姉妹になった
あれからしばらく経ちましたが女の子が起きません。
鑑定スキルで調べても特に悪い所は無いので純粋に眠っているだけの様ですが。
他にスキルなどを見てみましたが生命力スキルと裁縫がレベル1と料理がレベル3ぐらいで特に変わったスキルはありません。
「生命力スキルは祝福なのか呪いなのか微妙だな……」
このスキルのせいで生き地獄を味わってしまった訳ですが、このスキルが無かったらあのまま私に会えずに死んでいた訳で……こういうのを不幸中の幸いと言うのでしょうか? それにしても不幸が勝ちすぎてる気はしますが。
その不幸以上に幸せになって欲しいと心から願います。
「良さげなスキルでも合成しておきますか」
不運なこの子には運気アップ系のスキルを合成してあげたいと思います。
小屋から外に出て金運アップスキルを持ったブドウをストレージから取り出し地面に植え、肥料ポーションを霧吹きしてブドウの木を実らせ、鑑定スキルで運気アップ系スキルを持ったブドウを収穫していきます。
幸運、不運、恋愛運、仕事運、悪運、奇運、人運、社運、商運、健康運、出世運、運動力、強運、豪運、激運、超激運などなど運気に関するスキルが大量に手に入りました。
しれっと幸運系スキルでは無い運動力が混ざり込んでいましたけど、体を動かす力が上がるスキルなのでついでに入れておきましょう。
突然変異でネームドエネミーが誕生して暴虐の限りを尽くす、みたいな変なイベントフラグが立たないように残ったブドウの木は錬金スキルで液化して処理し、小屋に戻って女の子に合成するスキルを吟味していきます。
「幸運は決定でしょ、恋愛はまだ早いかな? 健康運は入れて、運動力も……」
あまり沢山詰め込むと、かえって不幸になる可能性もあるので幸運アップ、健康運アップ、運動力アップのスキルにしました。
それぞれレベル1に調合し直して、未だにすやすや眠っている女の子の手の平にブドウを3粒置き、液化合成します。
「どれどれ、うん。ちゃんと合成出来ましたね」
鑑定スキルで女の子のスキルが増えている事を確認しました。
「……ぅぁ」
「おや?」
女の子が小さく呻くと、長くて綺麗なまつ毛の生えた瞼をゆっくりと開けて目を覚ましました。タイミング的に健康運スキルを合成したおかげかもしれませんね。
「ここは……?」
起きた女の子がぼんやりとした表情で天井から部屋を見渡し私を見ると、か細い声で、そう質問してきました。
「ここは私が作った小屋の中だよ。私はロトルル。キミの名前は?」
私が名前を聞くと女の子は少し俯き、絞り出すように口を開きました。
「わたしは……名前がありません……」
訳アリなのは分かり切っていた事なので名前が無い程度は許容範囲です。
なんで名前が無いのか気になりますが、ここは一旦スルーしておきましょう。
「そっか……お腹空いてる?」
「……はい」
「じゃあ、ご飯食べよっか」
名無しの女の子を支えてベッドから起き上がるのを手伝い椅子に座らせて、お腹ポケットからストレージに仕舞ってあったお子様ランチセットを取り出して食卓テーブルに並べます。
「すごい……」
「キミの為に作っておいた料理だから遠慮せずに食べてね。もし不味かったら無理して食べなくて良いからね」
「ありがとう、ございます。いただきます……」
初対面だからか緊張している様に見えるけど警戒はされていない様です。私が子供って言うのもあるかもしれませんけど、これが前世のオタク君だったら直ぐに逃げられていた可能性もあるかもしれませんね。
「美味しい……」
満面の笑みを浮かべて、ぱくぱくと食べ進めていく女の子を見て、これが母性というものかと一人納得しました。
お子様ランチを頬張る女の子は、こんなにも尊いものなのか……。
その光景を静かに見守りながら(内心ではニヤニヤしながら)女の子が食べ終わるのを待ち、話し始めます。
「言いたく無かったら言わなくても良いけど、記憶を読み取る魔法を使うから素直に話してね」
「え……」
「犯罪者とかは流石に面倒見切れないから」
「そう、ですね……分かりました」
私も逃げている身分なもので、もしこの子が犯罪者か準ずる何かであれば、すぐにでも詰所にぶち込む覚悟が私にはあります。
幸せになって欲しい事と犯罪者を庇う事は別の話しなので。
「名前は本当に無いの?」
「わたしは奴隷なので、主人となる方に付けられるまで名前はありません」
「やっぱり奴隷だったんだね」
「……はい」
奴隷と言う言葉で女の子は苦しそうな表情になり、体が震え始めてしまいました。相当なトラウマがある様ですけど、このまま質問を続けます。
「年はいくつ?」
「13歳です」
「まさかの年上……私は10歳です」
私が10歳だと伝えると、女の子の体の震えが収まり、まさかのニヤケ顔になりました。
年下だと分かって御し易いとでも思ったのでしょうかね?
前世と合わせたらこっちの方が年上だぞ! 社会経験ほぼ無いから精神年齢的には子供のままだけど!
「……親とかは居ますか?」
「居ないよ。孤児だから」
急にタメ口になるじゃん。まぁ良いけどね。
「孤児ですか、私と一緒ですね」
「……そっか」
何でしょう? 同族を見る様な目をしてから少し睨まれたような……?
同じ孤児なのに自分は奴隷でお前は自由に生きててズルイみたいな嫉妬の念をなんとなく感じ取りました。私はニュータイプか。
「どうして倒れていたのでしょうか?」
「奴隷商の一人に突き飛ばされてモンスターの生贄にされたの」
「そう、ですか……ちなみにそのモンスターというのは?」
「砂漠の巨人族。知能は低いけど縄張り意識が強くて、ちょっとでも近付くと殺されてしまう。自分でもよく生き残れたと不思議に思ってる」
「運が良かったんですよ」
「……あのまま死んでも良かったけどね」
卑屈に笑う彼女に私は何と声を掛けてあげれば良いのか分からないので、次の質問に移ります。コミュ障治したいなぁ。
「……生き残ったあなたは今後どうしたいですか?」
「……分からない」
「やりたい事とかは?」
「何も」
「将来の夢は?」
「考えたことも無い」
「好きな食べ物は?」
「さっきの料理。美味しかったから」
さて、どうしましょうか? いや、ほんとどうしよう?
これは下手をするとヒキニートまっしぐらです。
食っては寝て食っては寝ての自堕落生活。
私がしっかりと導かなければいけませんね。
「分かりました。ちなみに逃げた奴隷が見つかった場合はどうなりますか?」
「鞭打ちされて再教育。でも私は捨てられたから、もう奴隷じゃ無い」
「そうですか。奴隷商に見つかっても同じ事言えます?」
「……い、いいい……ぅ」
「言えないんですね」
しゅんってしちゃって可愛いですねぇ。頭撫で撫でしてあげたい。
「アルリナ」
「え?」
「今日からあなたの名前はアルリナです。私の奴隷として、では無くて姉妹として一緒に生きて行きましょう」
ちょっと本音が漏れてしまいましたが、咄嗟に姉妹と言う事にして軌道修正出来たと思います。せっかく奴隷から解放されたと思ったらまた奴隷だったなんてかわいそうですもんね? かわいそうは可愛いですけどね。
「……ぁ、ぅ……ほんと?」
「ほんとです。お姉ちゃんは嘘つきません!」
「……そこは、妹、でしょ……ぅっ、ぐっ……」
ぼろぼろと大粒の涙を流してしまったので今度こそ抱き着いて頭を撫で撫でしてあげました。スンスン、あぁ……女の子特有のいいにほひ……フヒッ。




