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第115話 栗毛聖女、エルオヴィー先生と戦う④

「来てっ! リンネ!!!」


 私は装備したアクセサリー[流星の指輪]が嵌めてある右手の中指を見てあの子の名前を呼びます。……この世界にコンバートしてから随分と経ってしまいました。

引き継いできた装備〝流星〟シリーズの中で唯一、職業による装備制限のないこの[流星指輪]を装備して多くの戦いを乗り越えてきました。


『―――っ♪』


 呼びかけに応えてくれた妖精リンネは黒曜石に似たダークライトという、指輪にはめ込まれた宝石と同じ羽を広げて空を飛びます。


「あっ! リンネちゃんだ!」

「あー。そういやラピスにはリンネがいたか」


 出てきたリンネにプリアちゃんとコータは反応し、私が何をしようとしているのか察してくれました。


「え? ラピスちゃんの契約モンスターですの? 可愛いですわね」

「かわいいっ! 私のニーニャと同じくらいかわいいっ!」


『~~~っ♪』


 アユちゃんとミナツちゃんの言葉にリンネは嬉しそうに旋回を始めます。


『ふんっ!』


 そんなこちらの状況などお構いなしにエルオヴィー先生は杖を振り下ろしてきたので私は慌ててリンネに指示を出します。


「リンネっ! 断絶の盾(ゼロシールド)ッ!!!」


『―――〝断絶の盾〟発動』


 無機質な声と共にリンネの羽が光りを放って《《私の封じた魔法》》をミナツちゃんにかけてくれました。


「ミナツちゃん!」

「え、あっ! やぁー!!!」


『ぐっ……見事だ! 素晴らしい青春! たしかに届いたぞ!』


 そして、私たちの一撃はエルオヴィー先生のHPを0にしたのでした。膝を折り、消えていく先生は私たちに『LOVE(ラブ)』とだけ伝えて消えました。


「ちょっとまっていただきたいのですが、え? 断絶の盾ってどういうことでしょうか? いえ、そもそもリンネとは一体なんですの?」


 戦闘が終わり気が緩んだミナツちゃんは私にリンネのことについてあれこれと尋ねてきたのでアユちゃんと共に私の相棒のことを説明しました。


「つまりラピスちゃんの契約モンスターってこと?」

「うん。前にこっそりと呼び出しを試したんだけど出来なくて、アユちゃんがニーニャと契約できたから告知なしで実装されたのかなって思って試したら呼び出せたの」

「リンネちゃんはね! ラピスちゃんがリンネちゃんに使った魔法スキルをね! 一つだけ羽に保存して好きなタイミングで使えるんだよ!」

「まあ、一日に一回しか使えないって制約はあるけどな」


 プリアちゃんとコータもリンネについては詳しいので捕捉をいろいろとしてくれました。


『~~~っ♪』


 嬉しそうに飛び回っていたリンネが私の肩に座ってきたので、私は優しく撫でてあげると気持ちよさそうにして、それからッパっと指輪の中に吸い込まれるように消えていきました。


「さ、ドロップアイテムとか確認しようよ!」


 とりあえず外で待っているであろうクラスメイト達にダンジョンクリアの報告をするために私たちはドロップアイテムを拾い、宝箱などないかだけ部屋の内部を確認してダンジョンを後にします。


『『せいしゅ~~~ん! キャーーーッ!』』


 存在を忘れていたガクモリーもダンジョンの外へと羽ばたいていきました。





「もうすぐ卒業か~」

「なんか、短い間に色々とあったね」

「そうですね。けれど―――とても充実していましたわ」

「楽しかったね! 青春アカデミー!!!」

「だな」


 そして、私たちは卒業式を迎えました。学園ダンジョン、そこは青春という思い出を作るためのダンジョンだったようで先生のドロップ品は[黒歴史の魔導書]という魔力が暴走し、無詠唱で魔法が発動できるようになるが消費MPが一番多い魔法しか発動できなくなる効果が付与された[本]装備でした。


「しかし、この装備どうするんだよ……」

「誰も欲しがりませんでしたね」


 とても強力な装備に思えますが魔法の発動後を考えるとかなりの制約が付いています。例えばプリアちゃんだと中級極滅魔法しか使えなくなり、一度撃つとMP切れで動けなくなります。アユちゃんだと得意のスキル連携が使えないので火力が落ちる可能性が高いのです。


「まあ、思い出にプリアがもっとけよ」

「お、コータいいこというね!」

「うん。私もコータの意見に賛成かな」

「そうですわね。それがいいと思います」

「───ありがとう! みんな! 大好きっ!」


 それでもみんなで倒したモンスターのドロップ品という思い出補正は強く、クラスメイト以外の誰かに売ったり譲るという選択は私たちはあり得ないのでした。そして、この学園生活を楽しみにしていたプリアちゃんに持っていてもらいたいという思いは私たち4人ともが抱えていたので満場一致でプリアちゃんが所有者になったのでした。





『卒業生代表として、ラピスさん前へ』


 学園長先生から急に私の名前が呼ばれ、まったく何もわからないまま壇上へと私は移動します。みんなは頑張れって言ってくれてますけど、リハーサルもなしに卒業生代表って何をさせられるのでしょうか。


『こほん。貴殿は当アカデミーのダンジョン攻略のリーダーを務め、生徒全員で一丸となってクリアして卒業したことを表しここに表彰と褒賞を与えます』


 渡された卒業証書には『ダンジョンクリアおめでとう』とエルオヴィー先生の文字が余白に書かれていました。


「おっ、スキルが増えた!」

「私もよ!」

「おれもおれも!」


 一緒にダンジョン攻略に挑んだクラスメイトの人たちから声が聞こえます。どうやら卒業生全員に対してスキルが新しく出てきたようで私も確認します。


 【青春玉】 このスキルを所有しているパーティー内のプレイヤーの最大MPの10%づつを消費することで団結した思い出が籠った青春玉を作り出し攻撃するスキル。威力は発動プレイヤーの魔法攻撃力と消費MP、所有プレイヤー数で変動する。


 ッバ!


『そのスキルは君たちの青春そのもの! 絆のスキルだ! 卒業しても一緒に学んだ学友を大切にな!』


 おじいちゃん学園長先生はエルオヴィー先生へと姿を変えて私たちを激励します。


『『『ありがとうございましたっ!!!』』』

「「「ありがとうございましたっ!!!」」」


 それに反応してNPCクラスメイトの子たちがお礼を言って頭を下げ、プレイヤーのクラスメイトも続いて頭を下げます。


「とても楽しく、よい思い出になりました。―――青春をありがとうございました」


 そして、私もお礼を言って壇上から降ります。盛大な拍手の中を恥ずかしながらも胸を張って歩いて席まで戻りました。


「ラピスちゃんおつかれさま~。頑張ったね」

「ほんとだよ。いきなりで緊張した~!」

「けど! 立派だったよ!」

「そうそう、すっごくよかった!」


 アユちゃんとプリアちゃんが私に声をかけてきてくれて、それを見たクラスメイトの人たちがどんどんと私を囲んでわいわいし始めます。


「……卒業式ってこんな感じなんだね」

「そうですね。―――あちらでも青春をしっかりと謳歌して、また笑顔で卒業式を迎えましょうね」


 ミナツちゃんの言葉が私にはとても優しく聞こえて、森永先生や茉実ちゃん、奈津美ちゃん、それから仲良くなった他の子たちとも一緒に卒業式を迎えたいと強く思い、現実の学校生活をこれからも頑張っていこうと私は新たに決意して青春アカデミーを卒業したのでした。

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