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第七章 尾行者
その夜、鞠子は一人、実家の広い座敷で息を潜めていた。叔父の死からまだ二日と経っていないというのに、家の中は既に、弔問客の出入りと警察の聴取で疲弊しきっていた。
寝室に戻り、灯りを消そうとした瞬間、鞠子は違和感に気づいた。
窓の鍵は、閉めたはずだった。だが、カーテンの隙間から、夜風がわずかに忍び込んでいる。
――気のせいだ。
そう自分に言い聞かせ、布団に潜り込もうとした鞠子は、枕の上に置かれた「それ」を見て、声にならない悲鳴を上げた。
一匹の、白い蛾――正確には、紙で丹念に折られた、蛾を模した折り紙だった。羽の部分には、細筆でごく小さく、何かが書き込まれていた。
《次は、貴女です》
鞠子は飛び起き、家中の明かりをつけて回った。だが、どの扉にも、どの窓にも、こじ開けられた形跡はなかった。誰かが、鍵のかかった家の中に、まるで最初からそこにいたかのように、忍び込んでいたということになる。
廊下の奥、繭蔵へと続く渡り廊下の暗がりに、鞠子は一瞬、人影を見た気がした。追いかけようとしたが、渡り廊下の先には、ただ夜の闇が広がっているだけだった。
その夜、鞠子は一睡もできなかった。




