第151話 栗毛聖女、水遊びをする。
大地主様と呼ばれるNPCとの面会は何事もなく終わりましたが、新たに解放された地底湖と、そこで見つかった《《台座に固定されたとある書物》》が私たちプレイヤーに大きな変化をもたらしました。
「きゃっ! ちょっとコータ! 私ばかり狙うなんて卑怯だよー!」
「ラピスがトロいのが悪いんだよ。そんな棒立ちじゃ《《内部ステータス》》があがんねーぞ。―――うわっ!」
「うっしししっ! ラピスちゃんをいじめる悪い子は私のマーライオンの力をおもいしるがよいー!」
私たちはその地底湖で今は水遊びをしています。理由はコータのいうように内部ステータスという書物によって新たに明るみに出たプレイヤー強化要素、その底上げのためでした。
「それにしても〝VR空間での運動量、読書量など、戦闘以外での経験がアバターの地力強化に繋がる〟とはなかなか考えられていますね」
「そうっすね。このゲーム、ステータスの確認方法はないっすからそういう基礎ステータス的なものを上げるであろうクエスト消化はしても、サブイベントを遊び尽くそうとするプレイヤーって物好きしかいないっすしね」
「そうね~。あるかないかわからないものに時間を使うのは無駄になる可能性が高いですし~、そんな遊び方はしないですよね~」
スキルを使用しない平時における筋トレ、勉強、体験は別扱いでステータスが伸びる。それが大地主様がテニスコートなどの運動施設でスキル封印を施した理由でもあったようです。
「ねぇ、ラピスちゃん。このこと公表するの早くなかった?」
「うーん、水遊びを存分にできるだけ私たちは恵まれてるしいいんじゃないかな。それに、青春アカデミーとかもこのことを知ったプレイヤーたちはみんな遊びにくると思えば私はいいと思う」
「そっか。まあ、私の配信で公表させてもらってチャンネル登録者数も稼がせていただいたからね。ラピスちゃんがいいならいいかー。アレスも反対しなかったし」
ハナさんが少しもったいないといった感じで私に訊ねてきます。たしかにテニス大会優勝、準優勝のチームのみがこのことを知れるのはプレイヤー間でのアドバンテージになりますけど、私たちは別に最前線で俺TUEEEしたいわけでも、対人戦で最強を目指しているわけでもないですしね。
「戦闘好きな人たちもVR空間でゆっくりできるいい機会になればいいと思う。こんなに景色とか綺麗なのにもったいないもん」
「ラピスちゃんのいうとおり! ハナさんももっと世界の絶景100選とかそういうので配信してみたら? なんなら『水遊びをする美少女たち』とかいって私たちを撮っててもいいからさ」
「アユちゃん、それはちょっと私は遠慮しておくよ……」
綺麗な景色を映してみてはとは言いましたけど、アユちゃん……それはさすがに恥ずかしいのでやめようね。そんな言葉を飲み込んで控えめに遠慮しておきます。
「それにしてもなんで水遊びなんだ?」
「可愛い子どもたちが遊んでおるのですぞ! それだけで十分でござるな!」
「ヤスナガさん……、聞く人によって危ない発言はやめましょうよ~」
アレスさんが不思議そうに私たちを見てますけど、この水の中に入れる地底湖こそが本当の報酬だと思っています。それを聞いてたアユちゃんがマーライオンの杖を逆さにして水に浸しています。
「水ってさ、こんな感じで抵抗力あるんだよー。だから遊んでるだけでも運動になるわけー」
マーライオン側の方が質量があり、水飛沫をあげながら水の中から振りぬいて抵抗力が高いことを示し、水遊びの意味をアユちゃんがアレスさんたちに教えました。
「内部ステータス上昇の上限とかってあるのかな?」
「多分あるだろうね。運動に勉強とか書かれてるし、たぶん行動ごとに上限があるんじゃない? それにしても、ラピスも水着持ってるし泳げたりする?」
「うん! 去年、海で泳げるように猛特訓したからねっ!」
私もたぶん上限があるだろうなと思いながら訊ねるとコータも同じ意見のようでした。ある程度、水遊びをしたら次へいっていいかなと思い、みんなにそのことを伝えます。
「……なぁ、とても言い辛いんだけどさ」
私の話を聞いてなぜか考え込んでいたコータがその場で申し訳なさそうに発言し始めました。
「去年、海で泳ぐ練習をしてたのってラピス以外にもいるよな?」
「うん。アユちゃんにミコさん、プリアちゃんの他にも、アレスさんたちにも協力してもらってたよ」
「そのメンバーはもう『水中での運動』というカテゴリーでのステータス上昇は見込めないんじゃないか?」
コータの説明を聞いてみんなが「あっ!」となり、固まりました。
「けど、可能性の話じゃん! 淡水と海水で判定が違うかもしれないし! もっと遊ぼうよ~!」
「……目に見えないステータスってこういうところで不憫ですわね」
「はっはっは! アユ殿のいうことも一理ありますですぞ! それにアップデートで追加されたのやもしれぬと思えば遊んでおいた方が得でござるな!」
アユちゃんのただ遊びたいだけとも取れるような発言をみんながボジティブに捉えて、私たちはもうしばらく報酬で入れているこの地底湖で遊ぶことにしたのでした。




