お別れをした
「おはようございます!」
「おはようロトルル」
一夜明けて、宿屋の朝食をミャーさんと一緒に食べています。
「唐突ですが、ミャーさんの面倒を見る事にしました!」
ヒューヒュードンドンパフパフ! と、ここがアニメの世界なら効果音が鳴り響く所ですが、現実なので私の脳内だけで鳴り響きました。
「……その、ありがとね」
「そんな迷惑掛けられないにゃ! あとは自分でなんとかするにゃ! ぐらいは言うかと思っていました」
「本当はそう思ってるけどね。自分一人じゃやっぱりダメかなって……安定してお金が稼げるまではロトルルに助けてもらった方が借りたお金もすぐに返せるかなって」
「そうですか、なら遠慮無く支援させていただきますね」
「お世話になります」
語尾に「にゃ」が無いと調子が狂うというか何というか……。
ここでツッコミを入れてもいいんですけどミャーさんにも思う所はあると思うのでやめておきましょう。
食事を終えて人気の無い森へと向かいます。
「……どこまで行くの?」
「この辺りでいいか……」
おもむろにミャーさんに近付いて手を取り、息が掛かるぐらいに顔を引き寄せました。
「あの、何かな……? ロトルル?」
「これからする事は絶対に誰にも言ってはダメですよ?」
「う、うん……。あまり痛くしないでね……?」
「痛く? ……ひょっとしてエッチな事でもされると思っています?」
「……違うの?」
「違います。野外プレイは流石に難易度高過ぎて無理です。ってそんな事はどうでもよくて、これからミャーさんにスキルを付与するので絶対に誰にも言わないでくださいね?」
「えーっと……冗談では無くて?」
「試しに金運スキルでも合成してみますか」
ストレージから金運スキルのブドウを取り出してミャーさんの手のひらに置いて液化合成します。
「ブドウが溶けて消えちゃったけど?」
「カードのスキル覧を見てみてください」
「うん。……みゃっ!?」
驚いとる驚いとる。ニヤニヤ。
「これでミャーさんはお金に困る事がそうそう無くなりましたね」
「こ、こんな事があって良いのかにゃ!? こんな簡単にスキルを増やすなんて神への冒涜にゃッ!!」
「うぇ!? 神!? ミャーさんって宗教家の方ですか!?」
「違うけど、獣人は信心深い人が多いのにゃ。もしこの事が周りに知れたら最悪ロトルルは監禁されるか、最悪殺されるにゃ……」
「ひえぇ……あ、あ、ミャーさん! 絶対に! 絶対に言わないでください! 言ったら誘拐して遠くに逃げますからね!」
「こんな事言えないにゃ! ……うぅ、おかしな子だと思ってたけど、ここまでとは思っていなかったにゃ……」
ど、どどどどどうしよう!? 逃げるか? いや、ミャーさんも連れてかないとダメだ。とりあえず獣人の多いフーリア大陸からは移動しないとヤバそうだからアリビア国へ行ってさっさとリコルス国に行かないと。
「ミャーさんのお世話はちゃんとするのでヒズル国まで一緒に行きませんか!?」
「ふえ? そんな遠くまで行かなくても私は何も言わないよ?」
「私の旅の目的地がヒズル国なんですけど、ミャーさんと一緒に行きたいんです! ダメですか!?」
「うーん……ごめん。流石に遠過ぎて怖いにゃ……」
「そう、ですか……」
「……あ、う、本当にごめんにゃ……」
「仕方ありませんね。……記憶を消し去るしかないか」
忘却ポーションを飲ませる時に抵抗されると面倒なので万物魔法スキルで忘却魔法を発動させましょう。
「物騒な事言ってるにゃ……本当に絶対言わないよ!」
「ミャーさんが言わなくても記憶を読み取る系のスキルや魔法を使われるとミャーさん自身も危ないって話ですけど、それでも覚えておきたいですか?」
「あー、うん。完璧に理解した。分かったにゃ! 記憶を消して良いにゃ!」
「記憶よ消えろー!」
「はやっ!? 心の準備があばばばばば!?」
忘却魔法でここ5分程の記憶を消し去りました。初めて使う魔法なので頭がパーになっていないと良いんですけど。
「あ? え?」
「ミャーさん凄いスキル持ってるじゃないですか! 金運スキルがあればお金に困る事なんてありませんよ!? 良いなぁ! 羨ましい!」
5分前の記憶と整合性が取れるように迫真の演技で騙します。
例え大根役者だとしても、その場のノリと勢いで押し通せば良いのです。
「えっと? 何の話だっけ?」
「え? いつの間にか金運スキルに目覚めてたのにゃ! っていう話ですけど?」
「うーん? そんな話してたっけ? あれ?」
「やだなぁ。ミャーさんまだ若いのに……」
「ムッ。物覚えは良い方にゃ!」
「そうですか。では100万エルを貸しますので、いつか10倍返ししてくださいね」
ストレージから自分のカードを取り出してミャーさんの持っているカードへ100万エル分を移しました。
何かと散財しているのでそろそろ稼がないと旅費がやばいですね。
「な!? 何してるにゃ!?」
「え? 大金を貸すからこんな人気の無い森まで来たんじゃないですか?」
「うぇ? そうだっけ?」
「そうですよ?」
「なんか納得いかないにゃ……?」
「ミャーさんなら大丈夫です。とりあえず現金で持ち歩くのはやめましょうね?」
「うっ、分かったにゃ……」
「じゃあ、街に戻りましょう」
「なんだか化かされてる気がするにゃ……?」
森から街へと戻り、街の門前でミャーさんにお別れを告げます。
「私はヒズル国を目指して旅をしているのでここで一旦お別れです」
「うぇ!? 唐突だにゃ!?」
私がヒズル国に行く事もミャーさんは忘れ去ってしまっているので、ここでボロが出ないようにきっちりと演技しておきましょう。
「リコルス国行きのゲートが開くまで半年から一年程掛かるらしいのでアリビア国経由で行こうと思っているんですけど、ミャーさんは一緒に来てくれたりはしませんよね?」
最後にもう一度誘ってみますがこれでダメならミャーさんとの旅は諦めます。
それに寂しくなったら転移していつでも会えますしね。
「うっ、流石にアリビア国やヒズル国は無理かにゃ……あはは」
やっぱりダメですか……あー、うー、やっぱり寂しいなぁ……。
無理強いは出来ないので血涙を流す勢いで諦めます。
「ミャーさんがお金を稼ぎまくって居るだろう2年後ぐらいにはディファス国に戻ってみる予定なので、それまでには大成しといてくださいね?」
「ロトルルの期待が重いにゃ……でも頑張ってみるにゃ!」
「はい! では2年後ディファス国で!」
「またにゃ!」
後ろ髪を引かれながらミャーさんと別れてアリビア国へと出発しました。




