卑猥な変身呪文を口遊みたくなった
前回までのあらすじ。
レイドボス的な存在に身体を乗っ取られてしまったロトルルは、分身体ちゃんの活躍により、なんとか難を逃れたと思いきや、まつろわぬ神サナノウタを降臨させてしまってあら大変。
ロトルルはこの先生きのこる事は出来るのか、そもそも世界崩壊の危機なのできのこる先生するよりあっさり逝きたいと思うロトルルなのであった。
「まるで前回までのあらすじを回想しているような顔をして、どうしたのママ?」
「節目節目で前回までのあらすじを回想するのが癖なだけです。それよりも私の事をママと呼ぶのは何故でしょうか? 私にママ要素などあまり無い気がしますが」
貫かれた胸や、しこたま叩かれ腫れ上がったお尻を治すためにメガポーションを振り掛けながらサナノウタ神に問い掛けました。
「ママが切っ掛けで私が産まれたんだからママはママでしょ?」
うるうるした瞳で上目遣いとか、見た目は私なのに中身が違うだけでこんなに可愛く見えるなんて……くっ、負けた……!
「認知しますので、私の見た目で私より可愛く振る舞うのやめてもらえます? サナノウタさんの元の姿でならどんな可愛いも受け入れられますけど、私以上に私を可愛く見せられるのは正直言って辛いです……」
「あはっ! 私が思っていた以上にママって、ううん、それよりも私の事は呼び捨てで呼んで欲しいかな? サナノウタ、サナ、サナちゃん、サナノ、サナノちゃん、ウタ、ウタちゃん、他にも好きな呼び方で呼んでね!」
「じゃあ、シン・サナノウタおふぅッ!?」
「可愛い娘に対して呼ぶ愛称じゃないかなってサナは思うよ?」
一瞬だけ感度3倍ぐらいの快感が身体を駆け巡りました。可愛いからといってサナノウタ神をからかってはいけません。今後は気を付けましょう。
「ではサナと呼ばせてもらいますね」
「えへへ、じゃ、元の姿に戻るけど、直視すると目が潰れるから気を付けてね!」
「……直視してもいい姿でお願いします。親子のスキンシップとか取り難くなっちゃいますので」
「えー、しょうがないなぁ……。にゅるにゅるびゅくびゅくぴゅぴゅぴゅるる〜♪」
何ですかその卑猥な変身呪文は! ちょっと口ずさみたくなるじゃないですか!
謎にキラキラしたエフェクトを纏ってサナノウタ本来の姿に変身して、ん? ちょっと違くない?
元の姿といえばそうですが、地面を這いずるほどのスーパーロングだった髪の毛をゆるふわセミロングに変えていたり、髪色を白茶色にして、インナーカラーに元の髪色のピンク色にしていたり、紫色だった瞳の色を水色に変えていたり、スレンダーだった以前の体型からムチムチに、特に太ももがすごいです。この太ももだけで国家錬金術師になれるレベルですごいです。すごくすごい。
「どうかな? ママの娘としてママに寄せてみたんだけど可愛いかな?」
「だいしゅき!!」
「あはっ! やったー!」
この子、私の好みを完全に理解してますわ。
流石サナノウタ、人を愛し過ぎて全人類と同化するだけあって、人の好みの把握などお茶の子さいさいなのでしょうね。
この子の愛によって滅びるなら悪くないような気がしてきました。
すまんな異世界くん。この子が滅ぼしたいと言うのなら私は全肯定して一緒に滅ぼすと決めたよ。
「ママ以外の人に興味無いからママが考えてる事なんて私しないよ?」
「さらっと思考を読まないでください。あとこの世界を滅ぼさないでくれてありがとうございます」
危機は去った! 第二部完ッ!
「ママとは同化したいけどね!」
「やめてください。死んでしまいます」
危機は去っていなかった! 第三部開始ッ!
と、その時、ゾワッ! という悪寒が背中を刺して振り返ると、憤怒の形相で笑う和風美人さんが私の背後を取っていました。というか悪寒じゃなくて普通に腕で貫かれていますわ……。痛みに鈍感過ぎますわよ私……。
「ごぷっ!?」
「ママッ!?」
あぁ、段々と痛みを感じて来ました。痛いですね……。痛い。
「よくもオレを殺してくれたな? ええ? 分かってると思うが動くなよ? うっかりヤっちまうかもしれねぇからな?」
油断、慢心、どうして本体がいる事を忘れていたのか、危機感が足らな過ぎましたね。
「ゴホッ! ゲホッ! ごめんなさい、殺さないでください……死にたくないです……」
「ククク、良いなオマエ、命乞いなんて何千年振りに聞いたぜ。簡単には殺させねぇから安心しろよ? 生き地獄ってのをたっぷりと味合わせてやるからよ?」
「私が代わりになるからママは離して」
「イヤだね」
「……ごめんねママ。ママが死んだら私も一緒に逝くから安心してね」
「アハハハ、ママが死んだら? 簡単には殺さないって言ったろうが? そうだなぁ、まぁ、軽く5億年は苦しんでもらおうか」
「ちょっと痛いけど我慢してねママ」
「あ? ヤらせねぇっての」
暴風と暴風のぶつかり合いで凄まじい轟音が鳴り響きました。
私は胸を貫かれたままあっちへ行ったり、こっちへ行ったりと振り回されながら、痛みで気がおかしくなりそうです。
というか私を助けるために私を殺そうとするサナノウタと、私を苦しめようと私の命を守るマガツアケホシという構図は、痛みでまともな思考が出来ない今の惨い状態で無くても訳が分かりませんね。頭がどうにかなりそうです。
「ゴハッ!」
「ママッ!」
「いいねいいね、もっとやろうぜ!」
少年漫画のような激しい戦闘に私を巻き込まないでください。
私は女の子たちとイチャラブ出来ればそれで良いんです。
「だから」
私を無視して戦い続け、完全に油断しきっている噛ませ犬に私の右腕を噛ませ犬の口に突っ込みました。噛ませ犬だけに。
「もがっ!?」
私の右手を生贄に、ロトルルのブラッドポーションを作成、マガツアケホシ本体に強制完飲させました。
右手がドロドロに垂れていく感覚があったので瓶は作成されなかったみたいです。
ポーション作成スキルの理解度が一定値を超えたため、ポーション化スキルへと進化しました。
脳内にアナウンスが流れましたが、今は噛ませ犬の方に集中します。
「ごほっ! ごほっ! 何しやがる!?」
「止まりなさい」
「はい……」
「わおっ」
胸を貫かれている腕を外し、メガポーションを振り掛けて傷を癒し、噛ませ犬のスキルを調合スキルで取り除こうとしましたが操作出来なかったので追加命令。
「私に身を委ねなさい」
「はい……」
改めて調合スキルで全てのスキルを取り除こうと思いましたが、ちょっと勿体無いなと思い、私を貫いてくれた腕をポーション化してインベントリに収納、メガポーションを振り掛けて一応治しておきます。
マガツアケホシの持っていた数多のスキルを調合スキルで全て取り除けば、ただの美人へと早変わりです。身体能力だけでも危険度高いですけどね。
「ママ、そいつどうするの?」
「うーん、ペット?」
「……ぐっ、がっ、くそ、からだ、が……」
「うわっ! 精神力だけで抗ってるー! すごーい!」
暴れ出す前に追加命令しておきましょう。油断大敵!
「私の命令以外で他者に危害を加えるな」
「はい……」
「言葉遣いが悪いので汚い言葉を使うな、一人称はワタクシ、語尾にですわを付けて喋りなさい」
「了解ですわ……」
「ぷぷっ! ママって結構アレだよね! そういうママも私は好きかな?」
「じゃ、私の命令を守ってる間は自由にしていいよ」
「てめ、おま、きさ、貴方! ワタクシになんて事をしてくれや、しますの!? ですわ! きぃー!!」
空中で地団駄踏むとか器用な事をしますわね。ぷぷっ。
あれ、というかスキル全部消したはずなのに普通に空飛んでるのやばくない? 身体能力だけで飛べるようになれるって事?
「ところでママ、あの人たち助けてあげないとそろそろ逝っちゃうよ?」
「え?」
サナノウタが指をさした方向を見ると、地上に居たエルフとドワーフたちが倒れ伏していて手足がちょっと口では言えない状態になっていて、いわゆる地獄絵図が広がっていました。
「メガポーション!!」
慌てて目視転移で血だまりスケッチ状態の地上に降り、メガポーションを振り掛け回るロトルルなのでした。




