第五十六話 他国の王族が、やってきました。
オスティウムがオープンして半年が経った頃。
ユージィン様が、少し緊張した顔で来た。
「マミ、大事な話がある」
「何ですか?」
「隣国の王太子が、この街を訪問することになった」
あたしは少し驚いた。
「王太子様が?」
「ああ。この街のメイド喫茶の評判を聞いて、視察に来たいと」
「それは、うちとリリウムのことですか?」
「そうだ。王太子は、自国にもメイド喫茶を作ることを検討しているらしい」
「……すごい」
「ただ、一つお願いがある」
「何ですか?」
「王太子の訪問の際に、オスティウムが代表として対応してほしい」
「あたしたちが?」
「リリウムも同席するが、メイド喫茶の発祥という意味では、オスティウムが最初だ」
「でも、あたしはただの猫耳メイドで」
「ただの猫耳メイドが、半年でこの街を変えた。それで十分だと思う」
あたしは少し考えてから、アゼルを見た。
アゼルが静かにうなずいた。
「……受ける」
「ありがとう。アゼルも来てくれるか」
「料理を出します」
「魔炎のバイソンステーキか?」
「はい」
「それで、きっと王太子も動くと思う」
当日、王太子様はシンプルな服装で来た。
護衛はいたが、派手にしていなかった。
「ようこそメイド喫茶オスティウムへ。ご主人様、おかえりなさいませ」
王太子様が、少し笑った。
「……おかえりなさいませ、か。初めて言われたが、悪くない」
「ありがとうございます」
「この言葉から始まるのか、このお店は」
「はい。ここは、誰でも帰ってこられる場所ですので」
王太子様が静かに笑った。
魔炎のバイソンステーキを食べた王太子様は、しばらく黙っていた。
そして言った。
「……このお店を、参考にさせてもらえるか」
「光栄です」
「ただ、マネをするつもりはない。この温かさは、あなたたちにしか出せない。ただ、考え方を学びたい」
「ぜひ」
「この猫耳のメイドが、一から作ったお店か」
「はい」
「すごいことだ」
「アゼルがいたから、できました」
「料理人か」
「はい。あたしのパートナーです」
王太子様が笑った。
「……いいお店だ」
その夜、四人でカウンターに座った。
あたしとアゼル、マリー様とユージィン様。
「マミ、王太子様に気に入ってもらえたわね」
「マリー様のリリウムも気に入ってもらえてましたよ」
「そうね。でも、あなたたちの方が印象が強かったわ」
「それは魔炎のバイソンステーキのおかげです」
「アゼルの料理のおかげね」
アゼルが静かに言った。
「マミの対応のおかげだ」
「両方だよ」
「両方だな」
「うん、両方」
今夜のオスティウムは、世界につながっていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
ついに他国の王太子様が来ました!
メイド喫茶が世界に広まっていく予感がしますね。
次回、女王様との最後の話が始まります。
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