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カベタス・サマナー  作者: 休眠熊
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第21話

「炎生導術・火炎竜巻!」

「ウワアアアア⁉︎」


凍り付いた山の中に大きな炎の渦が巻き、それに巻き込まれた男が空高く巻き上げられた。


「炎生導術・埋火噴火!」

「ヒイイイイイイ⁉︎」


地面から噴火の如く噴き出した炎が、別の男を凍った地盤ごと吹き飛ばす。


「炎生導術・業炎魔焼脚!焦熱錐転蹴!」

「ギヤアアアアア⁉︎」


脚に青い炎を纏った女性が、目にも止まらぬ速さで回転しながら男に突撃、厚い氷の鎧を物ともせずに蹴り破る。男の腹部を串刺しする様にその右脚が深々と入り込むと同時に、燃え盛る左脚の回し蹴りが男の氷の兜を蹴り砕く。その勢いで吹き飛んだ男は、数十メートル離れた別の男に勢い良く衝突して共に倒れる。


「スゥゥトラァァイック!ねえ、鳥の私に串焼きにされて今どんな気分?」

「シ、シアさん!ちょっとやり過ぎじゃ有りませんか⁉︎」


少し離れた場所に有る、ディアの土導術で作った塹壕から手鏡でその様子を見ていたアキトは、アイビシアの余りの蹂躙っぷりに、公安捜査官達を殺していないか心配していた。すると、側で一緒に隠れていたクロウリアがアキトを宥める。


「お兄さん。撃たれるかもしれないから、余り手を出さない方が良いよ?」

「ですが…。」

「大丈夫。あの人達の肺や心臓はちゃんと動いているし、お母さんも手加減してるから。」

「手加減…。あれで…?」


アキトは、外で業火を撒き散らし、凍った大地を焦熱地獄に変えて行く紅い羽根の女性を見る。炎で氷導術を溶かし、飛行術で銃弾を華麗に避けながら、次々と集まって来る公安捜査官達を蹴散らして行くその様は、炎の灯を受けて真っ赤に染まり、さながら紅い悪魔の様であった。さっきまで辺りは暗く寒かった筈なのに、今では真夏の様に暑く、真昼の様に明るい。


「お父さんもそうなんだけど、お母さんもかなり器用なのよ。音を聴く限り、あの人達だって激痛で碌に動けないだけで、結構ピンピンしてるわよ?気絶もしてないし。」

「あれで気絶してないとか…。それはそれでえげつない…。」

「…それには反論出来ないわね…。」


痛みに苦しむ男達の呻き声が、地獄に響き渡る楽曲を奏でる。その阿鼻叫喚の光景を鏡越しに見つつ、クロウリアに周囲の警戒を継続して貰いながら、アキトはカスミと情報を交換する。


「カスミ先生。ヤクモさん達の状況は如何ですか?」

『只今、お兄様に無事にサカキのお二人を回収して頂きましたわ。これより、予定通り其方に合流致します。準備をお願い致しますわね?』

「わかりました。」


ヤクモの事を信頼こそしていたが、心配していない訳では無かったアキトは、サカキの二人を一先ず首尾良く保護出来た事に安堵する。そして、次に合流する為の打ち合わせに移る。


「それにしても次から次へと…。これではキリが有りませんね。」

『ええ、仕方ありませんわ。かなりの人員を動員していますでしょうし。それだけ彼等も必死と言う事ですのよ。』

「こんな事に必死…はあ…。しかし、これは少しばかり、合流するには厄介ですね。合流した後も、契約を行う暇を与えてくれるかどうか…。」

『お兄様とシアさんがいらっしゃれば、彼等程度に遅れを取る事はまずあり得ませんわ。アキトさんは心配なさらず、御自身の身を守る事に専念なさい。召喚術での彼等の脱出は、この作戦の肝ですわよ?だからこそ、彼等も必死にあなたを狙って攻撃を仕掛けて来ているのですからね。』

「ええ…わかっています。」


アキトは息を呑む。自分の役目は、命を狙われている者達を無事に逃す事にある。自分の命だけならいざ知らず、他者の命まで背負う事にアキトは改めて緊張する。更に言えば、救出すべき人達が素直に契約に応じてくれるかについても不安であった。


『アキトさん。肩に力が入り過ぎですわよ?もっと気を楽になさい。』

「あ、ああ…はい。」

『もしも上手く行かなくとも、その時はその時で、お兄様とシアさんで改めて包囲網を強行突破するのみですわ。お兄様達なら、きっと大丈夫でしょう。元々、万全を期す為のこの作戦なのです。次善の策も有りますし、安心をなさい。あなたの失敗がそのまま、この作戦全体の失敗とはなりませんのよ。』

「はい。有難うございます。」


カスミは、緊張するアキトを励ます。召喚術による避難は、最も危険が少ないだろうとの判断による所が大きい。保護対象が多過ぎる場合での山からの脱出は、流石にヤクモやアイビシアでも全てをフォローし切れない可能性があった為だ。


故に、全員の生存確率を出来得る限り引き上げる為の作戦として、対象を逃す事に定評が有る召喚術を利用する作戦を一番に持って来たのである。足手纏いになるで有ろう者達を先に安全圏に逃した上で、アキト自身をこの場から逃す方針なので、例えアキトが上手く契約出来なかったとしても、それがそのまま彼等の死に繋がる訳では無い。


『まあ、一番確実で簡単であろうこの方法を拒む様な“やんちゃ”な方には、ワタクシやお兄様が直々に“お願い”致しますので、アキトさんは余りその辺りの心配をなさる必要はありませんわ。』

「お願いですか…。程々にお願いしますね…?」

『ふふ…さて、如何しましょうか?あんまりお痛が過ぎる子は、少しばかり地獄巡りでも…。』

「あ、あはは…。」

『それはそうと、シアさんの鳴かせ方も趣きがあって大変宜しいですわ…。お兄様とはまた違った味わいがあって…。』

「と、とにかく、此方はなるべく彼等の数を減らして、合流の際に邪魔が入らない様に頑張りますので、また情報が入ったらお願いします!」


カスミの話題がおかしな方向に傾き出した為、アキトは急ぎカスミの言葉を切る。カスミは少しばかり不満そうな声ではあったが、流石に不謹慎過ぎたと感じたのか、大人しく了承した。


『それでしたら今其方に、新たに向こうの増援部隊が近付いて居ますわね。』

「また来ましたか…。」

『シアさんはもう気付いていらっしゃいますし、彼女単独で迎撃し切れない数では有りませんが、折角の機会ですし、アキトさんもお手伝いなさって見ては?』

「ええっと…まあ、邪魔しない程度にやれるだけやってみます。」

『もっとチャレンジ精神をお見せなさい?それではこの先やっていけませんわよ。それでは、どうぞお気を付けて。』


その時、遠くで戦っていたアイビシアが、此方に向かって何かを叫んだ。それは、アキトには聞こえなかったが、クロウリアには確かに伝わった。


「お兄さん!上!」


クロウリアが叫びつつ、アキトを伏せさせる。アキトが転がりながら上を見ると、見えにくいが遠い上空から氷の槍の雨が降り注いで来るのが確認出来た。敵の増援の遠距離攻撃である。塹壕の位置を把握された為に、其処を狙って曲射弾道を描く様に氷導術による氷の槍を放って来たのだ。


「ディア!」

「キュピィ!」


アキトは地面の中に控えさせていたディアに指示し、厚く硬い土壁を斜めに形成させてその攻撃を受ける。氷の槍の雨は土壁の表面を凍らせたが、貫ける程の威力は持っていなかった。土の壁で上からの攻撃を凌ぎ切ると、今度は四方八方からアキト達に向けて銃弾が放たれる音がけたたましく響いて来た為、塹壕の中で頭を抱えて蹲る。


「包囲されましたか…。しかもこの数はかなり…。」

「ええ、数十人は居るわね…。まさか、ここまでして来るなんてね。幾らお母さんでも、一度にこの数を相手にするのは流石に厳しいかな…。」

「大丈夫でしょうか…?」

「やられる事は無いと思う。幾ら実戦から離れて久しいと言っても、お母さんの実力自体は本物よ。包囲される前に飛び上がって、上空の高い所を素早く複雑に動いて銃弾を上手い事避け続けてるわ。だけど…敵の何人かが、隙を見てこっちに向かって来てる…。まだ遠いけど、確実に距離を詰めて来ているわ…。」


クロウリアの声は強張る。敵の一番の狙いはアキトである。アイビシアは殺せずとも、彼女を牽制している内に、アキトを仕留める事は可能であるのだ。アイビシアの放った炎導術の影響で、相性の悪い氷導術は威力に制限こそ受けては居るが、それでも人を殺すには充分な威力を備えている。それに対して、此方は戦闘力の乏しい召喚導術使いと、導術に弱い地竜、子供の鳥型導族しか居ない。


(それでも、私が頑張らないと…!)


クロウリアの小さな身体は、緊張で震え出す。今まで訓練こそして来たが、実戦自体は経験が少なく、しかも両親の援護も余り頼りに出来ない状況は初めてであった。故に不安ばかりが頭を支配しそうになるが、その消極的な自分を叱咤する。大事な友達を、決して失いたく無かったからだ。


「リアちゃん。大丈夫ですか?」

「あ…お兄さん…。」


すると、アキトがクロウリアの手をしっかりと握って来た。いきなりの事でクロウリアは吃驚したが、同時に心地良い安心感を感じた。


「リアちゃん。一人で抱え込まないで下さい。僕も、微力ながら戦えますし、あなたの足を引っ張る気は有りませんから。」

「あ…と…。だけど…。」

「僕にも手伝わせて下さい。あなたに一方的に頼るなんて事はしたく有りません。僕達は友達です。友達同士なら、助け合って当たり前じゃ無いですか。」

「う…うん…。」


アキトの優しい声は、クロウリアの硬直した心と身体を解きほぐす。余計な力が抜け、気恥ずかしく思いながらも強くその手を握り返した。繋いだ手を通して、アキトの心臓の鼓動がクロウリアの身体に伝わる。その音は、思わず聴き惚れてしまう程に柔らかく、クロウリアの心を包み込む。不安はもう、感じなかった。


「それでですね。僕に少し考えがあって、それを手伝って貰おうかと思うんですが。」

「良いわよ、何?」

「ああ、ちょっと待って下さい。」


アキトはクロウリアと、地面から頭だけを出したディアの近くに寄ると、小声で何かを囁いた。その内容を確認した少女らは、元気良く返事をする。


「うん、大丈夫!」

「キュイキュイ!」

「ふふ、頼りにしてますよ。」


アキトは笑顔でそれに応えた。


「じゃあ、行きますよ!リアちゃん!ディア!」

「うん!」

「キュキュ!」


アキトの掛け声に、クロウリアとディアは力強く返し、早速作業を始めた。一方その頃上空では、そのアキト達の様子をニヤニヤしながら見つめる者が居た。


(ふふ、リアったら嬉しそうね。危険な状況は、男女の仲を発展させ易くするって言うからね!吊り橋効果よ吊り橋効果‼︎リア、折角のチャンスなんだから、頑張ってアピールしなさい!)


わざとらしくこの状況を作った犯人であるアイビシアは、アキト達へ攻撃を仕掛ける者達を程良く牽制しながら、親指を立ててウインクしていた。目の見えないクロウリアは、それに全く気付かなかった。








「ハア…ハア…。クソ…!」


アキト達の立て籠もる塹壕近くに、全身を氷で纏い、銃を構えながら近付く男がいた。公安捜査庁所属の公安捜査官の一人である。


(あんな奴が居たなんて…。聞いて無いぞ!)


男は、忌々しそうに暗い空を見上げる。其処には、幾筋もの業火を地上に向けて放つ、紅い羽根の生えた女が飛び回っていた。隊員達の得意な氷導術と相性の悪い炎導術を使用して来る上、遠い上空を縦横無尽に素早く動き回られ、狙撃が難しい。数に任せて撃ってはいるが、当たる気配が全くない。その癖、彼女から放たれる炎は確実に男達を追い詰め、一人、また一人と仲間が負傷して行く。


(だが、幸い向こうに此方を殺害する意図は見えない。まあ、俺達を殺したりすればただでは済まないから、仕方の無い事ではあるがな。其処に、付け入る隙は必ず有る筈だ…!)


アイビシアによって倒された者達は、皆怪我こそしているが命に別状は無い。アキト達が無闇に殺しを行えない為であった。それは、完全武装した捨身の男達を殺さずに押さえ込まねばならないと言う、かなり難しい事をアイビシアに強いていた。そして、数の優位に任せての突撃は功を奏し、アイビシアが倒し漏らした者達が、アキト達の潜む塹壕近くまで辿り着きつつあった。


(とにかく、早くあの召喚術使いのガキを如何にかしないければ…。『毒蜘蛛』駆除に向かった奴等は、皆残らず消息不明と聴いた。今、奴は此方に急いで向かっている筈だ。挟み撃ちされると厄介だが、俺達がガキを殺そうとすれば、必ずそれを阻止しようと動く筈…。隙は其処に必ず出来る!)


ミゾレからの指示は、召喚術による逃走をさせない為にアキトを殺害する事であった。しかし同時に、それを阻止しようとする者達の隙を突く事も積極的に狙う様にとの指示も受けていた。召喚術使いを狙う事により、それを守ろうとする者に隙を作らせ殺害するーーこれは先の大戦で人族側が編み出した戦法の一つであり、それなりに実績のある方法でもあった。


(あの『毒蜘蛛』にやられた奴等は、凍ってこそいたが森の中での戦いであったはず。木導術使いの得意なフィールドで、しかも相手があの『毒蜘蛛』では、敗れる事も其処まで驚くべき事では無い。だが、今やこの周辺は焼野原。奴の実力は大幅に制限される筈だ。)


アイビシアの炎導術は、武装隊員達の氷導術に悪影響を及ぼしていたが、それはヤクモの木導術にも同じ事が言える。先日の騒動で、炎導術使いにヤクモが敗れたと言う情報を得ていた彼等は、逆にこの状況を好機と見ていた。ヤクモでも負ける事が有ると言う事実、そして周囲の木々が燃えている現在の状況が、彼等に勝機を見出させていた。


(奴等は俺達を殺せず、『毒蜘蛛』は力に大きな制限を受け、更に向こうには足手纏いが沢山居る…。圧倒的に此方が有利だ。ならば、奴等に体勢を整える暇を与えずに、此方の武器である物量による飽和攻撃を弱点に仕掛け続け、反撃させずに圧し潰すだけだ!)


そして、複数の仲間と共に、アキト達が立て籠もっているで有ろう塹壕近くまで近付いた時に、不意に男に連絡が入る。それは、彼等の仲間のレーダー観測員からの緊急通信であった。


『“土”、来ます!』

「総員備え!」


男の合図に、周囲の仲間が一斉に屈んで地面に張り付いて足下を凍らせつつ、前方にも氷の壁を防壁として形成する。土を凍らせる事で、その部分の土を利用した土導術を封じつつ、前からの攻撃も防ぐつもりであったのだ。


(これで、落とし穴も足下からの不意打ちも防げる筈…!)


投石に代表される土導術の戦術の中で、特に注意すべきは足下からの奇襲攻撃であり、落とし穴に代表されるその戦術は、かつての戦場で猛威を振るっていた。鳥型導族の様に空を飛ぶ種族や水棲生物以外は、基本的に地面に立って行動する。つまり、必ずと言って良いほど、地面と接している事になる。その地面を操られるのだから、その上に立つ者は堪ったものでは無い。


(土導術使いか…。これは司令の言っていた、奴等の仲間の筈だよな。まさか、あの『災害派遣ブルドーザー』か?いや、だったら俺達はもう、この山ごと吹っ飛ばされて居るはずだ。)


土導術使いでなければ出来ない様な技が確認された為、土導術使いの何者かが現在、アキト達の側で手助けにしている事は明白であった。しかし、ディアの情報を持つヒサメの部下の男達は皆、アキト達に救出されて寝返っていた為にその情報は伝わっていなかったのだ。故に、学園の関係者を呼び寄せているのだろうと考えていた。


(誰かはわからんが、確か召喚術で呼び寄せたんだったか。チィ!これだから召喚術使いは厄介なんだ…。)


男は、心の中で愚痴を零す。召喚術使いの厄介な所は、転送によって標的を瞬時に遠方の安全地帯まで飛ばせる事も有るが、それと同じかそれ以上に、遠くから契約した仲間を召喚で呼び寄せる事が可能な事にある。疲弊した仲間を安全圏へと逃しつつ、回復した仲間や物資を呼び寄せるそれは、先の戦争でアビス王国側の戦線を維持する上で大いに活躍していた。


(しかし、こんな奴の為に“あの契約”を結ぶ物好きな奴が、『毒蜘蛛』や『孤高騎士団』以外に居たとはな…。)


しかし、その際にネックとなるのは、転移契約を結ばねばならない所にあった。契約を一度行ってしまえば簡単には解除出来ず、そして転移を防ぐ手立ては殆ど無い。つまり、己が生殺与奪を他者に与えるに近い覚悟が必要となるが故に、契約を結べる仲間を集めにくいのである。


(しかし…中々仕掛けて来ないな…。一体、何を待っている?)


観測者からの警告から暫く時間が経ったが、上空からアイビシアが相変わらず炎を放って来る以外には、アキト達から攻撃を仕掛けて来る様子が無かった。不審感を覚え、いい加減痺れを切らそうとしたその時、再び緊急通信が入り込む。


『レーダーに不審な影有り!恐らくこれは…トンネルです!』

「何だと⁉︎…しまった!」


男は驚いた。土導術の反応は反撃の為の物と思い込んでしまったが為に、それが脱出様のトンネルを掘る事だと気付くのが遅れたのだ。ミゾレはそれの懸念も指摘こそしていたが、アキト達が他の目標達の救出も終えない内には、その様な事はしないだろうと考えていた事が裏目に出ていたのだ。


(…確かに、何も救出する場所は此処で無ければいけない理由は無い。あの召喚術使いさえ居れば何処でも良いんだからな…。なら、態々『毒蜘蛛』達をこの場所に来させる様にしたのは、それを待ち伏せしようとした我々を引き付ける為の罠であったと言う事か…!クソ、此方の思考の裏をかかれた!森の中で合流されたら手に負えなくなる!)


男は急ぎ、手持ちの手榴弾を塹壕に向けて投げこむ。それが爆発すると同時に、男は一気に塹壕の淵まで移動して伏せつつ、中を確認する。


「やはりか!」


其処には誰も居らず、代わりに人が楽に通れる位の大きな穴があるだけであった。その穴は深く、まるで奈落にまで続いているのでは無いかと思う位に先が見えなかった。


「奴等の地中移動を妨害する様に足止めを頼む!」

『了解。他隊に連絡して目標の包囲網を形成させます。』

「我々はトンネルの中を通って追跡する!情報面でのサポートを頼む!」

『わかりました。』


男は仲間の数人にその場に待機を命じ、それ以外の仲間には自身の後を付いて来る様に指示すると、ライトを持ちつつ、全身を凍らせてトンネルに突入する。トンネルの壁を凍らせながらその上を滑る事で、土導術による妨害を防ぎつつも高速移動を行う。


「な…。」


しかし、その移動は途中で止まる。一本道だと思ったトンネルが、そこで枝分かれしていた為である。


「我々を撹乱し、そして戦力を分散させるつもりか…。小賢しい!」


男は悪態を吐くが、それで状況が変わる訳でも無い。地上のレーダー観測員に無線で連絡し、土導術の発生源から方向をある程度絞るが、枝分かれした道の何れが繋がっているか、その細かく詳しい情報まではわからない。やはり、班を分けて追跡せざるを得ない。


「此処から先、また枝分かれの有る可能性は有る。だが、術者から遠く離れてしまうだろうハズレの道は、そう長くは造れない筈だ。相互連絡を密に行い、行き止まりを確認したら情報を共有しろ。これより先、立ち止まる事を禁ずる!無駄な動きは極力排除せよ!絶対に奴等を生かして返すな!」

「了解です!」


男達は二手に分かれ、再び猛スピードで穴の中を滑って行った。








「「「「氷生導術・地穿霜柱」」」」


複数の男達の足下に、氷結晶が大きく華開く。地盤を貫く透明で美しい氷麗の剣山は、地中を進む不審な物体に目掛けて勢い良く突き進む。


「観測員、目標の動きはどうだ?」

『目標は氷麗の直前で方向を転換、残念ながら術は回避されました。』


しかし、その氷麗は目標を貫く事は無かった。方向や速度から偏差を計算して正確に狙っているのに、目標はそれを感知出来るのか、当たる前に方向を変えて見事に氷麗を避け切っていた。穴を掘り続けているディアは、周囲の土の状況を逐一把握する事が可能である。土が凍って行くのを感知して、華麗にそれを回避していたのだ。


「クソ!またか!こう上手く避けているとなると…やはり、土導術使いの中でもかなりの実力者が向こうに付いているな…。」

「だが、奴は包囲網の外へは出ていない。着実に追い詰めてはいる筈だ。」

「それはわかっている!わかっては居るが…。」


男達は、山の周囲を包囲する部隊の一つに所属する捜査官達であった。地下を通って逃げようとする目標を逃がさない様に、またあわよくば仕留める為に、先程から頻りに対地下用の氷導術を使用していた。ヤクモ達との合流こそ防げては居たが、まるで中々に潰せない蚊を追い掛けている様な手応えの無さに、苛立ちが次第に積り出していた。


「良いから落ち着け。俺達の役割は、目標をこの辺りから逃がさない事だ。仕留められれば言う事無しだが、功を焦って本来の仕事すら蔑ろにするようでは、後で懲罰されかねんぞ。」

「くっ…わかった。熱くなってしまったようだ。済まない。」

「何、お互い様だ。さぁ、集中しろよ?失敗は許されん。」


熱くなりかけていた男は、仲間の男の言葉に冷静になると、再び地中に向けて導術を放つ準備を始める。しかし、周囲は凍って寒い筈なのに、その額には汗が滲んでいた。適度な休憩を挟みつつ導術を使用していたが、それでもやはり消耗の方が幾分か速かったのだ。


(早く、決着を付けてくれ…。でなければ、此方が先にガス欠になりかねんぞ…。)


冷静にはなっても、焦りはやはり募る。なにせ、此処でアキト達を仕留められても、その後にヤクモやアイビシアの相手をしなければならないのだ。幾ら数が多いと言っても、相手の実力を鑑みれば、徒らに此処で消耗するのは避けたかった。しかし現状は、多くの人員で導術を使用して地表や地下の大部分を凍らせて、未だに目標の一人も始末出来ていない。


(此処で奴等を無事に仕留められたとしても、今の俺達の消耗具合では…。精々、肉壁か囮程度にしか役に立たんかも知れんな。『毒蜘蛛』や『炎の鳥女』が殺害対象で無い事が、せめてもの救いか…。)


例え導術が使えなくなったとしても、縁絶鋼製銃弾や爆弾による火力支援は可能である。しかし、戦場から伝えられるアイビシアの活躍や、ヤクモに攻撃を仕掛けた部隊は一人も残らず通信途絶となってしまっている事を鑑みて、それすら焼け石に水程度にしかならないのでは無いかと言う疑念が拭えない。


(兎に角、今は目の前の事に集中だ。弱気になっても、事態は好転しない。例え此処で死んだとしても、せめて一矢は報いねば…。)


男は再び気合を入れ直す。任務の遂行こそが彼等の目的、それが遂行出来ないと言う事は、彼等の存在価値の否定を示す。それだけは避けたかった。すると、その思いが天に通じたのか、思わぬ朗報が飛び込む。


『通達。目標の動きが鈍くなりました。』

「何?それは本当か!」


それは、地中を進む物体の動きが鈍くなったと言う報告であった。どうやら、四方八方を入り組んだ霜柱で囲われた為に、一定の狭い範囲内でトンネルの掘り続け無ければならなかったが故に、次第に掘る場所が少なくなって来たからだとの事であった。そして、掘る場所を選ばねばならない事が、穴を掘る速度を遅くしていたのだ。


『次の指定するポイントに氷導術を放って下さい。それで完全に行く手を阻める筈です。』

「了解した。」

『呉々も、追跡部隊への誤射には気を付けて下さい。』

「言われるまでも無い。」


男は、漸く見えて来た鬼ごっこの終焉を喜び、仲間と共に再び氷導術を使用した。今までの鬱憤を晴らすかの様に、その氷はそれまでで最も大きく地面の中で花開き、鋭利な花弁が目標地点を綺麗に貫く。


「これで…どうだ?」

『お見事です。目標は完全に動きを停止しました。』

「良し…!」


目標を完全に袋小路に追い込む事が出来た事で、後は追跡部隊が追い詰めるのみとなった。追跡部隊も分散こそしていたが、それでも正確なマッピングと迅速な行動が功を奏し、既に目標まで数十メートルまでの距離にまで迫っていた。そして、反撃をする隙を与えない為に、まだ目標が見えない内からトンネル内に冷気を放ち、動きを止めているだろう目標の足の氷漬けを狙う。


(これで、厄介な召喚術使いと土導術使いは始末出来る。後は、かなり骨が折れるだろうが、残りの目標を追い詰めて…。)


男達は度重なる導術の使用によって、かなり疲弊していた。だが、時間の浪費をする訳には行かないと、次の目標にして本来の第一目標であるヒサメと、第二目標であるサカキの二人を追い掛けるべく、移動を始めようと準備をする。そこに、再び緊急通信が入る。


『通達!目標…発見されず!』


しかし、レーダー観測員から告げられた現実は、そんな男達の淡い希望を嘲笑いながら打ち砕いたのであった。








「どう言う…事だ…?」


追跡部隊の隊長、目標を一番追い詰めた者であろう男は、凍りついた目の前の行き止まりを呆然としながら見つめていた。


「確かに…此処が反応の発信元であった筈だ…!」


男は、近くに何者かが潜んでいないかと周囲を確認する。一部、不自然に凍っていない部分こそ有りはしたが、其処を掘り返しても何も見つからない。


「土の中に隠れたとしても、導術を使用する限りは、必ずレーダーに反応が有る筈なのだが…。」


公安捜査庁の所有する導術探知レーダーは、導力開発総合学園の最新技術を応用して造られた物で、現状のヨミ国において最高峰のレーダーである。それを欺ける導術使いは、今の所確認されていない。(ただし、珍しい呪導術などの、余り研究されていない導術は、情報が足りない為に適用は出来ない。)それが反応を示さないと言う事は、其処で導術が使用されていないと言って差支えない。そして、導術の使用も無しに土の中に長期間潜伏する事は不可能である。


「まさか…消えた…?まるで転移したかのように…まさか!」

『通達!召喚術の反応有り!発信元は…トンネルの入り口⁉︎』

「……嵌められたか!」


男の懸念は、レーダー観測員からの連絡で現実の物となる。アキトは、最初からトンネル内に居なかった。寧ろ、入り口付近に隠れてやり過ごしていた。あたかも人が通る為に掘られた様なトンネルをディアに掘らせ、更に撹乱する様に枝分かれした道を造らせる事で、本気で逃げようとしている様に演出していたのだ。


(俺達は…まんまと釣り出されてしまったのか…!)


男は非常に悔しそうに凍った壁を勢い良く殴るが、すぐに気を取り直す。怒っている暇は無く、力の浪費も避けなければならない。その意思で、無理矢理冷静さを取り戻す。


「地上の部隊の様子は?」

『敵の炎導術使いからの攻撃が激しく、それの対応に手一杯で…。』

「俺達も急ぎ戻る!それまで何とか耐える様に伝えろ!」

『了解です!』


男は踵を返し、仲間と共に急ぎ来た道を戻る。しかしその間にも、良くない知らせは次々に飛び込んで来る。


『敵の土導術使いの、地中からの攻撃が開始されました!』

「クソ!何とか持ち堪えてくれ…!」


アキトの元に戻ったディアが攻勢に出たのだ。地上の部隊は、アキト達が地下に逃げたと勘違いした結果、急ぎ逃げた方向に大部分の戦力を移動して導術を使わせていた。その為、現在はかなり数が減っている上に、残った戦力は皆疲弊している。そこを狙われた形になる。


(上下からの挟み撃ち…。疲弊している此方が勝てる可能性は限り無く低い…。)


ただでさえ酷い状況なのに、その上空からは炎が絶え間無く放たれ、地下からは岩が飛び出たり、不意に落とし穴が出来たりと、更に酷い状況での戦闘を強いられていた。防戦一方でも何とか持ち堪え、善戦して居ると言うのが、奇跡的と言っても良い位である。


『ち、地上の部隊が後方から襲撃されました!これは…銃撃に氷導術⁉︎』

「何だと⁉︎」


しかし、その絶望的な状況を、更に悪化させる者達が到着した。ヒサメとミキである。ヒサメは、カスミによって虐められている背中のサキを見ない様にしながら、素早く滑って移動しながら氷の礫で男達を牽制して動きを止め、ミキは得意の銃撃でその男達の手足を正確に撃って無力化して行く。


『し、死者は出ていない様ですが、撃たれた者は縁絶鋼の影響で導術が…。』

「俺達の武器を利用されたのか…。」


縁絶鋼は、導術使いにとっては天敵である。それは、氷導術使いで構成される公安捜査庁の捜査官達にとっても同じである。自分達の武器を鹵獲され、それを利用されたのだ。考えていない訳では無かったが、その様な事態に直面して、初めてその厄介さが身に染みる。


(しかも、氷導術使いの敵と言う事は、恐らくヒサメ殿か…。銃撃をして来たのは、サカキの誰かの可能性が高い…。となると、召喚術使いのガキの元へ、目標達が全員集合したと言う事!)


男は更に速度を上げる。転移契約を結ばれ、転送で逃がされれば、その時点でアキトを生かしたまま捕らえる他に無くなる。つまり、今までアキト達に強いていた条件を、自分達が背負う事になるのだ。厄介な状況が更に加速するのを感じた男は、途中で別れた仲間と次々合流しながらも、とにかく一刻も早く地上を目指す。


(クソ!道程が長い!間に合うか⁉︎)


しかし、かなり入り組んだ場所を、相当深い所まで進まされてしまっていたが為に、地上に辿り着くまでに時間が掛かっていた。全速力で戻ろうとするも、それで焦って間違った道を進めば目も当てられない。逸る気を落ち着けながらも、全神経を尖らせて走り続けると、やがてトンネルの最初の枝分かれの道にまで戻って来た。地上まで続く方向の道は岩で塞がれていたが、氷導術で何とかこじ開けられそうであった。


「良し…これなら突破出来るな…。外の状況を教えてくれ!」

『地上部隊は…ほぼ全滅しました。残った数名が今尚、氷導術使いとサカキ幹部の一人と交戦中ですが、もう持ちません。空には高速で飛び回る影が一つ。炎は放って来なくなったので、恐らく様子見している物と思われます。土導術使いも同様に、攻撃しないまま地下に潜んでいます。召喚術使いは、反応があったトンネルの入り口近くに潜んでいるまま動きません。』

「その反応…奴等は、最早勝ち戦と思って油断している可能性が高いな…。この岩で、俺達を閉じ込めたなどと侮って居るんだろう。その鼻を明かしてやる!」


アイビシアやディアが攻撃を仕掛けなくなったと言う事は、力の消耗を抑える態勢に入ったと言う事である。ヒサメやミキは先に逃す為、此処での消耗は問題にならない。故に、アキト達は明らかに、脱出の為の力を残す為の手加減をしている状況である。一気に決めるにはこのタイミングしか無いと、男は腹を決める。


「……氷生導術・凍身侍殺!」


男は静かに、全身全霊を掛けた導術を発動する。それは任意のタイミングで、自身を中心に半径十メートル以内の生命を即座に凍死させる高等氷導術であった。その代わり、発動すればその余波で自分自身すら高確率で凍死する程のダメージを受ける、決死の自爆技でもあった。


「必ず…仕留める!」


男は自らの生命も顧みず、仲間を巻き込む事も厭わず、ただ任務の為に全てを賭け、トンネルの入り口に潜むアキトを狙う為に駆け出した。しかし、男達がトンネルの入口近くまで来た時、その男の悲壮な覚悟を弄ぶかの様に、それは現れた。


「あ、あれは…何故ここに!」


それは、背中に紅い大きな羽根を持った一人の女性ーーアイビシアであった。その悪魔の様な満面の笑みを顔に、青い大きな炎を右手に宿したその女は、男達の登場を今か今かと待ち侘びていたのだ。


(まさか…!)


アイビシアは、クロウリアと交代していた。地上部隊の大体を片付けられた為、空が余り危険で無くなったのを確認したアキトが、アイビシアを呼びつつクロウリアを空高く飛ばさせていたのだ。そして、捜査官達が地下からやって来るであろう事はアキトはわかっていたので、クロウリアを安全な空へ逃し、迎撃する為にアイビシアを呼んでいた。


地上部隊がやられた為に情報源がレーダーメインとなって視覚情報が正確に得られず、それまでの経過から見て空を飛んでいるのはアイビシアであると言う先入観が、男に勘違いを起こさせていた。そして、穴の中は逃げ道は無く、背後は追随する仲間が邪魔で後退出来ない。つまり、男達はまたしても、まんまと誘き寄せられてしまったと言う事である。


「ち…ちっくしょおおおおおおがアアアアアアアアアアアアア‼︎‼︎‼︎」


男達は、導術を発動する暇すらも、一矢報いる機会すらも与えられなかった。青い業火に呑まれながら、深い穴の中を奈落の底に滑り落ちるかの様に消えて行った。


「誰が畜生よ!失礼しちゃうわね。私は鳥よ!とーり!…あれ、もしかして鳥って畜生だったかしら?……ま、良っか。」


アイビシアは、何とも締まらない台詞を吐きつつ、その美しい羽根を大きく羽撃かせたのであった。








「…どうやら、召喚術使いの元へ送った部隊は壊滅したようだな。」


トレーラーの中で、ミゾレが呟いた。報告して来たレーダー観測員は怯えた様子であったが、ミゾレは特に激昂する様な素振りは見せず、続けて監視をする様に命じて下がらせた。その様子を見ていたアシタは、存外に慌てていないミゾレに感心していた。


「へえ、作戦が失敗したと言うのに、随分と冷静だね。」

「…元々、ある程度予想はついていた。忌々しいが、貴様の言う通り此方が用意した戦力では厳しかった。その戦力差を埋める為に不意打ちを仕掛けたんだ。見事に失敗に終わったがな。」

「見通しが悪かったね。この程度の戦力で彼等を殺そうだなんて。」

「ああ、本当ならもっと本家から実力者を連れて来たかったんだが…。上がこれ以上の戦力投入は、予算的に許さないと…。いや、これは見苦しい言い訳だな。本家から賜わった物で何とかするのが、俺の仕事だ。」


ミゾレは、アシタの言葉に素直に反応する。冷静を努めていても、藁にも縋りたいと願う程の手詰まり感は否めないのだ。事ここに至っては、最早目の前の胡散臭い男に頼る他に無く、自身のプライドを折ってでも、険悪な仲になる事は避けようと努めていた。


「まだ、散らばった奴等を纏めればそれなりの戦力にはなるが…。」

「とてもじゃ無いけど、今の彼等を殺せるとは思えないね。」

「…ああ。そして、恐らくもうすぐにでも、召喚術使いによって標的達は遠く、俺達が手を出せない安全な場所へと送られてしまうだろう。恐らく、あの病院だな。」

「となると、君の目標を達成するには、噂の召喚術使い君を生きたまま捕まえ、標的を召喚させる他に無い…と言う事だね。」


ミゾレは頷き、黙り込む。アイビシアやヤクモを突破しつつアキトを生きたまま捕らえる事を、今の残りの戦力で行う事は、どう考えても無謀であった。


「それに、あの『毒蜘蛛』が、蜘蛛の子の様に散らばって互いに連携も上手く取れず、更に導術を無駄に使用させられて疲弊し切っている君の部下達を、大人しく放って置くと思うのかい?」


アシタの言葉が終わるや否や、レーダー観測員からの緊急通信が入る。かなり慌てた様子の声は、アシタの予見した通りの懸念が現実となった事を伝えていた。


『大変です!山を囲っていた部隊の隊員達が、一人も残らず通信途絶に…!』

「ほらね?」

「ぐぬう……。」


予想こそしていたが、ミゾレは思わず顔を顰めた。続けて、アシタに何かを言おうとした時、別の男が飛び込んで来た。トレーラーの周りを見張る係の者であった。


「司令!トレーラーの外に大量の蔦で巻かれた隊員達が…!皆、生きてはいますが、毒か何かを盛られたらしく、麻痺状態で全く動けない状態でう!今は医療班が診ていますが…。」

「……『毒蜘蛛』の仕業か……。」

「人質にもせずに返して来るなんて、この作戦に対する嫌味なのかな?まあ、君達にはそんな作戦は無駄だろうし、ただ単に面倒見切れないからこっちで介抱しろって事かな。何れにせよ、彼等は完全に君達を舐めているね。」

「…最早、俺に出来る事は他には無いか…。」


ミゾレは見張りに戻る様に伝えると、アシタに向き直る。


「アシタ殿。」

「呼び捨てで良いよ。謙る必要も無い。寧ろ、僕が物を売る側なんだから。」

「いや、礼儀は尽くさねばならない場合も有る。アシタ殿、俺に兵器を売ってくれ。」

「フフ…ああ、良いとも。その為に此処に来たんだからね。僕の友…アサテ謹製の生物兵器の実力、とくと御覧に入れようか。」


アシタは、とても嬉しそうで有りながら何処か蔑む様な声と、歪んだ笑顔をミゾレに返した。

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