表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/70

第二話 変身スキル、もらっちゃいました。

「マミちゃん。マミちゃん。ボクだよ」


 夢の中に声が響いた。

目を開けると、どこまでも白い空間が広がっていた。

床も天井も壁も見えない。ただ白い。

その真ん中に、ぽつんと黒い小さなかたまりがいた。


「……黒猫ちゃん?」


 さっきトラックの前から助けた、あの子だ。


「助けてくれてありがとう、マミちゃん」


 しゃべった。猫がしゃべった。

異世界に来た時点でもう何でもありだとは思っていたけど、改めてびっくりする。


「ど、どういたしまして……」

「お礼に、ボクのスキルをプレゼントするね。『変身スキル』だよ」

「え、あ、ありがとう——ちょっと待って、どんなスキル——」

「それじゃあね!」

「ちょ、説明! 説明してって!」




※ ※ ※ ※ ※




 目が覚めると、見慣れない天井だった。

あ、そうだ。アゼルのお店の二階に泊めてもらったんだった。

窓から朝日が差し込んでいる。鳥の声がする。異世界の朝だ。


 夢の内容を思い出して、ベッドの上でしばらく考えた。

変身スキル。


 信じるも信じないも、試してみるしかない。

目を閉じて、イメージする。


 あたしが通い詰めていたメイド喫茶の、推しの女の子。切れ長の目に整った顔立ち。茶色ベースのワンピースに白いエプロン。ウエストの締まったシルエット。カチューシャ。


「……あれ」


 体中が青い光に包まれた、と思ったら。

姿見に映っていたのは——推しの女の子だった。

いや、正確には違う。顔はあたし自身だ。でも、お化粧がばっちり決まって、髪型も完璧で、制服まで完全再現されている。


「……かわいい」


 思わず声が出た。自分に向かって言うのはちょっと恥ずかしいけど、かわいいものはかわいい。

一時間ほどあれこれ試してみた結果、このスキルの仕様がだいたいわかった。


 どんな衣装にも変身できる。ヘアメイクも込みで一瞬で完成する。ただし、能力が上がるとか魔法が使えるようになるとか、そういうことは一切ない。

純粋に「衣装とメイクが変わるだけ」のスキルだ。

戦闘には完全に役に立たない。


「……でも、メイド喫茶やるには最高じゃない」


 毎朝メイク迷って時間切れになってたあたしに、これ以上のスキルがあるだろうか。いや、ない。黒猫ちゃん、わかってる。


「おーい、マミちゃん。朝ごはんできたよ」


 下からアゼルの声がした。




※ ※ ※ ※ ※




 階段を降りると、カウンターの中でアゼルがフライパンを振っていた。

あたしはメイド姿のまま降りた。せっかくだから見せてしまおう。


「アゼルさん、おはよう——」

「……っ」


 アゼルが固まった。

フライパンを持ったまま、こちらをまじまじと見ている。


「え、どうしたの」

「い、いや……昨日とぜんぜん違う」

「女の子はお化粧で変わるんですよ」

「そっか……化粧ってすごいな」


 アゼルは納得したのかしていないのか、こちらをちらちら見ながら首をかしげている。でも目が泳いでいる。あたしのこと、かわいいと思ってくれてるのかな。

それはちょっと、悪い気がしない。


「アゼル。今日からメイド喫茶の準備、始めましょう」

「……うん」


 アゼルはまだちょっとこちらを見ていたけど、すぐに気を取り直してお皿をカウンターに並べた。

朝ごはんはバゲットとスープ。シンプルだけど、これがまた美味しい。


「アゼル、料理ほんとうに上手だよね」

「まあ、それだけが取り柄だから」

「それだけって言わないで。すごいことだよ」


 アゼルはちょっと照れたように、スープを混ぜるふりをした。

さて。

メイド喫茶をやるなら、まず絶対に必要なものがある。


「ねえアゼル。オムライス、作ったことある?」

「オムライス?」

「メイド喫茶の定番料理。ケチャップで味付けしたチキンライスを卵で包むの。最後にケチャップでハートを描く」

「……何から何までわからない単語だ」

「大丈夫。全部教えるから」


 アゼルは困ったような顔をしたけど、嫌そうではなかった。

こうして、メイド喫茶オスティウムの、最初の朝が始まった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

変身スキルの正体、わかっていただけましたか?

戦闘には使えないけど、メイド喫茶には最高のスキルです(笑)

次回はいよいよメイド喫茶の看板料理・オムライス作りへ!

アゼルの料理センスが炸裂します。

面白いと思っていただけたら、ぜひ**★評価とブックマーク**をよろしくお願いします!

更新の大きな励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ