第119話 赤毛聖職者、麦ダンジョンへ再度向かう。
私は高校を卒業し、実家のお店から出向という形で上京するということと、それによってミコさんと共にリアルがこれから忙しくなることをラピスちゃんたちに告げました。
「そうなんだ! 良かったねプリアちゃん! ずっと言ってたもんね、親孝行したいって!」
「うん! もっと多くの人に届けられるように頑張ってくるね!」
ギルドをせっかく作ってくれたばかりでログイン率が低下するのが申し訳なかったのに、ギルマスのラピスちゃんはまるで自分のことのように喜んでくれました。……本当に、いい友達を持てたと思います。
「うむ。わっちも陰ながら応援しておるぞ」
「いや、ミコさんが陰ながらっておかしいから……」
「あはは! ミコさんは十分に手を差し伸べてくれたからね! あとは私の頑張り次第だよっ!」
恐らく、ミコさんの言葉は文字通り陰ながら応援してくれると思っています。ただでさえゴリ押し気味で今回の業務提携を通してくださいましたし、これ以上はさすがに公私混同と言われても否定できないでしょう。
「しばらくまともに遊べないなら悔いないようしましょうよ」
「さすがリョウ、いいこというね~!」
「では、ここにリトル・ア・ポコの全員が揃っておりますゆえ、麦ダンジョンへリベンジといきませぬか?」
「うん、いいと思う。ヤスナガさんの案でいいかな? 他になければリベンジしよう。せっかくだしアレスさんとハナさんも誘ってみるね。近くにいるらしいから」
私、ラピスちゃん、アユちゃん、ミコさん、ミナツちゃん、コータくん、マリアさん、マヤさん、リョウさん、ヤスナガさん、ギルドメンバー10人でのパーティーならどこでも通じる気がします。けれど、ラピスちゃんはあの宝物庫は12人での攻略で挑んだ方がいいと考え、アレスさんとハナさんを加えてフルパーティーで攻略しに行くこととなりました。
「初のギルドメンバー全員での狩りだね! すっごく楽しみ!」
「そうですね。なんだか坩堝蜜竜戦を思い出してしまいますね」
「あれも楽しかったよね~。花火になったスイカニッパーとか笑えたしw」
いっぱい冒険しましたけど、この冒険が終わったら私は一休み。だから精一杯楽しもう。この大好きなゲームの世界で、薬草娘として……、聖職者として。
宝物庫の強敵に備えてアイテムなど準備をして私たちは麦ダンジョン入り口へと辿り着きました。
「ここが麦ダンジョンなんですね。ビール村で話を聞いた感じですとなんでも八岐大蛇が封印されているそうですよ」
「ノドカナ村とカソッタ村、そしてビール村、この三つの村を跨いだ連続クエスト報酬は〝麦酒の樽〟というアイテムっす。それを貰う時にこのダンジョンの話を聞いたっす」
「うむ。宝物庫を特定の条件でクリアした場合に隠しボスが出現するとのことじゃ。ハナに掲示板などで調べてもらった限り誰もまだ攻略したことのないボスじゃな」
マリアさんとマヤさん、そしてミコさんがリョウさん、ヤスナガさんと共にクエストを私たちが学園生活を送っている間に進めて3人分のクリア報酬が手に入ったそうです。
「リョウさん! ヤスナガさん! ありがとう!」
「いえいえ、僕らもフワマリンネを手伝っていただきましたし。それにキーアイテムを使って一緒に隠しボスと戦えるならなんの問題もないです」
「そうですぞ! ワシらは同じギルドの所属。つまり仲間なのですからな!」
「……俺たちはゲストとして貢献できるように頑張るとしようか」
ヤスナガさんの言葉に少し申し訳なさそうなアレスさんとハナさんをラピスちゃんがフォローしていますですけど、この麦ダンジョン攻略に来てくれただけ私たちは嬉しいんです。きっと伝わっていると思いますけど、伝わっている気持ちの何倍も嬉しいんです。
『うがぁああ〜⋯⋯』 バタンッ
中ボスであるジャック・オランウータンとの戦闘は過剰戦力により一瞬でおわりました。そしてダンジョンの最奥にあるボス部屋、その手前の立て看板の前まで私たちはやってきたのでした。
【 ↑ ボス部屋《ご自由にお入りください》 】
「今回はこっちじゃ。普通にまずはムラクモと戦うとしようぞ」
ギィィィィ……―――
ミコさんがボス部屋の扉を開きます。私とアユちゃんがあの宝物庫で最後に見た蜘蛛のモンスターがダンジョンボスとしていました。麦藁帽子をかぶった雲のような模様が浮かんだ水色の蜘蛛、ムラクモは私たちパーティーメンバー全員が部屋に入ったのを確認すると襲い掛かってきました。




