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第125話 栗毛聖女、聖職者として爆列岩と戦う。

 私たちはタンレンで受けられる簡単なクエストを受けてお金を溜め、武器屋でNPCからまずは武器をそれぞれ購入しました。


「私の杖、めちゃくちゃかっこよくない!?」

「……そうですね。個性的だとは思いますが、……そうですね」

「ミナツちゃん、そんな無理に納得しなくてもいいと思うよ?」


 アユちゃんが掲げている〝マーライオンの杖〟はライオンのマーメイドがモチーフの口から水を出すエフェクトがずっと発動している水属性魔法の威力が増加する効果が付与されたレプリカの杖で、店売りされている武器の中でも高価なものの一つでした。


「けど、アユちゃん随分と奮発したね」

「まーね。私ってラピスちゃんが守ってくれてお金をこれまで全く使ってこなかったし、それに―――ね?」


 私の方をチラっと見るアユちゃんは少し申し訳なさそうに自慢の杖をバトンのようにクルクルと回します。


「そうでござるな。ラピス殿は武器を買っておりませぬし、それどころか聖職者へと転職してしまってよろしかったので?」

「いいんだよ。プリアちゃんが抜けてマリアさん大変そうだし、私がフォローできるならしてあげた方が効率的でしょ?」

「そうだけどさ、ステータスもINTに振るなんて……、器用貧乏は高難度ほど大変だから極振りがいいってラピスちゃんが―――」


 みんなが新品の杖や剣を手にしている中で、私は夜をイメージした〝流星〟シリーズの防具に身を包み、星が小さく煌めく杖を握りしめます。


「そろそろ爆列岩(バクレツロック)を狩りにいきましょうか~」

「そうっすね。せっかくラピスちゃんが修道女になってくれたっすからあの団体様も余裕っす」


 ちょっとアユちゃんがいつもの雰囲気じゃないのを察してか、今は全員揃っているので、マリアさんが爆列岩へのリベンジを提案してくれました。私たちは火山へと向かって歩みを進め、武器によってダメージが上がったことを確認しながら大体の必要攻撃回数などを把握していきます。


「ねえ、今日のアユちゃんちょっと変じゃない?」

「―――自惚れかもしれないけど、アユちゃんって私優先なところあるからそれかも」


 茉実(アユ)ちゃんは優しいので、おちゃらけてるようでも私のことを考えて行動してくれています。だからこそ、私が自分から聖職者になりたいからなったのではなく、ヒーラー(回復役)不足で仕方がなくといったような状況での転職に気を病んでいるのだと思いました。


「ねえ、アユちゃん。この狩りが終わったらお話があるんだけど聞いてくれる?」

「うん? もちろん聞くよー!」

「じゃあ、さっさと爆列岩を依頼された分だけ倒しちゃおっか」


 火山地帯の麓、そのところどころに点在する穴の中に生息する3匹が並んだ赤黒い溶岩のような岩のモンスターが爆列岩(バクレツロック)です。1匹づつにHPが設定されていてすべて倒すとその数だけ倒したことになる仕様のモンスターで、逆に連結された全てを倒さないと倒したことにならない厄介なモンスターとも言えます。


『『『ロロロッ、ロォーーーック!』』』


「げっ! いきなり9連結かよ」

「コータ、倒す数は変わらないんだから関係ないよ!」


 そして、このモンスターのもう一つ厄介な特性が《《連結》》で、近くに別の爆列岩がいた場合に繋がって一つのモンスターになることです。これによって長期戦を余儀なくされ、倒すまでに時間がかかっている間にどんどん繋がっていくのです。


「〝刹那の輪舞〟ですわ。皆さん、長期戦ならクリティカル率アップで私は応援いたします」

「───放水(アクアディスチャージ)ッ! ───放水(アクアディスチャージ)ッ!」

「アユちゃん! その杖凄いね! やぁ! ―――掌打・神通発勁(じんつうはっけい)ッ!」


 ミナツちゃんが踊り、それぞれ新しい武器で攻撃を仕掛けていきます。その中でもマーライオンの杖から放たれる高速放水連打はアユちゃんにぴったりの武器で楽しそうです。私は転職したことでダメージの落ちた武道家スキルではなく、聖職者のスキルである最大HP割合固定ダメージを通常攻撃の間に叩き込んでいきます。


『ろ、……っく』

『『ロロォオオオッ』』


 1匹倒すごとに敵討ちのような盛り上がりをみせる爆列岩に付近の爆列岩が反応しておかわり状態で増えていきます。


「ヒールッ! ヤスナガさん、引いて! 移動速度増加ッ! リョウさんフォロー!」

「ラピスちゃん凄い~! はい、ヒール! ヤスナガさん、いってらっしゃい~」

「かたじけないでござる! リョウ殿、代わるでござるよ!」


 爆列岩が複数で1体のモンスター、そのため攻撃は別々に行われ普通に戦っていてもダメージを蓄積されてしまうのです。私は状況を見ながら杖に装備を変更してダメージを受けすぎてマリアさんの回復が間に合いそうにない人を前線から撤退させていきます。


「あーしが倒してしまってもよろしいっすね? ―――|フレイム・シャンデリア・ロマンス《炎灯物語》ッ! ……終幕っす」

「───ホーリーアドオン(聖属性追加)ッ! うん、これやっぱり好き!」


 みんなの攻撃で満遍なく削っていた爆列岩のHPがマヤさんのアユちゃんによって聖属性付与された大魔法で一気に同時に0になります。


『『ろろろろぉ~~~~、……っく』』


 カーンッ!


 爆列岩が断末魔をあげてまとめて砕け散りました。


「あ、15匹以上いたんだ」

「うん。これでクエストクリアだね!」

「それじゃラピスちゃん、やっとく?」


 みんなが私の方をみてアレを期待してくれているので、2本の指で空を指して高らかに「ぶいっ!」と声をあげました。








「どうだったかな? 私の戦い方、そんなに変わったと思う?」

「ううん! 前よりも凄かった!」


 アユちゃんは武道家として前衛として遊んできた私が聖職者としても前衛と一緒に戦うとは思っていなかったと思います。けれど、私は前衛をしながら弓で援護もしていましたし、武道家をやってわかったんです。私は守ったり癒すのが好きというよりは、きっとパーティーを組んでみんなと戦うのが好きなんだって。


「私、ミコさんと出会えてよかったと思うんだ。だってあんなに凄い人の戦い方を間近で見てこられたんだから」


 武闘家の時は素手と弓、今度は素手と杖の持ち替えになるだけで私のやることは変わらない。その武器を持ち替えて戦うプレイスタイルはミコさんから学んだんです。ボス戦やカゲミツさんとの戦いでのミコさんの動き、武器の持ち替え方、それは隣で並んで戦ってきた今の私だから可能になったプレイスタイルだから。


「そうだね。うん! それに、ラピスちゃんはやっぱり聖女様だね!」


 ……聖女はアユちゃんなんだよ。だって、私を救ってくれたのはアユちゃんなんだから。アユちゃんのその言葉がクラス替えで一緒になったあの子に声をかけられない私の心にしばらく残った。

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