第六十六話 アゼルから、プロポーズがありました。
オスティウムがオープンして一年三ヶ月目。
その日は、定休日の月曜日だった。
珍しく、アゼルが朝から「どこかに行こう」と言った。
「どこか、って?」
「……街の外に」
「え? アゼルが外に行きたいって言うのは珍しい」
「たまにはいい」
「どこに行くの?」
「……ついてきてくれればわかる」
アゼルに連れられて、街の外に出た。
少し歩いたところに、小高い丘があった。
丘の上からは、街が全部見えた。
オスティウム。
リリウム。
お城。
市場。
ギルド。
「……きれいだね」
「ああ」
「こんな景色、初めて見た」
「マミが来た最初の日、このあたりに転がってたと聞いた」
「え、そうなの?」
「ギルドの人から聞いた」
「……全然気づかなかった」
アゼルが静かに言った。
「最初に声をかけた時、猫耳と尻尾が生えてる人間が来たと思った」
「そりゃそうだよ」
「でも、なんか放っとけなかった」
「うん、言ってたね。最初の日に」
「あれは本当のことだ」
「知ってる」
アゼルが、少し間を置いてから、ゆっくりとあたしの前に立った。
「マミ」
「うん」
「一つ、聞いていいか」
「うん」
「……この世界で、一緒にいてくれるか」
「……ずっと一緒にいるって、言ったじゃない」
「もっとちゃんとした形で」
あたしは少し、息をのんだ。
アゼルが、あたしの手を取った。
「……俺と、ずっと一緒にいてくれるか」
あたしは少し、目が熱くなった。
「……アゼル」
「気の利いたことが言えない。花束も指輪も、持ってきていない」
「うん」
「でも、気持ちは本物だ」
あたしは少し笑った。
「……アゼルらしい」
「そうかもしれない」
「うん」
「返事は」
あたしはアゼルの手を、しっかり握り返した。
「もちろん、一緒にいる」
「……そうか」
「ずっと」
「ずっと」
丘の上から、街が見えた。
オスティウムが見えた。
あたしたちが一緒に作ったお店が。
「アゼル」
「うん」
「この世界に来て、よかった」
「……俺も、マミが来てくれてよかった」
風が吹いた。
空は青かった。
今日が、一番幸せだと思った。
でも、明日はもっと幸せになれる気がした。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
アゼルのプロポーズ、来ました!
「花束も指輪も持ってきていない」……でもそれがアゼルらしくて、最高でしたね。
次回、マリー様たちへの報告が待っています!
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