第114話 栗毛聖女、エルオヴィー先生と戦う③
[先生のMPが尽きたみたい! それでも私たちはダメだったけど、ラピスちゃんたちならきっとやれるよ! 頑張ってね!]
私はルリリンさんから届いたメールを見て、学園ダンジョン攻略というみんなで攻略したいという想いを託された気がしました。
「やっぱりMPが尽きたな。道中のモンスターが消えてたりしたのは一番攻略が進んでいるプレイヤー基準でダンジョンが生成されるからという予想は正しかったというわけか」
木蓮くんが言うように、複数パーティーではありましたが私たち全員でダンジョンに入ったのが結果的に功を奏したようです。
「まぁ、エルオヴィー先生のMPが尽きることを前提とした《《死に戻り攻略法》》が正攻法だったらパーティーメンバー変わるたびにやり直しになるもんな」
「じゃあ、俺たちは行くけど―――本当にいいのか?」
次はバスルくんたちがエルオヴィー先生攻略に向かいます。そして、彼が何を尋ねているのか。それを理解して私はガッツポーズで見送ります。
「みんな! 頑張ってね! 大丈夫。みんなが倒しちゃっても私たちは後悔しないから」
「……おうっ! ちょっくらぶっ倒してくる!」
「そういう取り決めで一緒に攻略しようって犠牲になってくれた人たちのためにも私たちが挑む順番を変えるわけにはいかないよねー。期待はしてるけど、あえて言おうかな~~~、せいぜい私たちのためにHP減らしておいてね」
覚悟を決めてエルオヴィー先生との戦いに赴く彼らをアユちゃんはからかいながら応援して送り出します。バスルくんが左腕をッバとあげると、それを見た木之下くんたちもくすりと笑って同じようにッバと左腕をあげ、そのまま歩いて階層を降りていきました。
「なんかかっこよかったねー」
「アレは中二病だけど、ラピスちゃんって不治の病に罹ってたりする?」
「しないよ~! もうっ!」
「ボクもかっこいいと思ってしまった……けど男なら絶対にやるだろ。だから中二病じゃない」
私のことを中二病ってアユちゃんはひどいです。自分に納得させる理由を言い聞かせている時点でコータは中二病だと思いますよ? 確か、リアルだとちょうど中学二年生だったはずですしね。
「そういえばラピスちゃん。ルリリンさんからは他に何か情報は頂けなかったのでしょうか」
「えっとー。殴り合いになって負けちゃったって書いてあったけど詳細はわからないかな」
「そうですか。負けられない戦いですので少しでも情報が得られればと思ったのですが……」
ミナツちゃんが気負い過ぎている気がしたので、私は気分転換に食べ物しりとりを提案してみたところアユちゃんとプリアちゃんがノリノリで参加を表明、コータとミナツちゃんも巻き込まれる形で時間を潰すことになりました。
「それじゃ私から。バナナ」
「菜っ葉!」
「パパイアですわ」
「ア、アッポ~! あっぽ~ぉおおおお!!!」
「……鮎でいいだろ。なんでアッポ~なんだよ」
「さすがに私が鮎っていうのは卑怯かなって―――」
アユちゃんのあっぽ~でしりとりはすぐにグダグダになって終わりました。その後はクラスメイトたちのことをあれこれと話しながらいい感じに気が抜けて、緊張がほぐれた頃にメールが届きました。
[すまん。殴り合いで勝てなかった。健闘を祈る]
バスルさんからの短いメールには詳細はなく、戦闘時間もしりとりをしている間に終わるほど短かったため高威力の攻撃でやられたため詳細が書けなかったのだと私は推測し、みんなに伝えました。
「文字通りの近接戦闘なのでしょうか。攻撃力も高そうですしどのように攻略いたします?」
「単純に攻撃を耐えろってことなのかな?」
「いや、あのパーティにはシルドンもいたからな。攻撃を耐えるだけならバスルたちがクリアしてたと思うぜ?」
シルドンさんは大盾を装備した防御特化のプレイヤーで確か物理攻撃ならどんな攻撃だって耐えて見せると豪語されていましたっけ。その彼が沈む攻撃には私たちでは耐えられないでしょうね。
「なら殴り合いって文字通り、ワンパンされる攻撃を耐えて殴り返せばいいんじゃない?」
「アユちゃん! 冴えてる!」
「さすがアユ、脳筋の発想としかいえねー……。だけどありかもな、一度の攻撃ならラピスの断絶の盾で耐えられるし」
「そうだね。なら私が断絶の盾をきっちり決めるからミナツちゃん! 攻撃をよろしくね!」
「―――わかりました。そのお役目、私が責任を持って果たさせていただきます」
作戦も決まり、私たちは再び最下層でエルオヴィー先生を向かい合います。
『よく諦めずに来たな! それじゃあ、殴り合いといこうか!』
ルリリンさんたちがMP切れの後の会話を聞いていたためか、私たちは説明なしに殴り合いイベントへと移行したようです。私は即座に[変化の指輪]と[チョコレート帽子]を装備して断絶の盾を無詠唱し待機させます。
「ねえ、ちょっと試したいことがあるんだ」
「え? アユちゃん何を―――」
「───放水ッ! からの~! 水縛陣ッ!」
する気? という私の言葉が出る前にアユちゃんが魔法を放ち、連携スキルによる拘束を試みました。
「あれっ? 当たり判定がない?」
「発想は良かったと思いますよ。そうなると恐らく、攻撃を耐えた後にしか判定が発生しないのでしょうね」
「アユちゃんはいっつも言葉より先に―――っと、くるよ!」
こうして会話している間も歩みを止めないエルオヴィー先生はプリアちゃんの目の前に立ちにこやかに手に持った杖を振り上げます。
『『キャーーーッ!』』
再びガクモリーのバフが追加され、物理攻撃力と物理防御力が上昇したようです。もし、これが予想通りイベント戦闘ならこのバフによって私たちは一撃で倒されますし、与えるダメージも1になることでしょう。
「プリアちゃん! 大丈夫、安心して殴って!」
「うん! 私もせっかくだしラピスちゃんみたいに正拳突きしてみるっ!」
「―――断絶の盾ッ!」
武道家に転職していないのでスキルは使えないはずなのに、私の真似をして構えをとるプリアちゃんがとても可愛いです。そうこうしているうちに杖を振り下ろすモーションに入りましたので、待機状態の断絶の盾を発動しました。
『ふんっ!』
パリンッ!
「やぁー!!!」
ポスッ!
エルオヴィー先生の攻撃により断絶の盾は砕けましたが、無傷のプリアちゃんによる正拳突き? が入り全快していたHPの25%ほどを削ることができました。
「えっと……。これ、あと3回?」
「パーティーメンバーの数だけ耐えろってことかも……」
冷静に考えれば一回の攻撃を耐えることは前の二組だって何かしらの方法でできたでしょう。けれど、それが続かなかったのが敗因と捉えるべきでした。そして、この減り具合で全滅ということは誰か一人でも死亡判定を受けたら全滅させられると考えるべきですね。
「次はボクか」
戦闘開始時に離れていた距離はすでにほとんどないので、先生はすぐさまコータへの攻撃へと移ります。私は急いで[チョコレート帽子]の装備を解除してプリアちゃんへと渡そうとしますが間に合う気がしません。
「二人とも、ここは私たちに任せて次の準備お願いね。―――いくよ、ニーニャ!」
『ににゃ~~~~ぁ~~~』
気の抜けた声をあげて飛び出してきたのはアユちゃんの契約モンスター、二俣の猫のニーニャでした。
「コータ、少し下がって。―――ニーニャ、〝幻術・偽〟ッ!」
アユちゃんのスキル指示によってニーニャは少し下がったコータと先生の間にコータの幻影を作り出しました。
「これ、当たり判定貰うと消えるからその後に攻撃ねっ!」
「りょーかいっ! ―――〝一閃〟ッ!」
幻影が消えたタイミングでコータの攻撃が入りますが、プリアちゃんのほぼダメージが入っていないような攻撃と同じ25%ほどのHPが減少しました。
「確定だな。あと二回、―――ラピスッ!」
コータの叫びで私は身構えます。すぐさま目の前に来た先生が杖を振り上げて私へと攻撃を仕掛けますが、私はプリアちゃんを信じて攻撃の機会に備えます。
「―――断絶のっ! 盾っ!」
パリンッ!
「ありがとう! ―――てやぁ!」
プリアちゃんから断絶の盾が間に合い、私は通常攻撃にて反撃して先生のHPを削ります。これで残りHPは25%です。
「あと一回っ! けど、もう手がないよ?!」
「―――大丈夫、《《私たちならきっとできるから》》!」
装備品である[チョコレート帽子]の受け渡しをすることで、プレイヤー二名による〝断絶の盾〟の再使用制限時間を無視して二回使うという手は受け渡しから発動までの時間を考えてもう使えません。それでも私は勝利を確信して仲間に託します。
「かっこよく決めちゃってね、ミナツちゃん!」
「―――えぇ、私はラピスちゃんを信じています」
そして、ミナツちゃんの元へとエルオヴィー先生はやってきて杖を大きく振り上げたのでした。




