第129話 栗毛聖女、リョウさんと息を合わせる。
火山ダンジョン3Fに入ってすぐの踊り場からの景色は圧巻で、目の前に広がるのはマグマの海でした。側面の壁にはドラゴンの顔が描かれており、空いた口からもマグマが一定間隔で吐き出されています。
「ねーねー? これって泳げると思う?」
「無理ですね」「ムリだと思うよ」
「だよねー……、私の水着、凄く強くなったんだけどなー」
ジョババババ~~~
アユちゃんの問いに私とリョウさんが息を合わせて無理と即断します。アユちゃんはいじけてボコボコと泡立つマグマを見ながら、マーライオンの杖で水をかけていますがマグマが凝固する気配は一向にありません。
「はっはっは! アユ殿はわかりやすいでござるな! 強化された水着装備の可能性に期待するその心意気やよしっ! ですぞ!」
「ヤスナガさん凄くいい人! 大好き!」
「ちょっと妬けるかな、元彼ピとして。―――なんちゃって」
茶番劇が始まりかけていますが、水着装備が強化されたからと言って防御力がタンレン店売り装備レベルに上がって火耐性(小)がついた程度で、他に何か凄い効果はないのです。まぁ、戦闘では安心感はありますけどね。
ジョボボボボ~~~
「じゃあさじゃあさ! 坩堝蜜竜の時みたいにさ、あの靴で浮いて渡るっていうのはどう!?」
「それも無理かな~。あのマグマに近づくとHP減るから浮遊(小)じゃ……」
「あっ! ならずっと回復してればいいんだ!」
「アユさん、天才的なゴリ押しを閃きましたね。―――そういうところ好きです」
私たちはひたすらマグマに水をあげているアユちゃんを微笑ましく見守っていると、そんなことを言い出しました。あまりに簡単にいうのでちょっとヒーラーの全員に謝ってほしい気持ちになりますがここはグッとこらえます。
ジョボボボボ~~~~
「できるかもしれないけど、この先もマグマの海が続いてる可能性もあるんだよ?」
「あ、そっか! じゃあ、なにか他の方法見つけないとね!」
「そうですね。―――手始めに、アレを触ってみますか?」
「リョウ殿、卑猥ですぞ!」
「ちょ、ヤスナガさん! なんでですかっ!? ―――ちが、違いますから! 全然違いますから!」
ヤスナガさんは筋肉のアバターで渋いオジさんのアバターで体をくねらせながら乙女のように抗議し、それを見たリョウさんが私たちに必死に弁明してきました。
「リョウって意外とえっちだよね~」
「え? そうなの?」
「違いますから~! ああ、もう僕のキャラがぁ~~~」
「はっはっは! けれど楽しいでござろう? ニヤリ」
「ニヤリって自分で言わないでください……。確かにちょっと楽しかったです。悔しいですけどね」
青春アカデミーで知り合った二人と聞いていますけど、リトル・ア・ポコに一緒に入ってくれてよく行動を一緒にされてますし仲も深まって悪ふざけできるような関係になったのかなとも思えて少し嬉しいです。それはさておき、男の子っていくつになってもこんな感じのノリなんでしょうかね。
ジョボボボボ~~~
「それじゃ、触りますね」
「うん。あのドラゴン、真実の口っぽいから手を入れるのがいいかな? 私はちょっとやりたくないけど」
「ラピスちゃんはゲームの中だとハッキリNOと言えるんだよね~。はい、そういうことでリョウお願いね」
「はいはい。って、ヤスナガさんもいるのになんで僕なんですかね……」
ネトゲあるあるですけど、戦闘が一段落して休憩というか一息ついているこの時間がなんか一番打ち解けてて私は好きです。リョウさんもヤスナガさんも、もちろんアユちゃんも、そして私も馬鹿な会話しているとは思いますけど、そんな時間が愛おしいのです。
「じゃ、いきます。すぐに何か起こるかもしれませんので戦闘の準備だけお願いします」
「任せて! リョウさんは私たちが守るよ」
私の言葉に嫌な予感を感じ取ったリョウさんが意を決して手を壁にあるドラゴンの口へと手を入れます。
『『『『『ヒィイイイイイッ!』』』』』
すると変化はすぐに起こりました。火精霊が大群でマグマの中から現れたのです。
ジョボボボボ~~~
「きたよ! ―――空波拳ッ!」
「はい! って、アユさん!? 働いてください、飛・正拳突きっ!」
すぐに私は空波拳を放ち、口から手を抜いた量産もマグマの海からまだ出てきていないうちに火精霊へと遠距離スキルで攻撃を仕掛けます。私たちは息を合わせてターゲットが被らないように波状攻撃のようにスキルを使い続けます。ヤスナガさんは遠距離攻撃未収得のため後方で未だにマグマの海に放水をしているアユちゃんの護衛をしています。
『ヒィィィ……―――(ポシュッ)』
「って、あれ? よく見るとHPバーが赤色で最初から瀕死なんだけど。あ、レベルアップ」
「ラピスちゃんおめでとー!」
「おめでとうございます」「おめでとうですぞ!」
「ありがとうー。けど、まずはこの子たちを倒そうか」
私とリョウさんの攻撃が一発入ると火精霊は消えていき、経験値が確かに入ったことで久しぶりに私はレベルアップもしました。戦闘はまだ続いているので引き続き瀕死の火精霊を一方的に倒していきます。
「おわった~!」
「おつかれ、ラピスちゃん」
「ラピス殿、リョウ殿、お疲れ様でござった。戦闘に参加できず面目ない」
「近距離特化の大剣ってプレイスタイルなんだからヤスナガさんは気にしないで」
私もトロピバードの時に同じ思いをしたのでヤスナガさんの気持ちが凄く分かります。仲間なのに見てるだけって凄く辛いんです。けれど適材適所、大技を突き進むヤスナガさんにはヤスナガさんの輝ける場所があるから、だから頼りにしてますと伝えておきました。
「それで、アユちゃん弁明は?」
「火精霊が瀕死だったの私の放水 のせいかもって思ってさ、いつまで沸き続けるかわからないから続けた方がいいかなって」
「……瀕死だった理由ってアユちゃんの放水のせいだった可能性」
「ラピスちゃん、それがアユちゃんだから。友達ならわかりると思います」
リョウさんに肩を叩かれて私は笑うしかできませんでした。
「そうだね。最近は普通に戦ってたけどアユちゃんだもんね」
「ちょっと! ラピスちゃん言い方~!」
「あはは! ごめんなさーい。さすがアユちゃんだね!」
火精霊を倒したことでマグマの温度が下がったのか、岩石として固まり奥へと続く道ができていました。




