第六章二つ目の死
桐島がまだ確証を得られずにいたその翌日、久保と共に相続手続きに関わっていた鞠子の叔父・倫太郎が、山道で車ごと崖下に転落して死んだ。
知らせを受けた志乃伯母は、座敷に泣き崩れながらも、鞠子に向かって低く言い放った。
「あなたたちが土地の話ばかりしているから、罰が当たったのよ」
その言葉に、鞠子は何も言い返せなかった。
一報を聞いた桐島は、真っ先に現場へ向かった。彼は制止するパトカーの脇をすり抜け、崖の縁にしゃがみこみ、路面を丹念に見つめた。
「ブレーキ痕が、ない」
急ハンドルを切った形跡も、タイヤの擦れも、路面には残っていなかった。まるで、車が意志を持って、ゆっくりと崖へ滑り落ちていったかのような静かさだった。
そして、崖の縁の草むらに、またしても白い羽の欠片が数枚、風に舞うように落ちているのを、桐島は見つけた。彼はそれを拾い上げ、光にかざした。
「白粉蝶……蛾の鱗粉じゃない。これは――造花か、それに近い素材だ」
つまり、白粉蝶は自然発生した「呪い」の証ではなく、誰かが意図的にばら撒いた演出だった。村の伝承を知り尽くした者が、殺人を「土地の祟り」に見せかけるために。
村の駐在は「野生動物に驚いたのだろう」と処理しようとしたが、桐島のチャンネルはその夜のうちに「養蚕の村・連続怪死事件」と題した緊急生配信を打った。ただし、彼が視聴者に語ったのは、自分が本当に掴みかけている真実の半分にも満たなかった。
視聴者数はみるみる四桁から五桁へと跳ね上がり、コメント欄には、こんな言葉が並んだ。
《これもう黒沼家の呪いでしょ》
《相続で揉めてる令嬢が怪しすぎる》
《次死ぬの誰?》




