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第107話 栗毛聖女、学園ダンジョンに入る。

 授業が進み、戦闘面での実技課題もクリアした私たちは学園内のダンジョンに関する情報を手に入れ、そのダンジョンがあるというレンガ造りの時計塔へと足を踏み入れました。


「おっ、ここに見るからに怪しいブロックがあるよ」

「アユ、押してみてよ」


 コータに言われてアユちゃんが壁から一つだけ出ている色違いのブロックを押し込みます。ズズズズ......という重低音が鳴り響いてガタンッと床の一部が沈み地下へ降りるための階段が出現しました。


「じゃあ、ボクが先頭でラピス、プリア、ミナツ、アユの順でいいかな?」

「おっけー! ミナツちゃんとアユちゃんは私の後ろだね! 何か感じたらすぐに声を出してね!」


 カツンカツンと狭い螺旋階段を私たちは一段づつ降りていきます。コータの指示した並びは二人並んで降りるのがギリギリできる幅の通路ですので、一人づつ縦に並んで剣など攻撃の動きが阻害されないようにあえて空間を作るために必要なことでした。


「そういえばこの並びって懐かしいね。コータが前で、プリアちゃんが後ろ。あの時の私は修道女だったしプリアちゃんも魔法使いだったけど」

「そうだったね! あの時はどこだっけ!」

「三つのボス戦をバラバラに行わされる〝ゾティア神殿〟だよ。ソロ攻略は仕様上不可能なところ」


 プリアちゃんが「あ~っ!」と言っていますけど私も懐かしいですね。あそこはMSOでエミルさんにギルドに誘ってもらって初めて挑んだ最前線の高難度ダンジョンでしたっけ。


「そうそう! 私たちを年少組とかで一纏めにして頑張って来いって! ジャスターさんが組ませたんだよね!」

「―――羨ましいですね。昔のラピスちゃんはどんな子だったのか少し気になります」

「だねー。ま、私たちは私たちでこれから思い出を作っていけばいいよ! どうせ昔話は恥ずかしがってしてくれないしね。そこは後でプリアちゃんに聞けばおっけー!」

「任せて! ラピスちゃんの話なら! 何時間だって話せちゃうよー!!!」


 そりゃ恥ずかしいですよ。まったく、アユちゃんたちには絶対に私からは話しません! ……と言ってもプリアちゃんから聞き出すんでしょうね。はぁ、あの子は私のことに関しては口が軽いので。


「そろそろ警戒して。天井に学園蝙蝠(ガクモリー)、3匹いるよ」

「じゃあ私が空波拳で先制するね。コータとミナツちゃんは牽制、コウモリだから何かしらバットステータス持ってると思うから近寄らせないで」

「じゃあ私が火力だね。狭いし放水に絞るよ」


 階段を抜けて通路に出ても通路幅は変わりませんでした。そんな薄暗い通路でコータに言われて少し先の天井を見ると逆さにぶら下がっている制服を着た蝙蝠がいました。私が提示した作戦に異論がないことを確認して攻撃に移ります。


「―――〝空波拳〟ッ!」


『ギャギャギャッ!』

『『キャーッ!』』


 私の攻撃を受けたガクモリーは少し低めの声で威嚇してから私に向かって飛んできました。二匹のガクモリーは黄色い悲鳴を上げますがそのまま動かずに見守るという謎の行動を取りました。


「想定外だけど、アユちゃん!」

「栗毛聖女の眼(ラピス・アイ)、標準セットッ! 〝放水 (アクアディスチャージ)〟ッ!」


 わざとらしくラピス・アイを口に出して魔法の標準待機状態からターゲティングを行い、ガクモリーが私に到達する前に撃ち落とされました。大ダメージを受けて目がぐるぐる回っているのを見て気絶(スタン)状態であることを察したコータはすぐさま追撃に移ります。


「トドメはお願い―――〝一閃・峰打ち〟ッ!」

「わかった! ていっ!」


 初見の相手、かつダンジョンというモンスターのレベルも少し高めに設定されているであろうことからHPが1だけ残るが威力が高い峰打ちスキルをコータが使って私はすぐさま接近し最後の一撃を入れました。


『『キャー!!!』』


 それの鳴き声は同音異義、再び二匹から発せられた叫び悲鳴のように感じました。それの感覚が合っていたようにすぐさまダンジョンの奥へと二匹は逃げていきます。


「追う?」

「―――いいえ、団体様で戻ってきそうですわ。私は踊りに回ります。コータさんとラピスちゃんは状態異常を気にせずに戦ってください」


 私がどうするか尋ねると同時に微かに何かが聞こえ、重なった鳴き声が小さいながらも聞こえてきました。


「ねぇ、ミナツのアレって反則(ズル)だよね」

「私もそう思うけどボスモンスター固有の状態異常なんかはさすがに無理じゃんじゃないかな」


 私とアユちゃんはミナツちゃんの踊りスキルについてやっぱりズルいという認識をボソボソと共有します。


「ちょっと、聞こえてますわよ! ほら、集中してください! もう見えてきています、―――神秘の輪舞《ミステリアス・ロンド》ッ! 私が踊っている間は状態異常無効ですのでコータさんも安心して攻撃してくださいね」

「……ほぼチートじゃん」


『ギャギャ~……』


 私たちは難なく群れを壊滅させましたが、先ほどの二匹は再び奥へと逃げていきました。


「ね! ここにいたらまた群れ連れてくるんじゃないかな!」

「無限ループって怖くね? ……古いか」

「はいはい。コータは置いて私たち女子パーティーで先に進むよ~」

「アユひどくね!? って、後衛が先頭歩くなよ」


 私たちの横を通り抜けて先に進みだしたアユちゃんをコータが慌てて抜き返します。


「ねぇ、なんとなくですけど、麦ダンジョンの宝物庫に似てません?」

「狭い通路だからかな。あとそこに物量で押してきてる辺りもそう感じる要因かも」

「お宝! ここにもあるといいね!」

「お宝いいね! 私もそろそろ新しい杖が欲しいよー」

「……そういえばなんでアユは初期杖なんだよ」


 コータに私の弓もアユちゃんからもらった〝見習いの弓〟であることをツッコまれそうなので私はこの話題をスルーしてどんどん進みます。


「階段だよ。次の階層へゴーゴー!」

「そういえばラピスちゃんもアユちゃんから貰った初期装備の弓でしたわね。弓術スキルで攻撃をするようになったのですから新調してもいいかもしれません」


 ミナツちゃんに言われてそうだねってみんなが言い出します。……正直忘れてましたとは言えず愛想笑いで誤魔化すのだけで精一杯で、私は逃げるように次の階層へと足を踏み入れたのでした。

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