第三十話 女王様が去って、街が変わりました。
女王様が街を去った翌日。
市場に行くと、いつも以上に声をかけられた。
「マミちゃん、女王様がオスティウムに来たって本当か」
「すごいじゃないか」
「しかも悪くないって言ったんだろ」
噂は一晩で街中に広まっていた。
「……広まるのが早いですね」
果物屋のおじさんが笑った。
「この街は狭いからな。でも、みんな喜んでるよ」
「喜んでる、ですか?」
「女王様が認めたお店ってことになった。もうこれ以上、誰もオスティウムに手出しできない」
あたしは少し考えた。
確かに、そういうことだった。
女王様が「悪くない」と言った。
それは、このお店を認めた、ということだ。
「……よかった」
「よかったよかった。マミちゃんのお店がなくなったら、うちも困るからな」
おじさんが笑いながら果物を袋に入れてくれた。
「いつもありがとうございます」
「こちらこそ。これからもよろしくな」
あたしはお店に戻りながら、空を見上げた。
青かった。
今日も、いい日だ。
※ ※ ※ ※ ※
お店に戻ると、ユージィン様が来ていた。
珍しく、朝から来ていた。
「ユージィン様、朝からどうされましたか」
「昨日のことで、報告に来た」
「何かありましたか?」
「母上が、このお店への干渉をしないと言った」
あたしは少し驚いた。
「……本当ですか?」
「ああ。母上なりの言い方だったが、そういうことだ」
「どうして」
「料理を食べたからだと思う」
アゼルが厨房から出てきた。
「……女王様が、認めてくださったということですか」
「そうなる。ただ、一つ条件がある」
「条件?」
ユージィン様が静かに続けた。
「マリーのリリウムに負けないこと」
あたしは少し笑った。
「それは女王様じゃなくてマリー様が言いそうなことですね」
「母上とマリーは、似ている部分がある」
「そうですね」
ユージィン様がミルクティーを一口飲んだ。
「マミ」
「はい」
「昨日、よくやってくれた」
「アゼルの料理のおかげです」
「あなたの対応も、大きかった。母上は、正直に話す人間を嫌いじゃない」
「そうですか」
「追放されたことをそのまま言えるのは、なかなかできないことだ」
あたしは少し考えてから、答えた。
「事実を隠すより、話した方が早いと思ったので」
ユージィン様が笑った。
「……マリーが好きになる理由がわかる気がする」
「ありがとうございます」
ユージィン様が立ち上がった。
「これからも、よろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ユージィン様が出ていった。
アゼルが静かに言った。
「……マミ」
「うん」
「ありがとう」
「何が?」
「昨日、女王様と話してくれたこと」
「あたしは普通に話しただけだよ」
「それが、良かったんだと思う」
あたしはアゼルの横顔を見た。
「アゼルの料理があったから、女王様が認めてくれたんだよ」
「両方だな」
「うん、両方」
今日のオスティウムは、少し新しくなっていた。
女王様という最大の壁が、なくなった日だった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
女王様の干渉がなくなりました!
「マリーのリリウムに負けないこと」という条件、母娘ともに似てますね(笑)
次回、安定した日常の中で新たな展開が始まります。
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