第111話 栗毛聖女、状態異常無効が無効な状態異常に苦戦する。
第4階層は点在する蝋燭や提灯の明かりが照らす薄暗い部屋で、そこは火の玉のようなモンスターがうようよと漂っているお墓でした。
「学園の地下にあるお墓って……。この学園の闇を感じるよ」
「ラピスちゃん、よ~~~く見てみて! あれ、チョコレートだよ?」
「え? チョコなの?!」
ちょっと怖い感じかなと思っていたらアユちゃんから火の玉の正体を教えられました。なんと浮いていたのは光を放つドロっと解けたチョコレートでした。
「えっと確か〝無念のチョコレートはモンスターと化す〟だっけ? エルオヴィー先生が授業で言ってた気がする」
コータの言葉を聞いて私もエルオヴィー先生が授業で確かに言っていたことを思い出します。
「うん、そう言ってた。思いを溜め込んで渡せなかったチョコ、受け取ってもらえなかったチョコは黒歴史パワーにより〝ダークチョコレス〟という魔物へと変貌を遂げる……だよね」
エルオヴィー先生の授業は陽光神さまの力を溜め込み過ぎた一般的なモンスター以外のモンスター発生原因、いわるゆ例外についてでした。人の想いは時に神の力を越えることもある。そんな話だったと思います。
「確かに勇気を出して渡してくれたんだから断るにしても誠意をもって受け取ったほうがいいよねー」
「ちょっとアユちゃん! 私の方見ないでー!」
コータのチョコレートを受け取らなかったのは悪いと思ってるけど、ホワイトデーにどっちの返事できないんだから仕方がないじゃないですか。
「……それよりさ、あれって聖属性が弱点だったよな?」
「ええ、怨恨で燃えているチョコレートには水属性も効果的だったはずです」
「私無双じゃん、ここは私に任せて」
「私も! 極滅魔法やっていい?!」
「プリアちゃんはダメかな。また回復使えなくなると困るからね」
助け舟を出す形でコータたちがこの階層での戦い方についての話へと移行させてくれました。私は第2階層でのプリアちゃんの暴走を思い出してその提案を却下します。
「よーし! 《《私の新武器》》、あのチョコたちに味わせてあげるね!」
意気込むアユちゃんは新たに手にした杖を掲げてさっそく魔法を詠唱し始めます。
「私はここも踊ったほうがよさそうでしょうか?」
「そうだね。ミナツちゃん、念のため頼んでいいかな?」
「それじゃ、いっくよー! 放水 ッ! ホーリーアドオンッ!」
アユちゃんがいつもの魔法セットを発動して攻撃していきます。ミナツちゃんが神秘の輪舞を踊り出し、それを確認してから私とコータはアユちゃんが攻撃したモンスターに止めを刺して回ります。
「どうだぁー! 私の新しい武器の味はー!」
「どやらないでください。それ、私の〝《《見習いの杖》》〟ですわよ」
「その通りなんだけど、同じ武器でもテンション上がるっていうか、ミナツがくれた杖だし私たちの力だー! って叫びたいの。わかるよね?」
「わからないのですが……」
ここであのオアシスでのやり取りを思い出してみます。結論から言えば何もイベントは起きずにアユちゃんの杖は消滅しました。初心者用の武器とはいえ武器は武器、少ないながらも火力ダウンするところでしたが見習い転職をしていたミナツちゃんが貰っていた〝見習いの杖〟を、つまりは前と同じ武器をアユちゃんにあげることで対応したのでした。
「それにしても、このダークチョコレスって案外とHP高いよね。―――正拳突きっ!」
「それだけ未練がましいってことだろ。っち!」
「回復ッ! コータ! ダメージは気にしないで!」
コータがダメージを受けるとすぐにヒールが飛んできてHPが回復します。薬草娘を自称しているプリアちゃんがちゃんと本調子であるのがわかって私もこれまで以上に踏み込んで殲滅に向かいます。
『ごめぇえええええええええええんっ!』
順調に戦えていたのも序盤だけで、少し大きめのダークチョコレスが現れてからは私たちは度々劣勢に立たされます。その低い無念の叫びあげながらのタックルは《《特殊な恐慌状態》》を引き起こして行動不能を引き起こしました。
「っちょ、コータ! ラピスちゃん、早く殴って!」
「くそぅ! やっぱそういう状態異常あるよなー!」
ダークチョコレスはサイズによってHPが違うようで、大きめのは倒すのに時間がかかり攻撃をコータはどうしても受けてしまうのです。そしてやっかいなのは、稀にこの状態異常にしてくるスキル攻撃も織り交ぜてくることでした。
「踊りに意味がないのでしたら、私も前線に出ます! ―――火炎斬ッ!」
「ちょっと! ミナツ、また燃やさないでよー!」
「あ、ごめんなさい。一番威力の高い技を選択しましたけど悪手でしたか」
ミナツちゃんも攻撃に加わり、水属性で固めたダークチョコレスを再び燃やして弱体化を解除したりとハプニングはありましたが安定して大きめのも状態異常を受ける前に倒せるようになってきました。
「気功法・集中妙技ッ! やぁ!」
私は前衛三人になって小さめのモンスターなのでお互いに邪魔になる可能性を考えて下がって弓に持ち替えて攻撃を続けます。
「はぁ……。なんとか終わったー!」
「お疲れ様。一番アユちゃん頑張ってたからね。はい、ドロップのチョコ」
「うぇ。アレの落としたチョコレートでしょ? なんか受け取りたくないかも」
「アユちゃんいらないなら私がもらう! たしか食べるとMP回復するよね?!」
第4階層での戦いが終わり、次はいよいよ第5階層のボス部屋のはずです。
「ニーニャ~~~。がんばった私を癒して~~~」
『ににゃ~~~』
ニーニャを召喚してアユちゃんはゴロゴロします。モンスターと一緒に墓地も消えて明るくなったこの部屋で休憩をとってから私たちは先に進んだのでした。




