第132話 栗毛聖女、裸の付き合い?の効果を実感する。
「ラピス殿。入り口からは湯気で見えぬでござったが、この壁が扉になっているようですぞ」
ヤスナガさんが室内の壁を一周ぐるっと調べていると、湯船の奥にある壁が扉であることに気付き、バラバラに何かしらのギミックを探していた私たちは一度集まりました。
「ねぇねぇラピスちゃん! この嵌め込み穴ってもしかして……」
「うん! フワマリンネの時と同じだと思う!」
「そうですね。言われてみればそう見えてきました」
リョウさんもヤスナガさんも私たちが青春アカデミーのバレンタインイベントに参加している時に、【厄災】フワマリンネと戦っていたのでギミックを覚えているようでした。あの時は『フワマリの宝玉』が必要で、ダンジョンにはフワマルがいっぱいいましたけど……。
「そういえばさっきの火精霊ってほぼ無限沸きに近い仕様でしたね」
「あれはアユ殿のおかげで狩り尽くすことができてしまったでござるが、恐らく本来はポップ上限となるフロア全てのマグマ凝固化までいかずに沸きの止まらないような気がしますぞ。火精霊から逃げてこのフロアに辿り着くのが正規なのかもしれませぬな」
火山ダンジョンで出現したモンスターはモエトカゲ、爆列岩、火蝶などいましたが、目の前には30個ほどの何かアイテムを埋め込む窪み、その形は『火』を模っているようで確かに数を狩る必要があるギミックと考えれば答えは出ているようでした。
「んー。ドロップアイテムが多すぎてわからないけど『火精霊の結晶』かな? なんか説明文に火精霊の力が封じられたとかあるし」
「とりあえず嵌めてみようよ! ほら、ラピスちゃんゴーゴー♪」
「うん。それじゃ―――あ、嵌った。ビンゴだよ!」
フワマリの時はレアドロップである『フワマリの宝玉』をミコさんが教えてくれましたが、今回はあまりに倒し過ぎてレアドロップがどれかも判断が付かないので片っ端からの予定でしたがソレっぽいアイテムで一発でした。
「ラピスさん、このまま突入するんですか? 道中は戦闘回避していたので余裕はありますけど、回復役がラピスさん一人では辛いのでは?」
「ありがとう、リョウさん。がっつり狩りする気もなかったから納品クエスト優先で進めたけど、ちゃんとミコさんに借りた『次元の巾着袋』も持ってきているから大丈夫だよ」
ミコさんとプリアちゃん、二人からしばらく忙しくログインできないことを聞いた時にミコさんからこの腕防具をまた貸りているのです。プリアちゃんの抜けた穴をカバーする意味で聖職者として回復役をすることを知ったミコさんは「MP不足や足りないHP回復量はポーションで穴埋めをするとよいのじゃ」と言って、前と同じで中の消耗品は私の使った分だけ自腹ですけど貸してくれたのです本当にありがたいです。
「本当にあの時の再来だね! 私、わくわくしてきたよー!」
「けどさ、そうなるとこの先にいるのって」
「「【厄災】だよね~」」
次はどんなボスが待ち構えているのか、私もアユちゃんと同様にわくわくしながらアイテムを嵌め込んでいきます。私たちが窪みに嵌めていくのを見守ってくれているリョウさんとヤスナガさんもきっと同じ気持ちだと私は思いました。
「それじゃ占術をかけるので少しお待ちください。〝星平開海・加運、加命〟」
「リョウ、これはどんなスキルなの? てか、いつもこっそり掛けてたとかダメだよー。ちゃんと働いてますってアピールしなきゃ」
アユちゃんからのお説教が始まりましたが、これはLukと最大HPのステータスを別処理で内部的に上昇させるスキルのようです。占いの信じる信じないは個々によりますし、最大HPが目に見えない部分で増えたところで受けるダメージがなぜか少し減ったとしか感じれませんし、説明しても信じてもらえない可能性もあるのでリョウさんが隠していた理由もわかりますが……。
「たしかにリョウさんのスキルって目に見えないから恩着せがましくスキル使ってますと言いたくないのもわかるけど、それでも仲間の役に立つために使ってくれている事実を誰も知らないままだったのは寂しいかな」
「……ラピス殿、リョウ殿がそれをこのタイミングで話してくれたということはワシらを真の仲間として認めてくれたということではないでござろうか」
ギルドに入ってくれた。一緒に狩りにも出掛けられる。けれど、聖職者のように目に見えて効果のある支援職とは違うリョウさんの占術スキルをもっと早くに気付いてあげられていたら良かったと私は思いました。
「そうですね。僕らは《《裸の付き合い》》をした仲ですから、知ってほしいと。そう思って曝け出しましたが、―――ちゃんとスキルを認めてくれる仲間に出会えた。離して本当によかったです」
ギルド結成の時に来てくれた性格的に濃いメンバーばかりの中で礼儀正しい人だなと思いましたけど、色々なことを抱えてきた人だったのかなと。一歩を踏み出してくれた彼にギルドマスターの私が言うべきこと、それは―――。
「あははっ。リョウさんは立派な|リトル・ア・ポコ《Little a poco》のメンバーだよ。だってちゃんと一歩を踏み出して少しづつでも進もうとしてくれたんだもん。―――これからもよろしくね。占術が使える武道家のリョウさん」
運命なんて決まっている。占いでそれがわかるというのなら、リョウさんのスキルのように少しでも良い運命になるように手を貸そう。私にできることはちっぽけかもしれないけど、それでも関わった人と一緒に少しづつでも進みたいから。
「あっ、私は占いなんて信じてないから。私はリョウだから一緒に行動しているだけだからさ、勝手に占ってていいよ~」
「アユ殿はリョウのそういうところまでを見抜いたうえで一緒にいたいとギルド結成の時に連れてきたのですぞ。愛されていて羨ましいですぞ」
「まったく。ヤスナガさん、冷やかしならこんなところじゃなくて別のところでしてくださいよ~。―――僕の心は今、みんなのおかげで温かいんですから」
あー、なんかアユちゃんとヤスナガさんって同じタイプの人種な気がしてきました。裸の付き合いってこういうことなんでしょうか。……私は今、どう見られているのかなと少し心配になりましたが、ラピスちゃん大好きとアユちゃんが抱き着いてきて無用内心配だったかなと考えるのをやめたのでした。




