器種を選択する形になります。どうして"剣士"が職業であるのに剣術があるのかは"武闘家"でなく"武道家"だからです。つまり、武力で闘う(たたかう)人と言う意味ではなく、強さをひたすらに追う人と言う意味ですから、剣の扱い方(スキル)も別物となっています。


「ねえ、ラピスちゃんは何で剣なんて見てるの?」

「私は拳術のスキル系統を上げていく予定だけど武器に縛りはないからね」

「けどスキルは使えないでしょ?」


 魔法使いはスキルが使えないとどんな装備をしてもダメージが出ません。それはフワマルを杖で殴って全くダメージが入ってなさそうなことからアユちゃんも理解していました。


「そうなんだけど新しいスキルの取得はスキルを一定回数使うことだし、私はレベルアップで前衛に必要なステータス水準に上げるまで自己強化スキルでステータスを補うからね」

「単純にどうせスキルを使わないなら武器が欲しいってこと?」

「そういうことー」


 アユちゃんが納得して私が特価品の剣を漁っているのを眺め出しました。


「ラピスちゃんってお金あるの?」

「初心者指南書に『転職したら最初に貰ったお金で装備を整えましょう』って書いてあったし」


 初めての職業なので先人たちの知識を参考にすべく、私は転職を決めてから少しづつ有志による"攻略掲示板"にアクセスしてチラ見しながら移動や正拳突きをしていたので予習は完璧のはずですが、アユちゃんは冷やかしとかじゃなく本気で聞いているようなので所持金を確認します。


「私もラピスちゃんに教えてもらった攻略掲示板で魔法使いの指南書に目を通したけど、アレって初心者だから最初に少しばかりのお金を持ってる前提だよね」


 0G、無一文とも言う無情な数字が私の目に飛び込んできました。


「ラピスちゃんってコンバートしてきたからお金持ってないんじゃない?」

「あっ」


 そうでした。かと言って"星流"シリーズの装備を売るつもりもないのでお金が増える事はありません、無念です。


「ウ、ウインドウショッピングしたかっただけだよ!」


 何も買わずに店を出る事になりましたが、私は誤魔化すことしか出来ませんでした。アユちゃんは分かりやすすぎだよと笑っていましたが、楽しそうなのでこんなのもアリかなと思います。仕方がないので私たちはアユちゃんが一撃で倒せる(一確できる)フワマル狩りで目標金額までドロップアイテムを集めることにしました。

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