第152話 栗毛聖女、夏休みを終える。
高校二年生の夏休みはたまに少人数で狩りに出かける程度で、運動による内部パラメーター上げに勤しんで終わりました。私たちいつもの3人は別行動をしていたメンバー全員が今日は集まれるということで、別荘にて駄弁りながら揃うのを待っています。
「夏休み終わったー!」
「アユちゃん、普通は名残惜しそうにするものじゃないの?」
「ちゃんと充実して楽しめたんだから悔いはない!」
胸を張って堂々と言い切る姿はとてもやりきったといった感じで、とてもかっこよく私の目には映りました。
「今日から9月ですし〝お盆イベント〟での里帰り組も戻ってこられるのですよね」
「そうだね。七夕以外でもゲーム移動できるなんてそのうちゲーム統合でも考えてるのかな?」
「そういえばラピスちゃん、MSOに行った時にサギノウンっていたじゃん? 初心者殺しの」
ミナツちゃんの新しく実装された〝帰省イベント〟で思い出したようにアユちゃんがグランサバス王国後のイベントで渡った時の話をしてきたので、私はその時のことを思い出しながら会話を続けます。
「うん。経験値を蓄えて倒せなくなったモンスターだね」
「サギノウンがいなくてもさ、人がいなくちゃネットゲームって成り立たないんじゃないかな」
「それもそうね。私も最初はどうしていいかわからなかったところを、見ず知らずの方に助けていただきましたし」
初心者同士の協力、助けてくれるベテランプレイヤー、そんな理想は人が常にゲームへと流入している前提で成り立っているのだと二人の言葉を聞いていつも最前線にいた私は考えます。
「えっと、二人はVRMMOPRGの転換期で、色々と模索してるみたいに思ってるんだね」
「だねー。だから夏休み中盤すぎても遊んでるラピスちゃんを止めなかったわけだしー」
「私は二人を止めなかったのは、貴女も十分に楽しそうにしてたからなのですけど?」
「そりゃ、遊ぶなら全力っしょ!」
どんどんと脱線していきますが、二人はレベル上げとよりも内部ステータスや、VR操作技術といったものが今後は重要になってくると考えているようでした。
「そういえばさ、最近カソッタ村でカニッパーとかのモンスターがいっぱい目撃されてるらしいよ?」
「もしかして契約モンスターのでしょうか?」
「多分そう! さすがに戦力足りてなくてすぐにやられて地面に潜っちゃうらしいけどね」
私たちは色々な場所を放浪しているセピアさんから聞いた契約モンスターの現在の状況についてあれこれと話しだします。
「リンネたちも頑張ってるのかな?」
「んー、ニーニャたちとパーティーにしてあるけど、自立狩猟は全員がログアウトしてる間しかできないんでしょ? 頑張ってるとは思うけど、あの子たちもカソッタ村辺りでやられてたりするんじゃない?」
「そうですね。もう少ししたらプリアちゃんも落ち着くそうですし、その時に設定を解除して呼んでみたらいいのではないでしょうか」
私たちが遊んでいたと言いましたけど、お盆イベントがほぼ一ヶ月こちらのゲームへ帰ってこれない制約のため、みんなと進行度を合わせる意味合いもありました。そのタイミングでミコさんとプリアちゃんも仕事が落ち着いてきたと連絡が入ったのでこれからはみんなでまた遊ぼうと話をしていると別荘の扉が開きました。
「こんばんわっす。あーしが一番かと思ったっすけど、それより早く待っているとは……さすがマスターっすね」
「マヤさん、こんばんわ。そうは言っても時間までまだあるし、十分に早いよ」
「今日も釣りをされていたのですよね? 成果をお聞きしても?」
マヤさんは魚モンスターにボコボコにされてから釣りに目覚め、湖の魚を駆逐してやるとこの夏の間、糸を垂らし続けました。最初はすぐに飽きてやめそうだったのですが、INTとDEXの内部パラメーターが魔法を使った時に上昇しているように感じたそうで、マヤさんの日課となったのでした。
「坊主っす」
「なんか変だね。マヤさんの割りに悔しがってないし」
「えっと、何かあったの?」
魚が釣れなかったというのに、それの報告があっさりしていることに私も疑問を感じました。
「ふっふっふ。あーし、何かイベントを発見してしまったっす!」
「坊主なのに?」
「そうっす! 何度やっても釣れない馬鹿力の魚が喰いつくっす! あれはきっと何かのイベントのフラグっすよ!」
「そうね~。私も見てたけどそんな感じがしたわね~。どうやら主といわれる魚みたいで大地主様が何かしってるみたいよ~?」
「あ、マリアさんもこんばんわ」
自信満々に言い切るマヤさんの横にはいつの間にかマリアさんがいてその話に同意しました。
「って、マリアはどこにいってたっすか!?」
「色々よ~、マヤっちがそのフラグがどこにあるか探さずに別荘にいちゃったから、私が代わりに見つけておいてあげたのよ~?」
「へー、マリアさんありがとう!」
「あーしはっ!? 魚を釣り尽くしたあーしはっ!?」
「マヤさんもありがとうだよ」
二人の活躍で私たちの次の目的が決まりました。主釣りです! そうこうしているとコータ、リョウさん、ヤスナガさんもやってきて全員が揃いました。
「久しぶりだね。みんな」
「そうでござるな! ラピス殿たちの顔を見たらそんな気持ちも吹き飛んでしまったでござるが」
「ラピスさんたちも、マヤさんたちも少し合わなくても変わってないですからねー」
「そうだね。ボクは変わらないのも自分があっていいと思う」
それぞれに久しぶりの挨拶をしながら談笑に興じます。
「みんなー、ゆっくりできたよね?」
「ラピスが一番ゆっくりしてそうだけどな」
「コータうるさいー!」
ギルドマスターとしての発言にチャチャを入れないで欲しいです。まったく。
「じゃ、ラピスちゃん。音頭よろしく~!」
「それじゃ、このゲームでの冒険をまた再開します! みんな、少しづつでも進んでいこうね! リトル・ア・ポコ、再始動だよ!」
「「「「「「「おぉー!!!」」」」」」」
私たちは攻略最前線から遅れていても少しづつでも進んでいきます。それぞれが思い思いにゲームを楽しみながら―――。




