第140話 栗毛聖女、新たな武器で戦う。
粘土ゴーレムは〝門番・ママーライオン〟という名前で、ライオンのように四足歩行の獣型モンスターのようです。
「とりあえずいつも通りいこっか。―――移動速度増加ッ!」」
「おっけー、じゃあボクから! ―――花草剣技・桜吹雪ッ!」
「―――コータ! はい、重ね掛けだよ! 移動速度増加ッ!」
「私は念のために状態異常に備えます。―――神秘の輪舞!」
「マヤっち~、|スペル・ギブ・チャージ《呪文加詠唱》~♪」
最初に出会った印象は金髪の王子様……、けれどもうコータはコータとした思えないコータがアユちゃんの移動速度増加を受けて一気に詰め寄り、周りの草パワーを集めて桜吹雪を纏いながらママーライオンへと斬り掛かります。その後ろをリョウさんとヤスナガさんが追い掛け、マヤさんが大魔法の詠唱へと入りました。
『マ~マァ~~~っ!!!』
「ちょ、どこから攻撃がでるんだよっ!? アユの杖みたいに口から攻撃しろよーっ!!!」
「だよね~!? 私の杖の方が可愛いよね~! いやー、コータもわかってんじゃん!」
「マーライオンがそういうもんだからだよ!」
百獣の王と呼ばれるライオンを模しているだけあってコータの攻撃でHPが減ってるのが見えても怯まずに《《両目から泥の涙を滝のように流して》》反撃してきました。攻撃を受けたコータはそれでも張り付いて攻撃を続けます。
「……あれ? 気のせいかな? ―――ヤスナガさん、ヒールッ!」
「ありがとうですぞ! ワシは一度様子見に回るでござる!」
「まあまあコータさん、ダメージは入ったんですからいいじゃないですか。マヤさん、いけますよね―――占術・倍花心易ッ! 」
「ありがたいっす! ―――その赤点は天へと昇る火種となりて、―――天より戻りて帝灼点となりけりっ! 炎天迅来ッ!」
少しだけコータの動きがぎこちなく感じましたが私はヤスナガさんの減ったHPをまずは回復させました。詠唱時間の分だけスキル倍率が上昇する戦術がマヤさんに掛かり、赤い一筋の光が空からママーライオンを打ち抜いた次の瞬間、ドンッ! という音の後に爆熱の風が周囲を撫でていきました。―――しかし、マヤさんの大魔法を喰らっても普通に戦闘を続けているママーライオンがそこにいました。
「って、無傷っすか!? HP減ってないっすよね!?!?」
「粘土だから火耐性があるのかな? 次からマヤさんの攻撃にマリアさんは聖属性付与してあげて」
「それはいいんだけどね~、コータく~ん。ちょっと下がってもらっていいかな~?」
「別にいいけど……HPはまだ大丈夫じゃね? ―――は?」
マリアさんに言われて不思議そうに後退したコータの動きが急に鈍ります。……さっきの違和感は私の思い過ごしじゃなかったようです。
「やっぱりそうね。あの泥涙には移動速度減少の効果があるみたいよ~」
「これってもしかして足枷? コータの足の泥が固まってるっぽいんだけど」
「泥……、アユちゃん。放水で剥がせないかな?」
「その手があったね! ラピスちゃんナイス~! マーライオンの杖を掲げて、放水 っと」
アユちゃんの水を浴びてコータの泥は軟化したようですが剥がれるまではいきませんでした。
「私の踊りって最近役に立たないのですけど、過度に警戒せずに普通に戦った方がよろしいんでしょうか……」
「ミナツちゃんが踊ってくれている間に状態異常を防いでくれているかもしれないから気にしなくていいよ。けど、せっかくの剣士だし防げないのもいっぱいあるからそれもいいかも。ミナツちゃんが好きなように遊んでくれたらそれでいいと思う、そのように私たちも動くからさ」
「そうですぞ! それがパーティーというもので仲間というやつですぞ!!!」
この弱体化効果を機に私たちは他のフォーメーションなど戦い方を模索していこうと話し合うことを決めて、一人で前線を支えているリョウさんとママーライオンに目を向けます。
「みなさん……ありがとうございます! 先のことはともかくまずはこの戦闘です。リョウさんが色々と試してらっしゃいますけど、剣術よりも拳術の方がダメージが出ています」
「泥なのに打撃属性の方が効くってことかな?」
「ラピスちゃん、泥は熱するとどうなるか知っていますか~?」
マリアさんがマヤさんを見ながらそんなことを言ってきましたので考えます。……もしかして、硬く陶器のようになる? ってことはマヤさんのさっきの攻撃はダメージはなくても効果的ってことかな?
「うん、わかった! 固まって割れるだね! マヤさん出番だよ! ―――詠唱省略ッ!」
「その言葉をまっていたっす! 威力は無視して手数で燃やすっすよー! ―――鬼火玉っす! 連打っす!!!」
「水は聖属性付与してもダメだよねー。じゃあ、私はこれでいこうかな、―――火と風の熱風、風と土の砂風―――複合魔法・熱砂嵐ッ!!!」
『マッ……、ママァッ!』
マヤさんの魔法が当たった場所は一気に硬化し、アユちゃんの魔法により出現した熱を持った砂嵐はママーライオンの水分を徐々に奪い始めます。そして、恐らくは私に期待されている役割も理解して
「ラピス殿! 存分に殴り攻撃してくだされですぞ!」
「うん! 《《コレ》》の出番だよね! マリアさん、ごめんなさい! 前に出ます!」
「いってらっしゃい~。―――はい、属性ダメージ強化ね。楽しんできてくださいね~」
「あ、それ使うんですね」
「リョウさん、ヤスナガさん、それにアユちゃんと共に大火精霊と戦って手に入れた戦利品、その初めての攻撃を受けるのを光栄に思ってね!」
私はまだ使ったことのない新しい武器を手に嵌めてママーライオンへと攻撃しに前へ、前へと進みます。
「火山ダンジョンだと火属性は効かないから使えなかったけど、やっとだから少しテンション高くてごめんなさい。―――けど、ちゃんとした武器の更新って初めてだからわくわくしちゃうね! どれくらいダメージ伸びるんだろうって」
「今のラピス見てるとなんだがプリアみたいだな。すっげー楽しそうでちょっと羨ましいぜ」
特にプリアちゃんは最大ダメージを伸ばすのに拘っていました。それが今は凄くわかる気がしました。だって、私もどうしたらダメージが増えるんだろう、もっといい武器が欲しいなって今は思うんですもん。
「それじゃ、ヒールッ! ――――機構火山活性化ッ! 〝ボルケーノナックル〟火属性最大火力で、―――そこっ! ―――正拳突きッ!」
『ギィィイイオォォオオオオン』
「今だよ! みんなっ、畳みかけるよ!」
私の攻撃はママーライオンに目に見える量のダメージを与え、初の怯みによるノックバックを発生させます。そこを見逃さずみんなで総攻撃を仕掛け……ママーライオンのHPを0にして倒すことができました。
「やったねラピスちゃん!」
「うん。みんな、おつかれさまっ! あははっ! 楽しかった~~~!!! ぶいっだよ!」
自然な感じでこのぶいっを行って、さっきの戦闘を肴にして笑い合います。一番面白かったのはコータかリョウさんかなと思っていたら私とか言われてちょっとテンション上げすぎたかなと少し自重しようと心にそっと誓いを立てました。
「とうちゃ~く!」
「ちゃんとセーブしたよね? 今日は遅いし解散しようか」
新たに辿り着いた山奈河町で私たちはセーブし、ひとまず解散し後日に散策を行うことにしたのでした。




