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カベタス・サマナー  作者: 休眠熊
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第9話

「それでは、ワタクシの方から学園長に掛け合って、手続きの方は済ませておきますわ。アキトさんは、学園再開の折に学園長に会って、指示を仰いで下さいませ。きっと、良き様に計らって頂けますわ。」

「はい、わかりました。ありがとうございます。今日の所はこの子の扱いはどうしましょうか?」


アキトは地竜を見る。地竜は犯罪者のキタカタが所持していた違法密漁された導物であるため、通常なら警察や専門機関で保護する規定となっている。なので本来なら、警察にこのまま預けるのが筋である。


「その子もシルバーナさんと一緒に居たい見たいですし、ワタクシが上に掛け合って話を付けておきますわ。その子はあなたの物、導物使いの仮免許もワタクシの責任で発行しておきますわ。安心してその子の側にいなさい。そしてその子を安心させてあげなさい。」


カスミは優しく地竜を撫でる。最初はビクついていた地竜も、段々慣れて気持ち良さそうな声をあげる。


「うふふ、本当に可愛いですわね。そうだ、この子に名前を付けてあげたら如何ですの?“地竜”は種族名ですので、名前には不適でしてよ?」

「名前…、ですか。そうですね…。」


アキトは少し悩んだ後、シルバーナに向く。


「この子の名前、ルビィが付けてみます?」

「え、宜しいのですか?」

「はい、元々はルビィに懐いた子ですからね。僕に遠慮は要りませんよ?名前の候補でも良いですからね。」

「ええと、そうですね…。」


シルバーナは真剣に悩む。その真剣な顔を見て、アキトは思わず嬉しくなる。


(良い顔です。動物を飼う事は心のケアにもなりますし、命の大切さを学ぶ良い機会ですからね。僕も、初めてのペットに犬を飼った時はとても嬉しかったですし、成仏してしまった時は凄く悲しかったです。でも、飼えて良かった、サム(犬の名前)に出会えて良かったと、心から思えました…。あれ、なんか涙が…。)


アキトは潤む瞳を欠伸の振りして誤魔化した。


「あ、あの、私は、ディアちゃんが良いです。」

「キュ⁉︎」


シルバーナは、おずおずと答えた。地竜は一瞬驚くが、すぐに元に戻る。


「ディア…ですか。良いですよ。それにしましょう。」

「わかりましたわ。今日からこの子はディアさんという事で宜しいですわね。」

「ええっ⁉︎そんな簡単に決めてしまって宜しいのですか⁉︎この子はアキトお兄さんの物なのに、私なんかが勝手に決めてしまっても!」


さも当然であるかの様に頷くアキトとカスミに、提案した本人であるシルバーナの方が面食らう。


「当たり前じゃないですか。この子は“僕達の物”なんですから。そして僕は、ルビィにこの子の名前を付けて欲しかったんですよ。その方が愛着湧きますしね。」

「ワタクシもアキトさんに賛同致しますわ。この子も、こんなに懐いているあなたに名を付けてもらう方が嬉しいでしょう?」

「キュキュッキュキュ〜。」


アキトもカスミも、地竜さえも、シルバーナの付けた名前に賛成した。


「……はい、ありがとうございます!これから宜しくね。ディアちゃん!」

「キュッピピ〜ルピ〜!」


満面の笑みでシルバーナは笑い、地竜ことディアも嬉しそうに鳴いた。と、そこで、カスミが何やら手持ちのバッグから金色の輪っかの様な物を取り出す。


「それでは、首輪を付けて差し上げますわ。人間用の首輪ですが、きっとお似合いですわ。」

「え、ま、まあ、首輪を付ければ僕の所有物であると言う示しにはなりますが、何でそんな物持ち歩いて居るんです…?しかも、人間用って…。」

「うふふふふ、乙女の秘密ですわ。無闇な詮索はしない方が身の為でしてよ?」

「アア、ハイ、ナニモミナカッタコトニイタシマス。」

「うふ、賢明ですわね。」


アキトは身の危険を感じて目を逸らす。シルバーナやディアも同様であった。カスミの笑顔が怖かったのだ。アキトは他人事ながら、カスミの夫の事を本気で心配した。


「首輪に名前を入れて…っと。これで良いですわ。」

「キュルキュル〜。」

「あらあら、この首輪が気に入ったのかしら?良かったですわ、気に入って貰えて。あなたとは気が合いそうですわね。」

「キュ⁉︎キュ、キュピ〜ルル〜…。」

「あらまあ残念、振られちゃいましたわ。」


ディアはカスミの言葉にブンブンと首を振って否定する。


(何で会話が成立しているのでしょうか…。まあ、顔を見れば分かりますかね。結構表情豊かで見てて楽しいです。)


アキトはカスミとディアのやり取りを、微笑み半分不安半分な気持ちで眺めていた。どうやらディアはそっちの気が無いノーマルらしく、アキトはホッとした。


「そうですわ!アキトさん、確かあなたは転移召喚が得意でしたわよね?」

「ええ、得意といいますか、それしか出来ないといいますか…。まあ、そうです。」

「でしたら契約なさったらいかが?それでしたら学園でもワタクシが会いたい時に会えますわ。」

「え?まあ、構いませんが…。」


ディアの所有権は、一応アキトと言う事になっているが、正式な所有者では無い。キタカタが所有し、それを警察が保護した形なので、警察が所有者である。個人が所有していない状態なので、所持契約を行えばアキトが転移召喚可能になる。


アキトは所持契約用の導陣を召喚した紙に描いて、ディアをそこに乗せて契約しようとする。


「あれ?契約が上手くいきません…。」


アキトは困惑する。通常、動物等と契約するには、所持契約で可能な筈なのだがどう言う訳か契約が上手くいかないのだ。


「もしかして、ディアって人の言葉が分かるのですか?」

「キュキュ!キュピィ〜ピル!」

「やっぱり…。」


ディアは、導物の中でも珍しい存在とされる人語を解する導物、高導物であったらしい。導物は、動物と比べて知能が高い場合が多いが、人の言葉を理解できる程の知能を持つ物はかなり珍しい為、高導物はかなりの高値で取り引きされている。


「話が分かると何か問題が有りますの?」

「ええ、転移対象が言葉を理解する程に高い知能と自我を有する場合、契約は人のそれに準じます。つまり、所持契約による一方的な契約では無く、転移契約による相互の承諾の元での契約をしなければならないんです。」


召喚導術における契約では、一定以上の知能を持つ存在(人間含む)は、召喚者と結ぶ契約内容を理解し、それを了承するという手順を踏まなければ契約が上手くいかない仕組みとなっている。これにより、自我を有する者が望まぬ契約を結ばされないように保護している。(脅迫して無理矢理契約するなどの抜け道は有るが、正当な理由がない場合にはもちろん犯罪である。)


よって、ディアの様な高導物には、一方的な契約をすることが出来ないのである。


「しかし、そうなると、厄介ですね…。」


知能が高いからと言って、確実に契約内容を理解出来るとは限らない上、理解出来たとしても了承するか分からない。一般人が皆契約を嫌がるように、召喚者の都合でいつ如何なる時も召喚されかねないという懸念を理解できたとしたら、喜んで契約するとは思えない。


「案ずるより産むが易しですわよ。兎に角やってみなさいな。」

「私もディアちゃんを説得します。アキトお兄さんなら信用できるって、私が一番分かっていますから!」

「ありがとうございます。分かりました。やってみます。」


アキトは、転移契約を描いた紙を用意して、ディアを乗せる。


「ディアちゃん。アキトお兄さんなら大丈夫です。何も心配せず、従って下さいね?」

「キュキュ!」


シルバーナがディアから離れると、アキトが近付く。そのまま屈み、優しい笑顔を見せつつ、目線を合わせて頭を撫でる。ディアはすぐにアキトに慣れ、気持ち良さそうに喉を鳴らす。


「では、契約しますね。」

「キュッキュ!」


アキトが転移契約を行うと、意外な程あっさりと契約は上手くいった。


「上手くいきました!やって見る物ですね。まさかこんなに簡単に行くとは思わなかったですよ。ルビィの説得のお陰ですね。」

「やった!ディアちゃん!これで私と一緒だよ!」

「キュイ、キュピキュピピ!」


喜ぶ一人と一匹を優しい目で見つめつつ、アキトはカスミを見る。


「本当に、何から何までありがとうございました。」

「いえいえ、ワタクシは、ワタクシのやりたいようにやった、ただそれだけですわ。」


すると、様子を見ながらキツネが話に入ってくる。


「アキト君、結構時間が経ってしまいました。仕事が有るので、これで私は失礼しますねぇ。」

「わかりました。キツネさん、一応御礼を言っておきます。ありがとうございました。」

「一応…ですか。でも、感謝されないよりマシですかねぇ…。」


キツネは少し肩を落としながら、部屋を出て行った。


「では、ワタクシも行きますわ。休み明け、ディアさんを見に来ますので、よろしくお願いしますわね?」

「はい、また会いましょう、カスミ先生。」

「私が話を付けておきますので、警察署内でもその子と一緒で良いですわよ。それでは、ごきげんよう。」


警察の人も大変だなとアキトは思ったが、顔には出さなかった。


カスミを署の玄関まで見送りに出た後、アキト達は長らく待たせてしまっていた警備隊の人達に謝りつつ、用意された部屋に向かう。カスミが話をつけていてくれたお陰で、ディアの同伴も特例としてあっさり認められた。ただし、騒ぎを起こさないようにする事は約束させられた。


アキト達が案内された部屋は、通常は賓客用に使用される大きめの和室で、ディアを含めてもアキト達には広過ぎる位でる。狙撃対策の為に部屋の位置は建物の内部にあり、壁も扉も頑丈なものであった。

元々はアキトとシルバーナのみが入る予定であった為、ディアの為に急ぎビニールシートが部分的に貼られていた。部屋の外には警備員が立ち、形だけ襲撃に備えていた。


「そう言えば、用意された部屋は一つだけでしたか…。ルビィとディアと共に過ごすには充分な広さが有りますが…。寝る時はどうしましょうか?別の部屋にしましょうか?」

「いえ!あ!あの!もし、宜しければ、あの、その…。また…一緒に…。」


シルバーナは、しどろもどろになりながらも、自らの欲求を少しづつ顕にする。アキトはシルバーナを優しく撫でて微笑みかける。


「ルビィが良ければ、僕は構いません。一緒に寝ましょう。」

「は…はひ…。」

「ディアもどうですか?」

「キュキュ!」


顔を真っ赤にしながらも、何とかアキトに答えたシルバーナは、アキトがディアも一緒に寝る事を提案して、それをディアが受け容れていた事には気付けなかった。


(や…、やったーーーーーーー‼︎)


シルバーナは、喜びに頭の中が支配されていて、碌な返事も出来なかった。


警官に案内され部屋に入ると、アキトはシルバーナに靴を脱いで入るように伝え、自身はタオルを召喚してディアの足裏を一応綺麗にしてから共に部屋に入る。(地竜の足裏は石なので、表面に着いた泥を払えば床を汚す事はない。)

そして、お茶を飲んで一服した後でシルバーナがディアの近くに寄ると、ディアはシルバーナの服を咥えて引っ張る。


「なに?ディアちゃん。」

「キュッキュ、キュピーキュ、キュッピッピー。」


ディアは背中をシルバーナに見せて嬉しそうに鳴く。どうやら背に乗れと言っているらしい。


「乗ってもいいの?」

「キュキュ!」

「ありがとう!」


シルバーナがディアの背に乗ると、ディアはゆっくりと歩き始める。背に乗るシルバーナが落ちないように気をつけているようであった。


「あははは!凄い凄い!」

「キュッキュル〜。」


ディアの背に乗りはしゃぐ姿は年相応で、今まで張っていた気が少し解れて来ている様であった。


(ああ、良かった…。ルビィの自然な笑みが見れただけでも、ディアを貰った甲斐が有りました。あんなに楽しそうなルビィは初めて見ます。やっぱり、女の子らしい可愛らしい笑顔が似合っていますね…。)


アキトは、初めて見れたシルバーナの一面を微笑ましく見つめる。アキトの心は暖かくなり、愛おしさで思わず頬が綻ぶ。いつまでも眺めていたいと思わずには居られなかった。


「ありがとうディアちゃん!とっても楽しかったです!」

「キュンキュルキュルッピア!」


ディアの背中からシルバーナが降り、ディアの頭を撫でる。その時、大きな音が鳴り響く、ディアの腹の虫が泣き叫ぶ音であった。アキトは苦笑しながらディアに近寄る。


「お腹が空いたのですか?」

「キュ、キュルキュル…。」

「わかりました。食べ物を買って来ましょう。丁度、僕もお腹が空いてきた所です。ルビィはどうですか?」

「はい、私もお腹が空きました。」

「わかりました。買って来ますね!」

「キュキュ?キュピンピッピ〜。」


夕飯と聞いて、ディアとシルバーナは嬉しそうに笑う。


「ルビィには野菜を買って、僕は用意されたお弁当を貰うとして…。」


と、そこでアキトは重大な事を自分が知らない事に気付く。


「そう言えば、地竜って何を食糧としているのですか?」


アキトは、導物についてそこまで詳しくない。無論、地竜についても知り得ない。だから、地竜を祖父に持つシルバーナに、地竜の食事について聞いてみた。


「ええと、確かお祖父様は腐葉土を良く食されておりました。後は金属なども食べていたと思います。」

「なるほど、地竜と言われるだけはありますね。それにしても土や金属ですか…。普通の食事よりもかえって難しいですね…。」

「お祖父様は普通に人の食事も摂れますよ?ただ、やはりそれは導族だからであって、導物であるディアちゃんには、キチンとした食べ物(?)を与えたいです。」

「キュッキュ!」


地竜種は、特徴として土や金属をエネルギー源にする事が出来る。土の中の養分を取り込んだり、金属を溶かしたりする事で、エネルギーを摂取しているのである。

更に、導族であれば人としての特徴を持つために人の食事を取ることも可能で、導物であればドラゴンの主食(肉)を摂る事が可能となる。


(そういえば、公爵閣下はルビィに拾い食いをしないように教育していたみたいですが。土ってどうなんでしょう?拾い食いする以外無いと思うんですが。)


バイドンはシルバーナにはしたないからと、拾い食いしないように教育していたが、それは飽くまでも食事の時に床に落とした物を拾って食べてはいけない、というつもりで教えていた。決して、餓死するまで落ちている物を食べてはいけないという事ではない。


シルバーナがその言葉を額面通りに捉えて勘違いしてしまった事、今まで自分で草を採取した事が無く、食卓に並べられた物しか食べた事が無いなどが合わさってしまった結果であった。


「様々な物を食べられると言うのは良いですね。僕ら人間は土を食べたり出来ませんからね。」


土を食べる事が出来たら、どんなに食費が浮くだろうかと、叶いもしない妄想にアキトは耽る。


「じゃあ、ディアの為には土を買って来ますか。腐葉土で宜しいのですよね?」

「はい、それで良いと思います。」

「キュピール!」


取り敢えず、アキトは土を買ってディアに食べさせようと考える。肉でも良かったのだが、自分が食べたくなるので、ディアが望まない限り買い与えたく無かったのだ。

また、贅沢を覚えて欲しくないとの切なる願いもあった。カスミが費用を持つとは言っても、アキトとしてはなるべく負担を掛けさせたくはなかったのである。


「待って下さい!出て行かれては困ります!土や野菜でしたら我々が買ってきますから!」

「あ、ああ、そうでした。僕たちは今、保護されているんでした。」


部屋を出ようとした時、アキトは警官に止められる。アキトは保護されているという立場を思い出し、警官に平謝りした後、申し訳無さそうに買い出しをお願いした。警官は同僚に連絡してお使いに行かせた。


(考えてみると、変な話ですよね。警備している筈が買い出しに行かせられるなんて…。なんか、申し訳ないですね…。)


アキトは、土を買いに行かされた同僚に心の中で謝った。


しばらくすると、警官の同僚がやって来て袋に入った腐葉土と、野菜に弁当を置いて行った。アキトは何度もお礼を言いつつそれを受け取ると、部屋の中に入る。


「さあ、ディア。これで良いですか?」

「キュキュ!キュルピッピ〜。」


アキトがビニールシートの上で腐葉土の袋を開ける。ディアは目を期待に輝かせ、尻尾を激しく振り回す。

アキトがビニールシート上に土を広げると、ディアはじっとアキトを見つめる。要らないのかと思えば、唾液代わりの砂がサラサラと口から零れ落ちている。どうやら了承を取ってから食べようとしているらしい。

考えて見れば、土が主食ならその辺りの土地を食べれば良いだろうに、ディアはそれをしなかった。そうしない様に躾されている事は明らかであった。


「なかなか良く躾けられていますね。密猟者の躾でしょうか?」

「キュ、キュイ〜…。」

「ああ、すみません、どうぞ。」

「キュルキュルッピッピ〜!」


アキトが食べて良いと言うと、待ってましたとばかりに土の山にかぶり付く。どうやらお気に召したようで、見る見るうちに土の山が無くなっていく。土を撒き散らし、散った土は舐めとるような、余り行儀の良い食べ方では無かった。


「なんか、ルビィと出会った時を思い出しますね…。昨日の事ですけど。」

「わ、私、こんなにはしたなかったのですか⁉︎も、申し訳ありませんでした!」


アキトは染み染み昨晩のシルバーナの姿を思い出し、シルバーナは昨晩の自分の姿を客観的に見せられて悶絶した。


「いえいえ、お腹が空いている時は仕方ないですよ。」

「は、はい、うう、恥ずかしいです…。」


アキトが慰めるも、シルバーナは顔を隠して身悶えしていた。好きな人に恥ずかしい姿を見られていた事がとてもショックであったのだ。アキトは仕方がないので話題を変える。


「それよりも、どうやらディアはこの土を気に入ったみたいですね。」

「え?ああ、はい。そのようですね。」

「また後で、何処で買ったのか聞きましょう。もしかしたら、ルビィにも買いに行ってもらうかも知れないですからね。頼りにしていますよ?ルビィ。」

「は…、はい!頑張ります!」


アキトはシルバーナの世話をすると決めた時に、シルバーナに何かしら手伝いをして貰おうと決めていた。シルバーナがヨミ国で生きて行けるように、様々な経験を通して成長して行って貰いたいと思ったからである。

導物の世話する事は、彼女にとって良い経験になるのではと思った為に、ディアを飼う事を決心した部分もあったのだ。


(アキトお兄さんが私を頼ってくれています!お役に立てるように頑張ります!)


シルバーナは何よりも、アキトの役に立てる事を喜んでいた。


「それじゃあ、僕らも夕飯にしますか。」

「はい!」


シルバーナは生野菜をかじり、美味しそうに頬張る。アキトは支給されたお弁当を食べながらこれからの食費に思いを馳せる。


(う〜ん、腐葉土ならば、寮の裏山の土で代用出来ませんかね?結構肥沃だった気がします。いや、勝手に地面を食べさせるのは違法ですかね?でも山菜は採れたし、許可貰えるかも知れません。交渉してみますか。

もし市販の腐葉土と味(?)が同じかそれ以上でディアが気に入ったなら、それを採ってきた方が安上がりですね。)


くだらない事でも、アキトにとってはかなり重要な問題であった。


しばらくすると、ディアは土を綺麗に残さず食べ尽くす。お腹が膨れて満足そうな顔をしていた。アキト達も食べ終わり、食後の休憩を取る。するとディアは、ノソノソとアキトに近寄り頭を下げて礼をする。


「キュイキュイ!」

「お粗末様です。残さず綺麗に食べましたね。偉い偉い。」


アキトがディアの頭を撫でると、ディアはアキトの服を引っ張る。


「キュ、キュイ〜キュ!」

「何ですか?」


アキトは、ディアに促されるままに屈み込む。すると、ディアが急に唸りだす。何処か苦しげである。


「ル、ルル、ルグワウウウウウ!」

「ど、どうしたのですか⁉︎」

「ディアちゃん⁉︎」


心配そうにアキトとシルバーナはディアを見つめた。しかしディアは御構い無しに唸り、やがて砂の涙を流しながら何かを吐き出す。握り拳位の大きさの軟らかく黒い塊であった。


「一体何でしょうか、これは…。」

「フヒュー、フヒュー。キュキュ!」

「これを僕にくれると?ありがとうございます。」


どうやらディアは、アキトにお礼をするつもりでこの塊を創り出したらしい。アキトは塊が何なのか分からず訝しみながらも、ディアの気持ちに礼を言った。


「ですが、これを創るのは大変なのでしょう?とても苦しそうでした…。無理してまで、お礼をする事は有りませんよ?」

「キュイ?キュウ…。」


ディアは、お礼が気に入らなかったのだと思ったのか落ち込む。


「ああ!べ、別に気に入らないとか、そういう訳じゃないですよ!ただ、ディアが苦しむ姿が見たくないんです。」

「キュ?キュキュイ〜。」

「気にする必要はない、ですか?気にしない訳無いですよ、ディアは大事な家族なんですから。苦しんでお礼する位なら、笑顔をみせてほしいです。」

「キュウ…。キュキュ!」


ディアはアキトの言う事を理解して、笑顔を造った。牙が剥き出しで中々に精悍であるが、笑っているのだと確かに分かった。


「そうですよ。それで良いんです。」

「キュッキュキュ〜!」

「うわっ!」


ディアはアキトに飛び掛かり押し倒すと、そのままアキトの顔を舐め始めた。細かな砂で出来た舌は触り心地が良く、アキトは砂場で遊ぶような懐かしい感覚になった。


「あははは、良い子ですね、本当に。僕もディアに会えてとても嬉しいですよ。」

「キュキュ、ピーキュッキュ!」

「アキトお兄さんばかりずるいです!私も混ぜて下さい!」

「ええ、良いですよ。おいで、ルビィ。」


そのまま二人と一匹は楽しそうに戯れた。暫くして遊び疲れたシルバーナとディアが休憩すると、アキトは放置していた黒い塊を手にする。


「それにしても、一体何なのでしょうかね?黒い金属…、あれ?ちょっと待って下さい。もしかして…。」


アキトは、ある可能性に思い至る。そして、予想を確かめる為に、その塊を持った状態で召喚を試してみた。


「やっぱり…。なるほど、道理であんなに大量の…。ああ、どうしましょう、バレたらかなり不味いですよね…。」

「ど、如何したのですか?アキトお兄さん。」

「キュキュウキュ?」


そして、予想は的中し、アキトは頭を抱える。召喚術が発動しなかったのだ。アキトは塊を持ったまま部屋の隅に行く。


「ルビィ、ディア、こっちへ来て下さい。後、これからはなるべく小声で喋ってください。」


そして、アキトはシルバーナとディアを自身の居る場所に呼び寄せる。彼女らは怪訝に思いながらも指示に従う。


「一体、どうしたんですか?」

「これは、“縁絶鋼”です。あの組織が大量に所持していたのは、ディアが創った物だったのですね…。」


アキトは、手の上にある数千万円は下らないであろう黒い塊を、恨めしそうに睨み付けた。

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