第139話 栗毛聖女、タンレンから次の町へと向かう。
タンレンの町でのクエストも今受けられるのはほとんどクリアしたと思うので、私たちは火山ダンジョンを迂回して次の町を目指し道中を進みます。
「いや~、色々とあったねぇ~」
「あなたって人は……なんでこういう時はそうお年寄り臭いんですか」
「ミナツちゃん諦めて。アユちゃんだし、ね?」
ギルドメンバー総出の移動にも慣れてきました。私たちがいつものやりとりをしながら先頭を進み、その後ろをコータとリョウ、ヤスナガさんが男のですぞ談義を咲かせ、それを肴にしてマリアさんがマヤさんにあれこれ話してマヤさんがミナツちゃんのようなツッコミを入れています。
「それにしても楽しかったね~! 栗毛聖女の眼を知らない人はもういないんじゃない?」
「……もうこのゲームからコンバートして戻りたいくらい恥ずかしいよ」
「それはダメじゃね? エミルさんもラピスがこっちに来る時に言っていただろ。リアルでの繋がりは簡単には関係をリセットできねーって。それに、胸張っていけってさ」
「……コータ。―――うん、そうだね。たしかに言ってたね。ごめん、今のなしで!」
あのお祭りの後、このゲームにおける私の知名度は物凄く上がったことでしょう。面白半分であれ少なくとも悪気はなかったと思います。なら、それを大切にして生かしていくべきですね。
「それよりもさ、私たちが解放したことになっている〝湯浴み装備〟のせいで温泉ギルドとか呼ばれてるの面白いよね」
「……水着装備を正装防具にして火山ダンジョン攻略したパーティーには相応しいんじゃないんですかね? 少なくとも裸パーティーの延長で裸ギルドと呼ばれるよりはマシですよ」
「はっはっは! ワシのようなタオル一枚になるスキルの使用以外で温泉への入浴時の正装を実装とは運営はわかっておるでござるな~」
大火精霊復活祭が無事に終わり……、念願の鍛冶屋でコンバート持ち込み装備の上限解放を……私たちは期待したわけですが、結果は強化石による既存防具の更なる防御力強化システムの実装、そして湯浴み装備の店売り解放でした。
「まー、あーしらの装備上限が簡単に解放されるとはみんな思ってないっすけど、そのやり場のない肩透かしを食らった感があったっすから。リトル・ア・ポコの温泉ギルドなんていう、なんとも可愛らしい通り名をつけられた理由はそこじゃないっすかね」
「マヤさんの言う通りなんだろうけどさ、ギルドマスターとして私のつけたリトル・ア・ポコのギルド名より温泉ギルドの方が有名になって思うところもあるけどね」
「もう~、マヤちゃんは一言多いからラピスちゃんが拗ねちゃったじゃない~。ほらぎゅ~! ラピスちゃんは頑張ってるよ~」
いつの間にか真後ろまできていたマリアさんが私をぎゅっとします。たぶん、私が聖職者として支援に回ってるのをアユちゃん以上に気にしてずっと私のことを見ててくれたのは同じ聖職者のマリアさんだと私は思っているので、その優しさを受け入れます。
「ちょっとマリアさんずるい~! ラピスちゃんは私の~!」
「いつからあなたのになったんですか? ラピスちゃんはみんなのラピスちゃんですよ」
「……ボクも混ざりたいけどやめとく」
「賢明な判断っすね」
「私は私だから! 誰のもにもならないからっ!」
私の取り合いを気合で終らせたのに、左右から「ほんとに~?」と言及してくるのを突っぱねながら道を進みました。……途中でコータと目が合って逸らしたりもしましたけどね。
「さ、みんな湯浴み装備に着替えようか」
「ワシはいつでもいけますぞ!」
「じゃあヤスナガさんは一人でアレに突っ込んできていいよ」
「ラピス殿~!? そんな殺生なでござる」
火山の反対側の町が見える。町の横には大きな湖もあった。
「あれが次の町、山奈河町で……」
「あそこにいるのがタンレンで聞いた門番のモンスターですわね」
そして、目の前にはゴーレムのような粘土で出来た、不出来な足の生えたマーライオンがいた。




