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本城玲子は黙ってない ~最強の嫁・本城玲子の半生~  作者: 上板橋喜十郎


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第十一章 妬み嫁と勘違い夫

 永嶋秀樹と離婚し、再び本城玲子に戻って一年ほど経った頃。

近所に住む高校時代からの友人、新田美桜から連絡が来た。

「お茶会しない?お茶いっぱい貰ったんだけど飲み切れなくてさ」

 美桜と旦那の博之さんは、夫婦そろってホームパーティー好きだった。

友人を呼んで、みんなで飲んだり食べたりするのが好きらしい。

今回の参加者は八人。

私。

新田博之・美桜夫妻。

高校時代からの友人、坂本恵。

大学時代からの友人、荒川めい。

博之さんの大学時代の友人、大島涼太さん。

そして同じく博之さんの大学時代の友人、成田正晃さんと、その妻の莉乃さん。

 私はその頃、別件で使った製菓用チョコレートが大量に余っていた。

だから美桜に、

「お茶菓子、作って行っていい?」

と確認を取った。

「ぜひぜひ!」

と歓迎されたので、前日の夜にチョコレートムースケーキを作ることにした。

 当日。

初対面の人もいるので、まずは軽く自己紹介。

 その後、美桜がお茶を淹れてくれたタイミングで、それぞれ持参したお土産を開封する流れになった。

 私の持ってきた箱には店のロゴが無かった。

だから誰かが気付く。

「あれ? これ手作り?」

「そうなんですよ。家にチョコ余ってて」

そんな話をしながら切り分けた。

みんな、

「すごい」

「美味しい」

「手作りなんて尊敬する」

などと社交辞令込みで褒めてくれた。

ただ一人。

成田莉乃さんだけは、明らかに不機嫌そうだった。

口に合わなかったのかなと思っていたら、突然。

「こんな場所にわざわざ手作り持ってくるとか気持ち悪い」

場が凍った。

正晃さんが慌てて言う。

「お前、失礼だろ」

しかし莉乃は止まらない。

「だって、あんなの誰にでも作れるじゃない。それをわざわざ持ってきて、“私家庭的です”アピールとか、あざといわ」

私は正直ぽかんとしてしまった。

別にそんなつもりは無い。

ただ余ったチョコを消費したかっただけである。

他のみんなが慌てて別の話題を振り、何とか空気を戻そうとしてくれた。

でも、その後も莉乃はちょいちょい私に嫌味を言ってくる。

お皿を下げるのを手伝えば、

「何?マメな女アピール?」

お茶会から鍋会に移行して具材を入れていれば、

「うわ、おばさん臭い」

などなど。

正晃さんは必死に止めていた。

しかし最終的に、

「すみません。明日早いんで」

と言って、鍋を食べる前に莉乃を引っ張って帰っていった。

残ったメンバーは何事も無かったかのように談笑してくれた。

でも、どう考えても私のケーキが発端だった。

だから後で美桜に電話を掛けた。

「今日はなんかごめんね。成田夫妻にも、もし機会あったら博之さん経由で謝罪伝えてくれると助かる」

すると逆に美桜から謝られてしまった。

「いやいや、玲子は悪くないから!」

博之さんも、

「完全に向こうの問題だと思う」

と言ってくれた。

 それからしばらく経った頃。

もうあの件も忘れかけていた時だった。

携帯に知らない番号から電話が掛かってきた。

出てみると莉乃だった。

しかも凄い勢いで怒鳴っている。

「お前のせいで旦那が離婚すると言い出した!」

「お前があんな物作ってくるからだ!」

「謝罪しろ!」

「旦那を説得しろ!」

大体まとめると、そんな内容だった。

私は意味が分からず、一旦携帯の電源を切った。

そして別の携帯から美桜へ相談。

美桜も驚き、博之さんに確認を取ってくれた。

その結果、色々事情が分かる。

まず成田莉乃。

とんでもない料理下手らしい。

しかも正晃さんは、その件で昔からかなり悩んでいた。

ただ、好きで結婚したからと我慢していた。

しかし今回。

料理をまともに作れる人へ嫉妬し、暴言を吐き続ける妻を見て、一気に冷めたらしい。

「疲れた。もう離婚しよう」

そう正晃さんから切り出した。

すると莉乃が激怒。

謝罪したいと偽って、博之さんから私の電話番号を聞き出したとの事。

ちなみに電話番号流出については、博之さんから平謝りされた。

本当に申し訳なさそうだったので、それ以上責める気にはなれなかった。

 状況確認が終わり、携帯の電源を入れ直す。

すると大量の着信履歴。

その中に別の知らない番号が混ざっていた。

掛け直す。

出たのは正晃さんだった。

開口一番、凄い勢いで謝罪された。

「本当に申し訳ありませんでした」

「いやいや、こちらも変な空気にしちゃって……」

最初は普通の謝罪だった。

しかし段々と話が変わっていく。

現在の状況。

莉乃への愚痴。

結婚生活への不満。

「莉乃は凄く好みのタイプなんで僕が惚れ込んで猛アタックして結婚したんです」

「でも料理が壊滅的で……」

「レシピ通り作ってくれないんです」

「食べないと怒鳴るし、家事もしないし……」

延々と愚痴が続く。

そして突然。

「僕は家庭的な女性と生涯を共にしたいんです」

一呼吸。

「玲子さん、結婚してください」

私は本当にぽかんとした。

(外見残念で悪かったな)

心の中でそう突っ込みつつ、

「いやいやいや、私全然家庭的じゃありませんよ?」

と否定する。

「料理は好きですけど、普段の食生活かなり適当ですし」

「洗濯機なんて四日に一回くらいしか回しませんよ」

「掃除も週二回掃除機かければいい方ですし」

しかし正晃さん。

どこかネジが外れてしまったのか、全然聞いていない。

途中から相手するのが面倒になった。

「すみません。これから出かけるので」

そう言って通話終了。

再び電源を切った。

後で確認したら、成田夫妻からの着信と留守電で凄い事になっていた。

これはもう駄目だと思い、その携帯は解約した。

二台持ちしていた古い方だったし、まあいいかと思った。

 その後、美桜たちから追加情報。

成田夫妻は、離婚するしないで泥沼状態になっていたらしい。

さらに、私のもう一台の番号を教えろと、莉乃と正晃さんの両方から博之さんへ粘着電話。

ただ、正晃さんの方は大島さんや博之さんたちに説教され、正気に戻ったようだった。

後日、博之さん経由で謝罪も来た。

「とんでもない事を言ってしまって申し訳ない」

との事。

私は、

「もう気にしてませんから」

とだけ伝えてもらった。

 しかし莉乃の方は終わらなかった。

どうやって調べたのか、ある日突然、私の家へ突撃。

ドアをガンガン叩きながら大騒ぎ。

「出てこい!」

「人の家庭壊しやがって!」

近所迷惑なので、私は即通報。

しかし警察が来る前に、莉乃は窓ガラスを割って侵入しようとしてきた。

流石に恐怖を覚えた。

幸い、侵入寸前で警察到着。

そのまま連行されていった。

 後日。

正晃さんが謝罪に来た。

ドアと窓の修繕費込みで、慰謝料百万円持参である。

「どうか示談にして頂けませんか」

私は接近禁止の念書を書かせる事を条件に了承した。

こうして、また一つ厄介事が終わった。

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