第三十七話 魔物が、街に近づいてきました。
翌週から、ギルドが忙しくなった。
常連の冒険者たちが、討伐依頼で毎日出かけるようになった。
「最近、大変そうですね」
おじさんがオムライスを食べながら言った。
「ああ。魔物が増えてる。しかも、いつもと動きが違う」
「どう違うんですか?」
「群れで動く。そして、街の方向に向かってくる」
あたしは少し顔を引き締めた。
「危ないですか?」
「今はギルドが食い止めてる。でも、長くは続かないかもしれない」
「……わかりました」
おじさんが食べ終わって、立ち上がった。
「マミちゃん、今日も美味しかったよ」
「ありがとうございます。気をつけてください」
「もちろん。マミちゃんのオムライスを食べるために、ちゃんと帰ってくるよ」
あたしは少し笑った。
「待ってます」
「頼む」
おじさんが出ていった。
その夜、アゼルがユージィン様から連絡を受けた。
「……黒のコアが、動いた可能性がある」
「どういうこと?」
「女王様の城から、黒のコアが持ち出された形跡があるらしい」
「誰が?」
「……わからない。ただ、誰かが使おうとしている」
あたしは少し考えた。
「四銃士の中に、まだ納得していない人がいると言ってたね」
アゼルが少し、目を細めた。
「……そうかもしれない」
「ジャン様たちは知ってる?」
「ユージィン様が連絡してると思う」
「わかった。今夜、マリー様にも話そう」
マリー様を呼んで、四人で話し合った。
「黒のコアが動いたって、本当?」
「可能性がある、という話だ」
「誰が持ち出したの」
「まだわからない。でも、魔物の動きと連動しているなら、使い始めているかもしれない」
マリー様が静かに言った。
「……最悪の場合、どうなる?」
アゼルが少し間を置いてから、答えた。
「……街ごと、消える」
沈黙が続いた。
「そんな力があるの?」
「ある。かつて英雄が命がけで封じたほどの力だ」
マリー様が立ち上がった。
「ユージィに伝える。すぐ動かないといけない」
「待ってくれ」
アゼルが静かに言った。
「……俺も、動く」
「アゼル?」
「黒のコアを封じる方法を、知っている」
あたしは少し驚いた。
「知ってるの?」
「昔、四銃士の時に学んだ。ただ」
「ただ?」
「……命がけになる」
お店の中が、静かになった。
あたしはアゼルを見た。
「一人でやろうとしてるの?」
「……」
「アゼル」
「マミ」
「一人でやろうとしてるの?」
アゼルが少し、目を細めた。
「……最初は、そう考えていた」
「ダメだよ」
「マミ」
「ダメ。一人じゃダメ」
「危険だ」
「だから一人でやったらダメなの」
アゼルはしばらくあたしを見ていた。
マリー様が静かに言った。
「……マミの言う通りよ、アゼル」
「マリー」
「一人で抱えるのは、もうやめなさい。昔からそれがあなたの悪いところよ」
アゼルが少し、苦い顔をした。
「……わかった」
「みんなで考える」
「ああ」
今夜のオスティウムは、戦いの始まりの夜だった。
でも、一人じゃなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
事態が動き始めました。黒のコアが動いた可能性が。
「一人でやろうとしてるの?」というマミの言葉、大事なところですね。
次回、いよいよ核心に迫ります。
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