女の子を拾った
「まずは砂漠地帯まで行ってみますか」
地図を見る限りではそれほど遠くでも無さそうですけど、夜間飛行はやった事がないので砂漠地帯に入る手前で小屋でも建てて一旦休憩しようと思います。
「よし、行こう」
地図をストレージに仕舞い、とりあえず大森林を越えます。
「広い、広過ぎる……」
結構な距離を飛んでいるはずですが、湿地帯が見えて来ません。
正直大森林なめてました。
「自然豊かで良いんでしょうけど流石に広過ぎますね」
馬車で行こうとしたら半年も掛かる訳です。
魔法やスキルがある世界だからこそ無茶な旅も出来るんでしょうけど、前世の世界なら冒険家とか特殊な人達以外は断固拒否すると思います。
まぁこっちの世界でも先程断られたばかりなので、馬車が通っていること事態が異常なのかもしれません。奇特な方も居たものです。
「そろそろ飽きて来たな」
という事で目視転移でショートカットです。
「前方障害物無し、転移!」
感覚的に100kmぐらいは転移出来たと思います。
「む、森が途切れてる! あそこから湿地帯か」
もう一度転移で湿地帯まで飛びました。
「おぉ、動物の群れだ。カバ? ゾウ? カバゾウ? 異世界動物ですな」
他にもシカっぽいのとかライオンっぽい動物の群れが居ます。異世界動物なのでシカっぽいのが肉食でライオンっぽいのが草食です。中々に異世界ファンタジーしてますね。
「ん、人か?」
牛っぽい動物を狙って槍を投げている部族の集団が居ました。ほぼ全裸で動物の頭蓋骨で作った仮面などを被っております。女性が多いですね。何がとは言いませんが上下にぷるんぷるんしてます。
見つかると厄介な事になりかねないので見つかる前にさっさと転移しましょう。
「湿地帯も結構広かったけど、もう砂漠か」
転移してるせいです。飛行スキルの経験値稼ぎとは何だったのか……。無理せず追い追いやって行くのが私流という事で。
お昼も過ぎないうちに砂漠地帯に着いてしまったので砂漠も越えちゃいましょう。
残るは火山地帯と峡谷です。
「行き倒れ……?」
川の流れのように流れていく砂の川や、滝のように流れ落ちていく砂の滝などを上空から眺めながら砂漠観光をしていると、遠くの方に人の様な物が倒れているのが見えたので転移で近付いてみると、ボロ切れ一枚を纏った黒髪褐色肌の女の子が倒れていました。
「酷い……」
手足があらぬ方向に折れ曲がっており、全身が黒くなった血だらけで、首と両手両足に枷が嵌められていて鎖が千切れています。
「奴隷……?」
時間が経っているせいか僅かにしか残っていませんでしたが、周りには複数の足跡と車輪跡、それと一際目立つ大きな足跡がありました。
「巨人か何かに襲われたのか?」
恐らくこの女の子はモンスターから逃げるのに囮として利用されてしまったのではないでしょうか?
惨い事をする……。
触らぬ神に祟り無しとは言いますが、この子をそのまま放っておく事は出来ません。胸が締め付けられるような感覚を抱いたまま、この先の人生を歩みたくはありませんので。
どう見ても死んでいるように見えますが一応呼吸と脈を確認します。
「息は、無いのか。脈は……微妙にあるのかな? これで生きてるって……」
生命力が強すぎる……。
だけどこんな状態で生き長らえていたと思うとすごく苦しかったと思います。
悲しすぎて涙が溢れ出て来ました。
「もう、大丈夫だからね。今、助けてあげるから」
ストレージからメガポーションを取り出して体全体に振りかけます。
見る見るうちに治っていきますが、治っていく過程が絶妙に気持ち悪いです。
これがゲームとかなら、ぱあっと光輝いて一瞬で治るんでしょうけど現実なのでぐにゃぐにゃと蠢いて正気度が削られます。直視しない方がいいですね。私は見ますけど。
体は元に戻ったので枷を錬金スキルで液化し外してあげて意識を失ったままの女の子を抱いて転移で湿地帯まで戻ります。
「ヤバッ!? って居るじゃん」
転移で全裸になった事を思い出しましたが今はスキルではなく魔法で行使しているので何の問題もありませんでしたね。
スキルで転移していた場合は装備判定にはならない女の子はそのまま砂漠に置き去りになっていた事でしょう。
錬金スキルで小屋を建てて木粉ベッドを作り女の子を寝かせます。
「着替えさせないと」
流石にボロボロの服のままじゃ可哀相だからね。というかそもそもこのボロ切れは服なのか? ボロボロになる前を想像しても人が着るような服には思えません。
とりあえずストレージから着せやすそうなワンピースを取り出してボロ切れを脱がせます。
「あぁ……下着もか……」
ボロボロのパンツは最早下着の体を成していません。
「……緊急時だからね。これは合法。何も問題は無い。それに私は美少女。犯罪にすらなりはしないのよ」
自分に暗示を掛けてストレージから水色のしましまパンツを取り出し、ボロボロのパンツを脱がせて穿かせました。(この間3分)
他人のを見るのは初めてでしたが意外と興奮しないものですね。
自分の鼻から何か赤い物が垂れて来ていますがきっと気のせいでしょう。
着替え終わったので木粉毛布を作って掛けてあげました。
「さて、どうしようか……?」
助ける事に決めたのは良いけど、どう考えても厄介事なのは明白。
起きたらどうしたいか聞いて、身寄りが無さそうならミャーさんかリスの料理人さん辺りに預けるのも良いかもしれませんね。良い人そうだったし。
付いて来たいと言った場合は……とことん愛でましょう。決定です。
「よし、料理でも作りましょうかね」
キッチンを錬金スキルで作り、ストレージから豚肉と牛肉、卵、ニンジン、ジャガイモ、キュウリ、キャベツ、レタス、トマトと各種調味料を取り出してハンバーグ定食を作ります。
ついでにプリンとオレンジジュースも作ってお子様ランチにしちゃいましょう。
まずは錬金スキルでエアロアダマンタイト製のボウルを作って挽肉魔法で豚肉と牛肉を挽肉にして手で混ぜ合わせ、塩胡椒と卵を一つ入れて捏ねます。
面倒臭いので万物魔法スキルでハンバーグ魔法を作成して挽肉を成形し、ストレージから鉄を取り出して錬金スキルでフライパンを作成して、成形したハンバーグを焼きます。エアロアダマンタイトでフライパンを作っても熱伝導率が最悪なので、ただの鉄の方が良いです。鉄分も取れるので健康にも良いですし。
ちなみに鉄のフライパンには細かく凹凸加工を施してあるので焦げ付きません。無駄な油を使わずにヘルシーな料理を作れます。錬金スキル様様です。
焼いている間にお子様プレートとお子様コップ、お子様ナイフとお子様フォーク、お子様スプーンをエアロアダマンタイトで作って置きます。持ち手などの目立つ部分にウサギさんやクマさんなどの動物シリーズを可愛く描いておくのも忘れません。木粉で食卓テーブルと椅子も用意しておきましょう。ついでにおしぼりも。
次にサラダ魔法で野菜を切って、もう一つ作ったボウルに入れます。
ドレッシング魔法でシーザードレッシングを作成して、最後に料理魔法でプリンとオレンジジュースを作って完成です。
「なぜ最初に思い付かなかったのか……」
無駄な魔法を複数作ってしまいましたが、まぁ良いでしょう。
ちなみに料理系の魔法は具材とレシピイメージが無いと発動しません。
未来道具のグルメテーブルなんかを真似した魔法を作っても良いんですけど、不味そうなイメージが湧くのでたぶん不味い料理しか出来ません。
魔法やスキルはイメージやインスピレーションが大事なのでダメそうだと少しでも思ってしまうとダメです。
レベルが上がればダメじゃなくなる可能性もありますが、少なくとも今はダメですね。
「どこかのファミレスみたいな出来だ……素晴らしい」
作ったは良いですが女の子が起きないのでストレージに仕舞っておきましょう。




