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第105話 栗毛聖女、お返事をする。

 私はコータからの視線に確かな真剣さを感じました。VRゲームで真剣な眼差しってなんだろうと思う人もいるだろうけど、VRゲームだからこそ視線は何よりもモノを言うと私は思っています。


「……えっと、ごめんなさいっ! コータの気持ちはすっごく嬉しい。でも、私がまだ釣り合わないの……」

「そっか。―――じゃあラピスがもっと自分に自信が持てるようになるまで待つよ」

「……あっ、ちがっ、―――わないかも///」


 コータは年下で、私にとって弟のように感じていましたけど、正面からこうして私の返事に対して向き合ってくれてたのが嬉しくて、とてもかっこよく映って……。


「コータ、あのね。……もしも、本当にもしもの話だけど、……私がリアルでも自信をもって生活できるようになるまで好きでいてくれたのならその時は―――」

「その時はラピスがチョコをくれよな! 《《オレ》》、恥ずかしかったんだからさっ」


 さっきまでかっこよかったコータが急に子どもっぽく見えて、だけど可愛く思えて、きっと私はコータに甘い恋をしてる。そんな気がしました。


「コータくん、さっきの言葉忘れないでね? ラピスちゃんを悲しませたら私たちが許さないから」

「ええ、私たちの大事な友達ですものね」

「だよっ! コータ、ちゃんと待っててあげてね!」


 少し嬉しそうな顔でコータを脅してるアユちゃんとミナツちゃん、プリアちゃんですけど、そこは四人とも一緒に学園生活をしていたせいか、私とコータとは違った青春の空気が漂っていました。




『とてもいい青春をしているな!!!』




  そんな雰囲気をぶち壊したのは青春教のエルオヴィー先生でした。……先生、青春してるんだから邪魔しないでよ。


『コータくん! 振られたキミに私からチョコレートをあげよう!』

「いえ、結構です。ボクはラピスからのチョコ以外は受け取る気はありませんから」


 一刀両断で断られて撃沈しているエルオヴィー先生からアユちゃんがなぜか代わりにチョコをもらっていました。


『さて、ラピスくん! 最初に振ったキミを〝チョコレート大使〟に任命する! これからもお断りに励んでくれ!』


 私に謎の称号を授けて先生は去っていきました。そして、私は告白ラッシュに見舞われるのです。


「ボクが振られてすぐにエルオヴィー先生が『ラピスちゃんを落とせるのは誰だ!』って、叫んで回ってたらしいよ」

「あぁ、そういう系か~」

「アユちゃん、何かわかったの?」


 アユちゃんは、《《チョコレートは甘くて苦いもの》》だから振られるという苦い経験を私が与えるイベントへと変化した……という予想を話してくれました。


「お断りする方も苦いんだけど……。たとえ知らない人でも」

「それが〝チョコレート大使〟の役割なんじゃない?」

「なんて迷惑な称号なのかしら……」




 それから何度目かの告白をしてきた人を振って、木之下くんこと木蓮くんを振って今に至るのです。




――――――


『ラピスくん! よくぞ心を痛めながらも告白に耐えた! これはそんな君への報酬だよ』


【ビターチョコレートの帽子】 防御力+20、スキル[断絶の盾(ゼロシールド)]使用可能


「え?! なんかすごい装備もらえちゃった……」

「それだけラピスちゃんがイベントを頑張ったってことだよ。告白してきた人たちだってラピスちゃんのことを間違いなく好きだったと思うし」

「そうなの? てっきり勢いで私に告白してきただけだと思ってたけど違うの?」


 みんながアユちゃんの言葉に頷いていますけど、どうしてなのかを聞いてみると意外な、だけど納得できる理由で《《異性としてかは別にしても好意を抱かれている》》のが私にも今更ながらわかりました。


「そっか、告白してくれた人たちって栗毛聖女の眼(ラピス・アイ)のことを詳しく知りたいって私に聞きに来てくれた人たちだったんだ」

「気付いてなかったんだ……。まぁ、ラピスすっごいテンパってたし仕方がないか」


 コータが呆れながら私を見てるけど、誠意をもってお断りしてきたはずなので許してほしいです。と、心の中だけで言っても通じないですし、伝えるべきはコータではなく木蓮くんの告白を見に集まっている私の振ったみんなに対してなので、ちゃんと謝罪します。


「みんなの気持ち、本当に嬉しかったです! お断りしてごめんなさい!」

「いや、オレたちもラピスさんのこと考えてなかった。ごめんな」


 次々にかけられる優しい言葉に私は救われるのを感じました。


「みんな、私に好きっていってくれて、―――本当にありがとうっ」


 青春って、こういうのをいうのかなって、私はここまでの流れを作ってくれたエルオヴィー先生に少しだけ感謝しました。


「どうかな? この帽子、似合ってる?」


 そして、私はもらった帽子をさっそく被ってみると……。


「っぷ。ラピスちゃん、笑わせにきてるの?!」

「ふふっ、ごめんなさい。ラピスちゃんがあまりにも可愛くて」

「可愛い! 天然なラピスちゃんがだけどっ!」


 思ったのと違う反応をされて私の頭は?マークが何個も並びます。


「え? うそっ!? 似合ってないの???」

「ラピスちゃ~ん、ラピスちゃんの髪の毛の色は何色かな~?」


 髪の色? 変な状態異常も受けてないし〝栗毛〟のままだよね? ……あっ!


「―――っ! みないでー!! そんな目で私を見ないでぇ~~~!!!」


 私は髪の毛とほとんど同じ色の帽子を目元まで深く被ってその場から逃走するのでした。せっかくの凄い装備なのに〝栗毛 + チョコレート帽子〟は見た目が壊滅的だよ~(>_<)


 今年のゲーム内でのバレンタインはこれまでよりも騒がしく、そして恥ずかしい日となって幕を閉じたのでした。

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