来世に期待した
「命を救ってくれた事には感謝しますが、そいつを生かしておくわけにはいきません! こちらに引き渡していただきたい!」
「どうぞどうぞ」
「おい! ですわ! くぅぅ!!」
マガツアケホシによって瀕死の重傷を負わされたエルフとドワーフたちを救ったロトルルは現在、エルフとドワーフたちにマガツアケホシを引き渡して欲しいと頼まれたのであっさりと了承したのでした。
「それでは私は行きますね」
「お待ちを! 命の恩人様に何かお礼をしたいのですが!」
「旅の途中なので、お気持ちだけいただきますね」
「そうですか……では、このご恩は子々孫々に伝えて感謝し続けます!」
「あはは、どうも……」
伝言ゲームみたいに尾ひれ背びれが付いて変な伝説が後世に伝わってしまうのでしょうけど、名乗っていないので私の名誉が傷つく事は無いはずです。
どうせ伝えるのを止めても噂を止める事は不可能なので、ここは少しでも記憶に残らないようにさっさと退散するとしましょう。
「……言っておきますけど、今のワタクシでも本気を出せば、この方達どころかこの島ごと無に帰す事も可能ですわ」
マガツアケホシが放つ重圧で膝がガクガクしてきました。殺気ってこういう感覚なんですね。エルフとドワーフの数人が膝をついて嗚咽を漏らしてます。
スキル全部取り上げたのに全然強いままじゃないですか! チート反対!
「……私に脅しは効きませんよ?」
「十分に効いているように見えますわよ? ですわ……とりあえずですわを止めて欲しいですわ」
「語尾にですわは解除します」
「次にこの口調も直して欲しいですわね……語尾直ってますよね?」
「汚い言葉を使うなと命令しているだけでお嬢様言葉で話せとは言っていませんが?」
「……まぁ、いいでしょう。一人称も戻していただけるかしら?」
「一人称はワタクシ、アケホシ、我のいずれかを使いなさい」
「……何故そこだけこだわりますの?」
「美人がオレなんて台無しですから」
「そう……。では最後に、我から奪い取ったスキルを返しなさい」
「返さなくてもいいと思いなさい。これは命令です」
「……貴方、中々に強欲なのですね。まぁ、いいです。スキルなど無くてもどうとでもなりますから」
「ごぷっ!?」
また私の体を腕で貫通してくれやがりましたよ! ちょっとクセになって来ちゃったじゃないですか! 変な性癖増やさないでくれます?
「貴方、何度油断すれば気が済みますの?」
サナノウタをチラッと見ると「ママならなんとでも出来るよね!」という謎の信頼感たっぷりの眼差しでこちらを見ていました。
「恩人様っ!?」
「恩人様がやられてしまった!」
「皆、勇気を振り絞れ! 今が恩を返す時! 行くぞ!」
「おおっ!!」
エルフとドワーフたちが震える体に鞭打って無理矢理立ち上がって来ましたが、マガツアケホシにあっさりやられてしまう未来しか見えないので、ここは転移でこの場を離れましょう。
「ゴホッ、て、転移……」
「あん?」
直近で印象に残っていた世界樹の若木に転移しました。
「ここは……」
「ゴホッ、ゲホッ、死ぬ……死んじゃう……」
「はっ、そんな体で無茶するからだろ……おぉ、身体の自由も戻って来やがってるぜ。ハハハッ、つまりこのままテメェをひき肉にすればクソッタレな命令も解除されるっつー事だよな? ええ? おい?」
「やめてください、死んでしまいます……ゲホッ、ゲボッ!!」
あー、ヤバイ、ちょっと無茶し過ぎました。マジで死にそうです。
「なぁ、取引しようぜ? オレを自由にしてくれたらオマエは助けてやるぜ? 悪い話じゃねぇだろ?」
「……はぁ、はぁ、他者に迷惑を掛けないのなら、良いですよ……」
「なに? オマエってそういう感じ? 違うよな? どっちかっつーと、オレ側だよな? なぁ? つまんねー事言ってないで素直に助けを求めろよ? 自分以外はどうなっても良いから私だけ助けてくださいって、な?」
「わたしは、美人で、可愛い子が、傷付くのが、死ぬほど許せないんですよ。ケホッ……ゲボォッ」
「ふーん。じゃあ、死ねば?」
私の体から腕を引っ込め、再度胸を貫くと今度は心臓を鷲掴み、引っこ抜いてしまいました。ちょっとだけ気持ち良かったです。
「笑顔でくたばるとか、気持ち悪ぃやつ……」
引っこ抜いた私の心臓と私自身をゴミでも投げ捨てるかのように地面にポイ捨てされ、マガツアケホシがどこかへと飛び去って行くのをぼんやりと眺めながら、私の意識はそこで途絶えてしまいました。
完。
☆長い間応援ありがとうございました! ロトルル先生の来世にご期待下さい!




