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第二十八話 女王様が、街にやってきました。

来週と言っていたのに、女王様は三日後に来た。


朝、マリー様が青い顔で駆け込んできた。


「マミ! 母上が今日来る!」


「今日ですか?」


「急に予定が早まったって連絡が来た。もうお城を出てるって」


アゼルが厨房から出てきた。


「……いつ頃この街に着く?」


「昼前には」


「わかった」


アゼルは静かにエプロンを外した。


「アゼル?」


「仕込みを全部終わらせる。何時でも開けられるように」


マリー様がアゼルを見た。


「……焦らないの?」


「焦っても料理はうまくならない」


マリー様が少し、力の抜けたような顔をした。


「……そうね」


「マリーお嬢様も座ってください。ミルクティーを」


あたしがカップを出すと、マリー様が素直に座った。


「ユージィには連絡した。来てくれると思う」


「ありがとうございます」


「ジャン様にも?」


「……連絡してみる」


三人でしばらく黙っていた。


お店の中は静かだった。


仕込みの音だけが続いていた。


「マミ」


マリー様が静かに言った。


「はい」


「どんな人が来ても、いつも通りにして」


「はい」


「母上は、人が動揺するのを見たがる。それで、相手の弱みを探す」


「わかりました」


「だから」


「いつも通り、笑顔で迎えます」


マリー様がふっと笑った。


「……頼もしいわね、マミは」


※ ※ ※ ※ ※


昼前。


お城から行列が出た、という話が街に広まった。


街の人たちが道の端に寄って、行列を見ていた。


でも、オスティウムはいつも通り開けていた。


十五時、開店。


常連のおじさんが一番に来た。


「マミちゃん、女王様が来てるぞ」


「はい、聞いています」


「大丈夫か?」


「大丈夫です」


おじさんが少し心配そうな顔をしたけど、オムライスを注文してくれた。


その後も、いつものお客様たちが来てくれた。


魔炎のバイソンステーキの予約のお客様も来てくれた。


オスティウムは、いつも通り賑やかだった。


十八時頃。


扉が開いた。


背の高い女性が入ってきた。


衣装は豪華だった。


護衛が四人、後ろについていた。


でも、あたしはいつも通り笑顔で言った。


「ようこそメイド喫茶オスティウムへ。お嬢様、おかえりなさいませ」


女性が少し、目を細めた。


深い色の瞳だった。


マリー様に、少し似ていた。


「……おかえりなさいませ、か」


「はい。何度来ていただいても、毎回新鮮にお迎えします」


「初めて来たが」


「それでも、おかえりなさいませとお迎えします。ここはみなさんが帰ってこられる場所ですので」


女王様が、お店の中を静かに見回した。


常連のお客様たち。


アゼルが厨房で料理をする姿。


テーブルに飾った野の花。


そして、隅の席に座っているマリー様。


マリー様が静かに、女王様を見ていた。


「……お席にご案内します」


「頼もう」

最後まで読んでいただきありがとうございます!

ついに女王様が来ました!

「おかえりなさいませ」で迎えるマミ、さすがですね。

次回、女王様との直接対話が始まります。

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