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第136話 栗毛聖女、【厄災】大火精霊と戦う④

 その後、見えるようになった弱点である【厄災】の核への物理攻撃も通る様になり、安全に攻撃を重ねながらも確実にそれなりの速度で大火精霊のHPを削っていきます。


「───放水(アクアディスチャージ)ッ! ───放水(アクアディスチャージ)ッ! もう少しで倒せそうだね!」

「うん。だけど名前の色が赤に変わっても動きがないし、さっきと同じで何か奥の手があるのかも」

「そうですね。ダメージは通ってますし、さっきの爆発するような雰囲気の大技は大ダメージでキャンセルできるようですが油断せずいきましょうか」


 リョウさんの活躍で発現した核は大火精霊の中にあるため、アユちゃんの魔法は大火精霊の体に当たって判定が止まってしまうため聖属性を付与せずに水属性魔法で冷やし続けています。


「ヒールっと、あとこれ持って行ってHPにMPポーションだよ。リョウさん、ラストスパートいける?」

「ありがとうございます。交叉梅花(こうさばいか)のクールタイムは過ぎたので、さっきのような爆発準備で動きを止めたり、拘束してもらえたら……。ですが、そろそろ占術・大三角の秘宝が切れる時間かと」


『ファアアアィィィイイイ、―――ヤァァァァアアアアッ!』


「うぉーーーーっ!!! あっちぃいいーーー!!! ですぞっ!?」

「ヤスナガさんっ! もしかして近づけない!?」


 リョウさんの回復アイテム補充を行っていると大火精霊が突如爆発し、ヤスナガさんが後退します。真っ赤な激しい炎が立ち上った後には、これまでとは明らかに違う青黒く燃えさかる【厄災】大火精霊がそこにいました。


『ィャァァァァ……』


 燃えさかる炎は激しい赤から穏やかな青へと変化し、大火精霊も動きを止めます。


「……リョウ殿、話は聞かせてもらったでござる。ここから先はワシとラピス殿に任せるでござるよ」

「―――ほえ? 私? 今みたいに回復だけじゃなくて?」


 ヤスナガさんの口から急に私の名前が出てきたことで気の抜けた返事になってしまいました。しかし、何をすればいいのか思い当たらず、ヤスナガさんに詳細を求めます。


「そうですぞ。残りHP見るにもう一押しでござろう。ワシに断絶の盾(ゼロシールド)と必中スキルを頼みたいでござる。―――そして、リョウ殿にはヤツのターゲット固定(タゲ取り)を、アユ殿はタイミングを見てワシ自身への加速をお願いしますですぞっ!」

「―――ちょっとヤスナガさん! タゲ取りを頼んで一人で突っ込まないでくださいよ~!」

「おっけー! じゃ、もうちょっと放水っ!」


 そういってHP回復もせずに突撃しにいったヤスナガさんをリョウさんが追い掛け、アユちゃんは放水で引き続き様子を見ていますが炎が青に変化してからダメージがほとんど通っていないと私に伝えてきました。


「ラピスちゃん! 核がっ!」

「―――あっ! そういうことかー!!!」


 アユちゃんに言われてよく見るとだんだんと【厄災】の核が炎に包まれながら姿を消していくのが目に入り急いで『見習いの弓〟』を装備し、核に注視して攻撃するためのターゲットにします。


「―――"天穹・始導(てんきゅう・しどう)"ッ! ヤスナガさぁーん! やっちゃえぇー!!!」

「素晴らしいタイミングですぞ! ―――背水忍法・五右衛門風呂ッ!」


 私は天井へと弓を構えて矢を放ちます。すでに核は視認できなくなっていますがヤスナガさんの狙いはコレだとわかりました。そんなヤスナガさんは防具を全部外して入っていた五右衛門風呂からスキル名を叫びながら出てきて、湯上りにタオルを巻いた姿で再突撃を開始しています。


 パリンッ!


「ちょっと! 防具脱いで継続(スリップ)ダメージも増えてるじゃないですか!」

「はっはっは! さきほどラピス殿から回復薬の補充をしているのを見ましたのでな、ラピス殿も動けぬ今、リョウ殿に命を託すでござるよ」


 ジワジワと削られるHPを回復薬というアイテムの力で耐えながらゴリ押しを継続します。


『ゴォオオオオオッ!!!』


 パリンッ!


「っと! ちょっと次は耐えれそうにないのでタゲ返しますよー!」

「十分に助かったですぞ! あとはワシたちに任せるでござるよ!」


 リョウさんは大火精霊からの攻撃で減らされたHPをポーションで回復していましたがスリップダメージと、回復薬を上回るダメージの積み重ねで限界が来たようで戦線を離脱します。


 パリンッ!


「リョウさん、お疲れ様です」

「―――ラピスちゃん、くるよ!」


 HPポーションを使って魔法の再使用時間が発生しないようにリョウさんのHPを回復させます。アユちゃんの知らせと共に天井付近で停滞していた必中の矢が反転し【厄災】大火精霊に目掛けて落ち始めました。


「よーし! 今だね! ―――移動速度増加(スピードインクリーズ)ッ!」

「……見えたでござる。―――《《一閃・峰打ち》》ですぞっ!」

「ダメ押しで、―――移動速度増加(スピードインクリーズ)ッ!」


 ドンッ!


 背水忍法・五右衛門風呂で防御力を捨てた分だけ攻撃力を上昇させたヤスナガさんは、さっきまでの戦いで核を攻撃していた感覚を呼び起こし、矢の軌道から現在の核の位置を感覚で《《核があるであろう位置を注視する》》ことでターゲットに捉えたヤスナガさんの峰打ちが鈍い音を放ちながら【厄災】大火精霊のHPを1だけ残す大ダメージを与えました。


 カーンッ!


『ィャァァァ……ぽしゅっ』


 そしてその直後というには時間を置かず、ほぼ同時にという表現が合うようなタイミングで私の矢が【厄災】の核を打ち抜いて大火精霊のHPを0にしました。


「勝ったー! やったー! ラピスちゃんおめでとー!」

「ちょ、アユちゃん。喜んでくれるのは嬉しいけどみんなの勝利だよ」


 私がトドメを刺したのが凄く嬉しいようでアユちゃんがはしゃぎ回ります。今回の【厄災】大火精霊戦はみんながMVPだと私は思います。


「リョウさん、ヤスナガさん、アユちゃん。せーのでいくよ」

「わかりました」「承知したでござる」「おっけー!」


 だから音頭はとらずにタイミングを合わせるだけで、いつもの掛け声はみんなで行う事にしました。


「せーのっ!!!」


「「「「ぶいっ!!!」」」」


 集中力も切れて休みたい衝動にかられましたがドロップアイテムの他に、奥に宝箱が出現しているのを発見し、中身を回収してから温泉へと再び私たちは戻り、お互いに労いながら勝利の余韻に酔いしれるのでした。

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