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第110話 栗毛聖女、名付けを行う。

 アユちゃんが呼び出せるようになった猫又の契約モンスター〝ネコキャット〟の名前を決めるのにとても揉めました。


「ねこざぶろう! この子はねこざぶろうだよ!」

「プリアちゃん、そういうのは風来坊っぽい見た目の猫につける名前だと思うな」


 それはもう、アユちゃんの契約モンスターというのを忘れて自分のペットに名付けを行うような感じで各々の主張が一方的に展開されて収集がつかなくなる程度に。


「私はエリザベスとか上品な感じの名前の方がネコっぽくていいかなと思いますが」

「コイツがそんな上品に見えるか? タマとかポチで十分だっての」

「コータさん、ポチは犬に付ける名前なのでは?」


 あーだこーだ言いながら……、契約者たる飼い主のアユちゃんを置いて話は進みます。


「ラピスちゃんはどう思います?」

「ねこざぶろうだよね!」

「じゃあ、ミケ。これなら文句ないだろ」


 コータは聞いたことある感じの名前を適当に言ってるだけですね。ミケ名付けられると猫は三毛猫、三色の毛色ネコに付ける名前ですよってミナツちゃんが言っています。まあ、付けちゃいけないルールはないのですけど、私も何かモヤるので却下ですね。


「茶トラ模様のネコキャット……、二尾の……」


『ににゃ~?』


 送還されずにずっと部屋を回っていたアユちゃんのネコキャットが私の足元にすり寄りながら鳴き声をあげます。


「……ニーニャ」

「ニーニャ! いいね!」

「悪くないんじゃねーの? ラピスの案で」

「可愛らしいですわね。アユちゃん、いかがです?」


 鳴き声から安直な発想で口から漏れた私の言葉にみんなが反応していきます。ミナツちゃんが最後にアユちゃんへ尋ねます。ずっと無反応だったアユちゃんが目を輝かせて私の手を握ってきました。


「いい! ラピスちゃん最高だよ!!! ねこざぶろうやエリザベス、ポチにタマとかセンスの欠片もない名前ばかりでこの子のこと嫌いになりそうだったけど、ニーニャなら好きになれそう!」


 復活したアユちゃんと、対照的に沈むプリアちゃんたち。あまりにあまりの言い方に他のみんなは逆に凹んでいます。けど、茉実ちゃんは猫が好きなのでロールプレイ要素以外は気に入っていそうなんですよね。そんな猫ちゃんにあんな名前のやりとりをされたら一言いいたくなる気持ちもわかります。


「それじゃ、いこっか! ――――みんなも考えてくれてありがとね。……私のニーニャみたいなかわいい子だといいね? 今度は私も一緒に考えてあげるよ、な・ま・え」


 みんなの契約モンスターはどうなるんでしょうね。コータもプリアちゃんもMSOでは未契約でしたし……。いえ、そもそも契約アイテム自体があちらでも激レアでしたし今回は実装ボーナスみたいなものでしょうか。


「ねえ、このダンジョンって何階層あるの?」

「5階層で最後がボス部屋だって木之下木蓮が言っていたぞ」


 レアアイテムの入手が2階層目で発生したことに疑問を持った私の問いにコータが答えてくれます。ちなみに、木蓮くんは称号が苗字のように馴染んでフルネームで呼ばれるような存在になっていました。


「次の階層に到着だよ!」

「ギミックに注意したほうよさげだね。さっきの林檎の木、バッタに攻撃されて破壊されたらダンジョンから追い出されてかもしれないよ」


 再び階段を下りて進んだ先には砂漠にあるオアシスのような空間が広がっていました。


「……休めってことかな?」

「あの害虫! 休ませてくれなかったし! HPもMPも回復したいよね!」

「プリアちゃんは休んでいたでしょう……、私たちもニーニャの件で時間回復させていただきましたし。とりあえず探索してみて、何もなければ素通りをするということでよろしいでしょうか」


 さきほどのマーブルバッタのようなモンスターが新たに現れなければ戦闘ギミックはないと考えて次へ進むという提案に同意して階層の探索を私たちは行う事にしました。


「あ、HPポーション見っけ」

「こっち! MPポーションあったよ!」

「こっちは解毒薬。やっぱり状態異常系のダンジョンだな」

「みごとに回復アイテムばかりですね」

「だね。まるで次からの戦闘に備えてくださいって感じるよ」


 私は獲得できるアイテムからちょっと気を引き締めないといけないかなっと思いました。オアシスの周辺もある程度調べ終わり、何も起きないことを確認して休憩エリアの階層だったと私たちは結論付けをしました。


「そろそろ行きましょ―――」


 ドボンッ


「うかって、―――何をやっていらっしゃいますの?」

「私の武器を投げ入れてみたんだけど、何か起きないかな?」

「そんなあなたの落とした武器は金の斧? それとも銀の斧? みたいな展開が起きるわけが……、武器を投げ入れたってこの先どうするんですか!?」


 アユちゃんは笑っていますけど、ミナツちゃんの言うことはもっともなのでもっと言ってあげてください。プリアちゃんもコータも笑っていますけどこれは笑えないなと私は顔を引き攣るのでした……。

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