第三十五話 オスティウムが、この街の一部になりました。
オスティウムがオープンして、三ヶ月が経った。
朝の市場で、あたしは毎日声をかけてもらえるようになった。
「マミちゃん、今日も元気か」
「オスティウムのオムライス、うちの子が大好きで」
「今度の休みに孫を連れていくよ」
この街の人たちにとって、オスティウムは当たり前の場所になっていた。
常連のおじさんは週三回来た。
商人の娘さんたちは毎週パフェを食べに来た。
アンリ様は木曜日に必ず来た。
ジャン様は月に一度か二度来た。
マリー様は週に何度も来た。ライバルのはずなのに。
ユージィン様は仕事の後に来た。
他国の旅人が毎週誰か来た。
そしてみんなが、このお店を好きだと言ってくれた。
その日の閉店後。
あたしとアゼルは、いつものようにカウンターに並んで座っていた。
「アゼル」
「うん」
「三ヶ月経ったね」
「……そうだな」
「最初を覚えてる? 初日、ノーゲスだったこと」
「覚えてる」
「あの日から、こんなになるとは思わなかった」
「俺も」
「でも、アゼルの料理があったから」
「マミがいたから」
「両方だね」
「両方だ」
二人でミルクティーを飲んだ。
「アゼル」
「うん」
「これからも続けようね」
「……当たり前だ」
「ずっと」
「ずっと」
窓の外では、リリウムの明かりも灯っていた。
向かいのライバルも、今夜は賑やかだった。
この街に、メイド喫茶という文化が根付いた三ヶ月だった。
「マミ」
「うん」
「一つ、言っていいか」
「うん」
アゼルが静かに続けた。
「……異世界に来てくれて、ありがとう」
あたしは少し驚いた。
そして、少し目が熱くなった。
「……アゼル」
「マミが来なければ、このお店はなかった。俺は今でも、つぶれかけの酒場で一人だった」
「アゼルが助けてくれたから、あたしは今ここにいるんだよ」
「両方だな」
「うん、両方」
二人で、少しの間黙っていた。
「アゼル」
「うん」
「あたしも、この世界に来てよかった」
「……そうか」
「アゼルがいるから」
アゼルが、あたしを見た。
静かな目だった。
でも、温かかった。
「……俺も、マミがいるから」
今夜のオスティウムは、今まで一番温かかった気がした。
これが、始まりではなくて、ここからがずっと続く日常なのだと思った。
でも、その日常が、あたしには何より大切だった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
三ヶ月が経ちました。この街の一部になったオスティウム。
「異世界に来てくれて、ありがとう」……アゼルの言葉、じわじわきませんでしたか?
次回から第4章です。穏やかな日常に、新たな嵐が近づいてきます。
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