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パラダイムシフトした

 砂漠で死に掛けていた元奴隷の褐色娘アルリナを家族として迎え入れ、ロトルル一行は未だ小屋の中に居た。

 というかアルリナが泣き止むまで数分待っていただけですけどね。


「落ち着いた?」

「うん」


 さてさて、姉妹と言うからには少しでも私に似せないと、変に疑われたりするのでまずは髪の色から変えて行きましょうか。


「今から魔法で髪の色を変えるけど何か問題とかある? 答えは聞いてない」


 万物魔法スキルで染色魔法を発動して、アルリナの髪の色を有無を言わさず私と同じ白茶色に変えてやりました。


「酷くない?」

「奴隷に戻りたいですか?」

「……ご自由にどうぞ」


 次は瞳の色です。


「綺麗な黒眼だね。水色になれ!」

「あぅ!?」


 これまた私と同じ瞳の色に変えてやりました。


 眼科などで視力検査する時に使う検査装置で、謎の気球を見ていると突然風が吹き掛けられる程度の衝撃なので、視力が悪くなったりはしないです。もしなってもポーションで治せます。この世からメガネっ子を根絶する事も可能という事です。


「服を脱いでください」

「何故?」

「肌の色も変えるので」

「……私が私じゃ無くなる気がするのでやめてくださいお願いします」

「脱げ」

「嫌だ」

「妹のくせに生意気だぞ?」

「あなたより年上です!」

「見た目が同じぐらいなんだから誤差よ、誤差」

「横暴が過ぎる……!」


 お姉ちゃんの言う事を聞かない悪い妹なので脱衣魔法で強制脱衣させ、ベッドに押し倒してやりました。


「ひどいよ……」

「ガチ泣きされると心が痛くなるのでやめてください」


 本気で嫌がったので肌の色はそのままにしといてあげました。


 脱がせた服を着なおしているアルリナをガン見しながら会話を再開します。


「さてと、茶番はこの辺りで終わりにして旅の続きに戻りましょうか」

「結構本気じゃなかった?」

「気のせいですよ……」

「……それで、旅って?」


 何ですかそのジト目は、興奮するのでやめてくださいよ。


「……アリビア国のゲートでリコルス国へ行き、ドラゲン島へ船旅をしてヒズル国へ向かう旅です」

「……リコルス国で別れましょう」

「ダメです。家族はいつも一緒! ヒズル国が住み心地の良い国だったら永住する予定なんですから」

「無理! 途中で絶対に死ぬよ! 海を渡れる人なんてごく一握りだって噂だもの!」

「なんとでもなるはずだ!」

「どこから来る自信なの……?」


 私の素晴らしさを懇切丁寧に説明するとアルリナは半信半疑という感じですが納得はしてくれた様でした。

 目をグルグルとさせていたので理解は出来ていないかも知れませんけど。


「という事で飛行スキルを合成するので手を出してください」

「スキルの合成なんて、ロトルルは本当に禁忌者なのね」

「禁忌者とは?」

「見つかれば即死刑の大罪人、冒涜者。ヒトナラズ」

「大丈夫? 記憶消そうか?」

「見つかれば家族も皆殺しだよ? 記憶を消されて訳も分からず理不尽に殺されたくは無いかな……」


 フーリア大陸の宗教観怖すぎぃ!

 さっさとリコルス国へ行きましょう。そうしましょう。


「では、この何の変哲も無さそうに見えるブドウを手の平に置くと……あら不思議! 溶けるように消えて無くなってしまいました!」

「まるで詐欺師の口調だね。それでロトルルはわたしに何をしたのかな?」

「飛行スキルをアルリナに合成しました」

「……そう。もう飛べたりする?」


 もう突っ込まないぞという強い意志をアルリナから感じました。

 順応力が高いというか、元奴隷だから受け流すスキルが高くなっているのかも知れませんね。いつか受け流しスキルを見つけられたらアルリナに合成してあげましょう。


「室内飛行で死に掛けた人を私は知っています」


 今頃彼は空を自由に飛んでいる事でしょう。はしゃいでいる姿が容易に想像出来ます。


「うっ……外に出ようか」


 小屋を出るとアルリナは勢い良く空の彼方へと飛び上がって行きました。


「きゃああああああああああぁぁぁぁぁぁ…………」


 オイオイオイ、死ぬわ姉。


 一度助けたからには簡単に死なれては困りますし、死んでも生き返して、なんなら不老不死にして私が満足するまでずっと私の姉をしてもらう所存だったりします。

 愛が重い? エゴイスト? クレイジーサイコレズ?

 ただの甘えたがりの妹ですが何か?


 宇宙へと昇って行く姉の真上にゲートを開いて私の真横に出口を開いて受け止めます。


「ふぐうううう!?」

「うぎゃっ!?」


 踏ん張りが効かずにアルリナと共に吹き飛び転げ回りましたが無事にキャッチ出来たので全てヨシッ!


「イテテ、アルリナ大丈夫ですか?」

「なんとか……うっ、オロロロロロ」

「ひえぇ……生暖かい、けど……この心地良さは何だというの?」


 嘔吐物を背中に掛けられ、新たなるステージへとパラダイムシフトするロトルルなのであった。


 美少女の嘔吐物をぶっかけられるとかご褒美じゃん?

 前世のオタク君が「その性癖、粛清してやるッ!」と叫んでいる様な気もしますが既に目覚めてしまっているので、ただ在るが儘を受け入れて次のステージへと駆け上って行くだけです。


 清掃と浄化魔法で清潔にしてハイポーションを振り掛けて擦り傷などをを治しました。クセになってんだ、ハイポーションの無駄遣いって奴が。

 ちなみにハイポーション一本10万エルで買取されます。売値がいくらかは知りません。


「さぁ、練習あるのみですよ!」

「むりー!」

「恐怖心など犬にでも食わせておけばよろしい。妹に出来て姉に出来ない事などありはしないのだから」


 イヤイヤ期の幼児並みに頭を左右に振るアルリナを抱えて強制的に空の旅へと連れ出します。


「離さないで!」

「恐怖とはッ! 知らぬ事を知ろうともせずッ! 自分が何に恐怖しているかも分からずにッ! 何かカッコイイ風の名言を言いたかったけどッ! 思い付きで喋っているのでッ! 何が言いたかったか忘れたッ! いいから飛べよおおおおおッ!!」

「嫌ああああああああああああぁぁぁぁ…………」


 抱えていた手を離して自由落下して行くアルリナにピッタリ横付けして飛び、彼女の恐怖に染まった表情を思う存分堪能しながら鼓舞します。


「飛べる! 飛べる! アルリナなら絶対に飛べる! 気合いだ! 気合いだ! 気合いだ!」

「この鬼畜外道悪魔あああああああ!!」


 ブチギレたアルリナが私に頭突きを入れようとして飛行スキルを使い始めたので、私は甘んじてアルリナの頭突きを迎え入れました。これぞ姉妹愛。


「ゴフッ!」


 お腹にズシリと来ました。アルリナの覚悟、ちゃんと受け止めましたよ。


「はぁ……はぁ……なんだ、結構簡単だね!」

「覚悟した人間に不可能は無いですからね」


 飛行スキルの訓練は無事に終わったのでアリビア国へと出発します。


「少し休ませて!」

「出鼻を挫かないでくださいよ」


 仕方無いので一旦休息します。


「汗かいたから水浴びしてくるね」

「あぁ、ならお風呂作るんでちょっと待っててください」

「……ほんと、なんでもありだね」


 アルリナと一緒に入りたいので大きめの浴槽を錬金スキルで作り、ストレージ内に入っているハイポーションだけでは足りないので、その辺に生えている薬草から作ったハイポーションを浴槽に満たしてファイアボールで40度ぐらいに温めたら完成です。

 ハイポーションの無駄遣いはやめられない、とめられない、とどまらない。


「さ、背中を流すのでこっちに来てください」

「やっぱり一緒に入る気なんだ」

「姉妹で入るのに何か問題でも?」

「もう好きにしてよ……」


 服をストレージに仕舞いシャンプーを取り出して全身を洗っていきます。

 ちなみにシャンプーと言っていますが成分的にはハチミツ入りのせっけん液なので体に使っても問題ありません。それに植物から作り出しているので環境にも良いです。


「これせっけん液? 初めて見た……」

「飲みます?」

「飲めるの?」

「飲める様に調合するので少しお待ちを」

「飲めない物を他人に勧めないで」


 アルリナの全身をなめ回すように洗い終わったので次は私の番です。フヘヘ。


「洗うの上手いですね」

「うん。奴隷仲間を洗ったりしてたから」

「なるほど」

「……前も洗ってあげようか?」

「お願いします!」

「元気良すぎてお姉ちゃん引いちゃう」


 イチャイチャしながらお互いの体を洗い終わったのでゆったりと湯船を堪能します。


「はぁ……気持ちいい」

「抱きつかれながら言われると別の意味に聞こえるよ?」


 アルリナの背中側から大きなぬいぐるみにでも抱きつくかのようにして、アルリナの肩に顎を乗せて密着しています。セクハラです。


「どっちの意味でも気持ちいいです」


 他人と一緒にお風呂に浸かるなんて前世の記憶でも覚えていません。

 何というか凄く心が満ち足りてウルトラハッピーな気分です。


「人生って何が起こるか分からないものだね」

「そうですよ。なんなら死んでからも色々ありますからね」

「ふふ、まるで死んだ事があるように言うんだね」

「ええ、まぁ、前世の記憶がありますので」

「へぇー。前世はどんな人だったの?」

「そうですねぇ……ブタ……?」


 ロトルルの精神攻撃! 前世のオタク君に8000ダメージ!


「ブタ……」


 ロトルルに貫通ダメージ! 前世に攻撃すれば自らに跳ね返ってくる!


「今とそんなに変わらないですよ。……根は」

「根以外は変わっちゃったと」

「女の子に転生しちゃいましたからね……おっと、今のは無かった事に」


 油断してうっかり要らぬ事まで喋ってしまいました。反省。


「ふーん、前世は男なんだ」

「秘密です」

「女の子の振りをしてぺたぺた触ってきてロトルルはムッツリスケベさんなんだね」

「は、はぁ!? 違いますけどぉ!? オープンスケベですけどぉ!?」

「そっちを訂正するんだ……ふふふっ」


 つい口が滑って前世が男だとバレてしまいましたがアルリナが楽しそうなので、まぁ良いでしょう。


 お風呂から上がり魔法で体を乾かしてストレージからTシャツとミニスカート、白パンツを取り出してアルリナに渡します。


「さっきと違う服だけど?」

「動きやすい服装の方が良いかなと思いまして、あと趣味です」

「前のワンピースも動きやすかったけど、趣味ならしょうがないね」


 何の文句も言わずに趣味丸出しの服を着てくれる良い姉を持って私は嬉しいです。


 アルリナが着替えている所をチラ見しながら私もTシャツと水玉パンツと短パンを穿いて最後にお腹ポケットを張り付けて着替え完了です。


「ロトルル」

「な、何でしょうか? 着替えを見てたりとかそんな事はしていませんよ!」

「アイテムボックス系のスキルを隠したいならそのポケットまで仕舞ったら意味無いよ」

「あー……素で気付いていませんでした……次からは気を付けます……」


 は、恥ずかしいいいいいいいいいい!! 穴があったら突き抜けて宇宙の藻屑になりたい!

 油断が過ぎるぞロトルル!


 耳まで赤くなっている気がするので空の旅で涼む事にします。


「今から砂漠を越えますが、飛行スキル初心者のアルリナには少しキツい旅になると思うので、私はアルリナの後ろにピッタリとくっ付いて飛ぶのでアルリナの飛びやすい速度で飛んでください」

「うん」

「それじゃ行きますよ」


 二人で空に飛び上り、向かう方向を指で指し示して砂漠横断開始です。



 この時、ハイポーション風呂の処理をすっかり忘れていたロトルルであったが、その月の狩りはいつも以上に苦戦したものの動物達の肉付きが大変良く、豊穣の神に感謝する部族達が居たとか居ないとか。

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