↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/10

第九章 偽りの容疑者

翌週、桐島の配信は、思わぬ方向へと転がっていく。

彼が独自に洗っていた黒沼家の会計記録から、ある不審な資金の流れが浮かび上がった。久保利彦の若い部下であり、鞠子が新たに頼りにしていた司法書士――高梨(たかなし)という男が、相続財産の一部を、密かに自分名義の口座へと移し替えていた形跡があったのだ。

さらに、高梨には、叔父が転落死した日の午後のアリバイがなかった。

「高梨さん、あなた、久保さんの横領を隠すために、口を封じたんじゃないですか」

桐島の追及に、警察もついに動いた。高梨は任意同行の末、そのまま拘束されるに至った。

村中が沸き立った。桐島のチャンネルには「事件解決」の文字が躍り、コメント欄は歓喜に包まれた。

《やっぱり金目当てだったか》

《一番怪しかったもんな》

《鞠子さん、もう安心ですね》

鞠子自身も、束の間の安堵を覚えた。だが、その夜届いた一件の匿名メッセージが、その安堵を粉々に打ち砕いた。

《高梨は、何もしていません。あなたを追い詰めているのは、まだ終わっていません》

桐島もまた、同じ違和感を拭えずにいた。高梨が横領の事実を隠すために久保を殺したのだとしても、あの生糸を使った密室のトリックを、彼が知り得たとは到底思えなかったからだ。高梨は、この村の生まれではない。蚕の飼育の知識も、養蚕の伝承も、何一つ持ち合わせていない。

「事件は、解決していない」

桐島は、誰にも見せない自分のノートに、そう書きつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。