第四章 探偵参上
村に一台の古いバンが停まったのは、久保の初七日を待たずしてのことだった。
車体には手書き風のロゴで「鬼籍探偵・桐島チャンネル」とある。降りてきたのは、伸びっぱなしの髪を無造作にまとめ、着古したジャケットのポケットに手を突っ込んだ、桐島耕助――登録者数四十七万人を抱える事件系YouTuberだった。
「因習の村で、旧家の顧問弁護士が密室怪死――こんな美味しいネタ、逃す手はないですよね」
彼は自らを「鬼籍探偵」と名乗り、視聴者にはどこか胡散臭い山師のような扱いを受けていたが、その実態を知る者は少なかった。桐島は元々、県警の鑑識課で働いていた過去を持つ。人間の承認欲求とアルゴリズムの機嫌を読むことに長けているのは事実だが、それ以上に、彼の目は現場に落ちているどんな些細な矛盾も見逃さない、生来の観察者のそれだった。
「黒沼鞠子、二十六歳。東京での金融トラブルの噂あり。今回、祖母の遺産相続のために帰郷……これは、視聴者が飛びつく」
そう配信用に軽薄な台詞を吐きながらも、桐島の目は既に、蔵の外壁、扉の蝶番、地面に残るわずかな靴跡の乱れを、一つ一つ丹念に拾い上げていた。
彼のカメラは、鞠子が気づかぬうちに、繭蔵の遠景、鞠子の車のナンバー、そして村役場での彼女の横顔までも収めていた。だが同時に、彼のノートには、視聴者には見せない小さな文字で、こう書きつけられていた。
《閂――内側から? 要検証。窓の網戸、外側の破損なし。矛盾》




