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第二十七話 街全体が、オスティウムを好きになってくれました。

朝の市場に行くと、いつも以上に声をかけられた。


「マミちゃん、今日も元気か」

「オスティウム、最近賑やかだな」

「うちの息子が毎週行ってるよ」


果物屋のおじさん、パン屋のおばさん、薬草屋の若い男性。


みんなが笑顔で話しかけてくれる。


「ありがとうございます。またぜひいらしてください」


あたしは一軒一軒に声をかけながら、仕入れを済ませた。


荷物を抱えてお店に戻ると、アゼルが仕込みをしていた。


「今日も声をかけてもらえた」


「……そうか」


「市場の人たち、みんなオスティウムのことを知ってる」


「一ヶ月以上経ったからな」


「それだけじゃないと思う」


アゼルが振り返った。


「どういう意味だ」


「なんか、街の一部になってきた感じがする。お店が」


アゼルはしばらく考えてから、静かに言った。


「……そうかもしれない」


あたしは荷物を下ろして、エプロンを結び直した。


「嬉しいね」


「ああ」


「アゼルの料理があるから」


「マミの接客があるから」


「両方だね」


「両方だ」


二人で顔を見合わせた。


いつものやりとりだった。


でも、毎回嬉しかった。


※ ※ ※ ※ ※


その日の営業は、今まで一番賑やかだった。


開店と同時にテーブルが埋まった。


魔炎のバイソンステーキの予約は、三日先まで埋まっていた。


常連のお客様たちが、新しいお客様を案内していた。


「ここがオスティウムだ。マミちゃんに任せておけ」

「アゼルの料理、絶対気に入るぞ」

「魔炎のステーキは予約が必要だけど、オムライスも最高だ」


あたしはそれを聞きながら、胸の中でじわっと温かくなった。


お客様が、お客様を連れてきてくれる。


それがオスティウムの形だ。


夕方、マリー様が来た。


リリウムの制服ではなく、落ち着いたドレスだった。


「今日は休みですか?」


「少しだけ」


マリー様がお店の中を見回した。


「……賑やかね」


「マリーお嬢様のリリウムのおかげでもあります」


「どういう意味?」


「リリウムがオープンしてから、この街にメイド喫茶を見に来る人が増えました。その人たちがオスティウムにも来てくれる」


マリー様が少し考えてから、言った。


「……ライバルなのに、感謝するの?」


「競い合うことで、お互いが良くなると思うので」


マリー様がふっと笑った。


「……マミらしいわね」


「ありがとうございます」


「褒めてないわよ」


「存じております」


マリー様がミルクティーを一口飲んだ。


「ねえ、マミ」


「はい」


「母上がね、来週この街に来る」


あたしは少し、手が止まった。


「……女王様が?」


「正式な視察として。でも、本当の目的は別にある」


「このお店のことですか」


「たぶん。でも、まだわからない」


マリー様が静かに続けた。


「来週、何かあるかもしれない。心の準備をしておいて」


「わかりました」


「怖い?」


あたしは少し考えてから、答えた。


「怖いです。でも」


「でも?」


「このお店は、今日みたいに賑やかだから」


マリー様がまた、ふっと笑った。


「……そうね。賑やかだわ」


閉店後、アゼルに話した。


「来週、女王様が来る」


「……そうか」


「マリー様が教えてくれた」


「マリーが、か」


「うん」


アゼルは少し間を置いてから、言った。


「……準備しよう」


「何を?」


「一番いい料理を出せるように」


あたしは少し驚いた。


「それが準備?」


「ああ。どんな人が来ても、いつも通りの料理を出す。それがオスティウムの答えだ」


あたしは思わず笑った。


「……アゼルらしい」


「おかしいか」


「おかしくない。一番いい答えだと思う」


アゼルが少し笑った。


今夜のオスティウムは、賑やかで、温かくて、強かった。


来週、何が来ても。


このお店は、このお店のままでいる。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

街全体がオスティウムを好きになってくれましたね。

そして来週、女王様がやってきます……!

次回、いよいよ第4章への入り口です。

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