第113話 栗毛聖女、エルオヴィー先生と戦う②
「てい! やー! ―――掌打・神通発勁ッ!」
『っふ、私を動かすとはやるじゃないか! だが終わりではない! 青春は終わらないっ! 第二ラウンド開始だあああああ!!!』
隙をみて正拳突き、ダメージ倍率が低い部位への攻撃は最大HP参照型の割合ダメージスキルである掌打・神通発勁を使用し、効率的にダメージを与え続けること十数分、ついにHPを一定割合減らすことに成功しエルオヴィー先生は後ろへ飛び退きました。
「エルオヴィー先生、自分から動いてるじゃん」
「私たちの攻撃に耐えきれずに動いたんだよ。……たぶん」
正直、INT極振りなプリアちゃんの回復魔法と、同じくINT極振りのアユちゃんによる魔法相殺がなければこのゴリ押しは成立しなかったかもしれません。二人とも魔法威力をあげるために振っていたステータスですけど、最大MP上昇とMP回復アイテムの効果量上昇の恩恵が私たちを救いました。
「でも! ここからが本当の戦いだね!」
「うっし! 後半戦も頑張っていくぞー!」
プリアちゃんとコータの気合の入った掛け声とともに私たちはエルオヴィー先生へさきほどと同じ戦法で戦いを続けます。
『青春は恋愛だー! 学園蝙蝠、黒歴史書召喚! さぁ、苦い思い出も乗り越えて青春を謳歌したまえ!』
『『キャーーーッ!』』
『ヒダリテガウズクッ!』
新たに表れた二匹のガクモリーは天井にぶら下がりってエルオヴィー先生へ黄色い歓喜の声援を送り、真っ黒な本型のクロヒストリーは先生の左腕に吸い込まれて消えました。
「モンスター召喚って! そのモンスターで襲ってこないのっ!?」
「あくまで先生との戦闘ということでしょうか。私は好感が持てますね」
『私を倒してみなさい! もし出来なくても卒業まで何度でも挑んできなさい! 諦めない心! やり直しが効く学生の今! この青春を大事にしなさい!』
物理攻撃力と物理防御力の上昇エフェクトである赤と青のオーラを纏い、左腕に小さな魔法陣が複数刻まれたエルオヴィー先生は―――。
『 極大陽光消滅柱 』
《《上級極滅魔法を無詠唱で放ちました》》。
――――――
「あの理不尽な攻撃に対応するためにはどうしたらいいと思います?」
「パーティーメンバーを増やすとか? けど、極滅魔法って範囲攻撃だし無駄かなー」
「ラピスちゃんでも思い浮かばないか~」
エルオヴィー先生に負けて数日が経過しました。あの後、あのダンジョンについて考察した結果、それまでの階層で出てくるモンスターについて授業の中にヒントがあったので、もしかしたら授業を受けていれば何かわかるかもしれないと私たちは勉強に勤しみました。……しかし、もうすぐ卒業式ですのでタイムリミットは間近に迫っていました。
「あっ! ラピスさん! ラピスさんと一緒に学園生活できたから私、強くなれた気がする。いろいろと教えてくれてありがとうね!」
学園に入ってから栗毛聖女の眼がきっかけで色々と実技テクニックについて教えてあげたルリリンさんが私に対してお礼を述べると次々とクラスメイトから感謝の言葉をかけてもらえました。
「じゃあ! 私も! ラピスちゃん! 一緒に勉強できて楽しかったよ!」
「え? プリアちゃんまでどうしたの? まだ卒業まで何日かあるよ?」
「ラピスちゃん! お別れの時に感謝を伝えるってのは素敵だよ! ―――だけどっ! その時に勇気が出なかったら! タイミングが合わなかったら! ずっと後悔をするんだよ!」
プリアちゃんの言葉を私は、いえ、私たちは真摯に受け止めて、お互いに学園生活を楽しく送れた感謝の言葉を言い合いました。
「―――プリアちゃん、私も言葉にしたら分かった気がする。別れ際の言葉ってのも素敵だけど、伝えたいことがあるなら余裕がある時に相手と向き合って伝える。恥ずかしいけど凄く大切なことなんだね」
私の言葉にプリアちゃんは嬉しそうに「うん!」と答えてくれました。それから再びあの即死するような攻撃に対してどうするか話し合って、先生のセリフを思い出しながら声に出しているとバスルくんが面白そうだなと言って話に加わってきました。
「なあ。そのダンジョン、おれたち全員で攻略しようぜ!」
そして、バスルくんはクラスのみんなを巻き込んでの攻略法を提案してきました。
「何度でも挑んできなさいって言ったんだろ? なら何度も挑むのが攻略法じゃないのか?」
「けど即死らしいよ? 何の意味があるのよ」
「例えばエルオヴィー先生のHP・MPは引き継ぎの仕様で、空になるまで死に戻り特攻するとか」
「なるほど。物理攻撃のバフをかけていたってのも、MPが空になった後の戦闘を考えてのことかもしれないと考えることもできるわけか」
ルリリンさんや木之下木蓮さん、その他にもクラスメイトの人たちが徐々に会話に入ってきて次々と意見と言い合い、攻略方法を考えていきます。
「よし! じゃあ時間もないし死亡罰則もあるから挑戦回数はそんなにないだろ。全員でダンジョンに一斉に潜って数人づつ最下層に突撃でどうだ?」
そして、バスルくんはMPが切れるまで少数特攻を提案しました。
「お祭りみたいで楽しそうだけど、レベル低いからやめておこうかな……」
当然、私たちが即死するようなダンジョンを攻略しようとすることに参加を戸惑う声は出てきます。
「ワンチャンそれを耐えたらクリアってものあるかもだし、その時はそいつらが報酬ゲットってことで」
そういう人たちを、もしかしたら強いレア装備とかが手に入る可能性を提示してお祭りにバスルくんは引き込みます。こうして大規模な、そして恐らく最後になるであろうダンジョン攻略という学園のイベントが再び幕を開けたのでした。




