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カベタス・サマナー  作者: 休眠熊
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第19話

会話&状況把握の回です。

「それでは私はこの車を返して来ますので。」

「はい、有難うございました。コチヤ先生。」


学園長の家の門の前に着いた車から降りたアキト達三人は、車を返しに行くコチヤに別れを告げた。


学園長の屋敷は古ヨミ国風の家屋で、入り口に大きな木の門があり、それをくぐるとヨミ国式の整った庭園が見える。


「うわ~…、とても綺麗ですね~。」

「ヨミ国式の庭園をみるのは初めてですか?」

「はい!もしもヨミ国に来る事があったら一度見てみたかったんです。」


周囲の風景を鑑賞して笑顔になるシルバーナに対して、アキトは彼女の嬉しそうな顔を見て笑顔になる。


「そうですか、それは良かったです。ここの庭園は見事ですよ。僕も前に学園長の屋敷を訪ねたことがあったのですが、初めてこの庭を見たときは、感動で言葉が出ませんでした。あなた様と一緒にこの風景を見ることが出来てとても嬉しく思いますよ。」

「はい、私もとても嬉しいです。」


玄関に着いて呼び鈴を鳴らすと、すぐに使用人らしき壮年の男性が戸を開けた。


「お久しぶりです、ヤクモさん。」

「これはこれはミノリ様、ようこそいらっしゃいました。話は大旦那様より伺っております。どうぞ此方へ。」

「ヤクモさん…、私を名字で呼ぶのいい加減止してくれませんか?」

「おや?どうしてでしょうか?良い名字だと思うのですが?」

「だから何度も言っているでしょう?ミノリって名前と厳つい顔のギャップが有りすぎて笑われてしまうんですよ…。」

「いえいえ…プッ、そんな事は…フフッ、ありませんから大丈夫ですよ…ククッ。」

「あなた絶対わざとやってるでしょ!」


ヤクモとコウガのやり取りを見ていたアキトは、恐る恐る声を上げる。


「あの…、そろそろ中に入りませんか?」

「あ、はい。そうですね。すみません…。」

「フフッ、それではお部屋に案内致します。」



ヤクモに連れられ、アキト達は長い廊下を歩き、一つの部屋の前に着くとヤクモは声を上げた。


「大旦那様。ミノリ様、アラカミ様、フェルミ様をお連れいたしました。」

「おう、まあ入れや。」


ヤクモが襖を少し開け、中に居る人物に声を掛けると、直ぐに返事があった。


「失礼致します。」

「おう、良く来たな。皆無事で何よりだぜぃ。」


部屋の中に入ると、ヨミ国の伝統的な衣装に身を包んだ初老の男性がいた。


「お久しぶりです、学園長。お元気そうで何よりです。」

「はっはっは!アキトも変わらねぇな全く。相変わらず肉のねぇ体に長ぇ髪、おめぇ本当に男か?」

「…正真正銘男ですよ。それに筋肉は前よりも付きましたよ…。」

「そうかぁ?コウガぐれぇ付けねぇとわからねぇぞ?」

「学園長の基準だと世の中の男性の大半が女性の様な体つきということになってしまいますよ…。」


学園長とアキトが再開を祝していると、横で見ていたコウガが口を開いた。


「学園長。今はその様に戯れている場合ではありません。」

「なんでぇ、良いじゃねぇかちょっとくれぇ。相変わらず顔に似合わず細けぇ奴だ。」

「顔は関係ないでしょう!全く。それよりも今は現状の確認です。学園の方はどうなっているのですか?」


コウガの問いに、学園長は嫌な顔をして不機嫌そうに話始めた。


学園長の話に拠ると、学園は今閉鎖状態になり、中で警察が捜査を行っている。コウガがアキト達を寮から連れ出した直後の話であるが、寮にも警察から連絡が行き、生徒は部屋にて待機、外出している者には速やかに寮へ戻るよう連絡が入っていたそうだ。


「話に拠ると、アビス王国の外交官のヤツが、フェルミ公爵殺害の証拠として、焼け焦げた骨を見せたんだってよ。そんで、特に炎導術を扱うヤツが念入りに調べられてる。」


その骨は、この学園の生徒を名乗る人物から送られた物で、『このようになりたくなければ今すぐこの国から出て行け』という脅迫文も添えられていた、とアビス王国外交官は語っていた。


「…骨…ですか…。」


不吉な単語を耳にして、沈痛な表情を浮かべるシルバーナ。それをアキトは見かね、学園長に質問する。


「…その骨は、本当にフェルミ公爵の物だったのですか?」

「…いや、わからねえ。こっちでその骨を調べようとしたら、『証拠隠滅の恐れがある』とか何とかぬかしやがってそれを渡さなかったらしい。ケッ!怪しいもんだぜ!」


アキトはシルバーナを優しく抱き寄せ、『きっと大丈夫だから』と伝えるように優しく頭を撫でた。シルバーナは軽く目を閉じてアキトの胸に自らの頭を預け、アキトの心音を感じて不安に負けそうな気持ちを奮い立たせた。


「ったく!うちのモンの仕業じゃねぇってのによぉ!」

「まあまあ、ですが、フェルミ公爵襲撃犯であるタウロが捕まりましたから、後は彼に導術追跡機を使用すれば彼が犯人だとわかり、生徒達への疑いは晴れますよ。」


導術を使用すると、その際使用された導子の挙動に使用者特有の癖が残る。

これを導癖と呼び、特殊な機械を使用して解析することにより、導術使用者をかなりの精度で特定することが可能である。この技術が開発されたため、導術が犯罪に使用される頻度がかなり減ったとされている。


「まあ、そいつぁ良い。疑いが晴れるんなら構わねぇ。それで、現状一番気にしなきゃなんねぇ問題がある。」

「…潜り込んでいるスパイの事ですね。」


コウガは神妙な面持ちで答え、アキトとシルバーナは息を飲んだ。


「…ああ、そうだ。今回の襲撃は余りにタイミングが良すぎる。誰かしらがこっちの情報を漏らし、襲撃を支援しなきゃ不可能な程にな。」

「やはり、警察や学園関係者の中に…。」

「俺としちゃあ身内を疑いたかぁねぇんだが、恐らくはな。」


苦虫を噛み潰したような顔をする学園長に、コウガは今更ながら溜め息をついた。


「何にしても、アキト君と入れ違いにならずに済んで良かった…。もし単独でここに来る様なことをしていたら今頃どうなっていたか…。」

「コウガ先生、ご心配おかけしてすみませんでした。」


申し訳なさそうに謝るアキトに、学園長は頭を掻きながら声をかける。


「あ~、まあ何だ、お前にこっちに単独で来る様に言ったのはオレだ。だからオレにも責任がある。」

「そうですよアキト君。学園長にも非がありますから。」


さっき弄られたお返しとばかりに便乗するコウガに、学園長は口を尖らせる。


「わーってるよ!でもなぁ、あん時ゃフェルミ公爵が襲撃されている何て知らされてなかったんだ。フェルミ公爵の公の入国予定も明日だったしな。だからアキトからの連絡に何こいつ寝ぼけた事言ってやがるんだって思っちまったんだよ。もう遅いし、他のヤツに確認に行かせるのも気が引けたからな。アキト自らここに来いっつっちまったんだよ。」


聞けば、もしもイタズラならわざわざ学園長の家まで来ないだろうし、また来たとしたら騙されているか何かだろうから目を覚ましてやろうと考えての事だったらしい。


「だがよぉ、アキトもちっと考えりゃおかしいってわかるんじゃねぇか?暗殺者が襲撃して来るかも知れねえのに、わざわざ単独で来いなんて普通言わねえぜ?」


少しばかりアキトへの非難が入った質問に、アキトは目を伏せて答える。


「すみません。僕はてっきり、会話が盗聴されていることや密偵が紛れ込んでいる可能性を考慮して、学園長があえて何も言わず来いと仰ったとばかり…。単独で来るのも、周りの方が密偵かも知れないから、誰かを寄越すことが出来ないと考えたのかと…。

寮に匿っていることもいつ知られてしまうかわかりませんでしたし、少し危険でも急ぎ寮を離れるために単独で行くことにしたんです。確かに浅慮でした。」


てっきりアキトが何も考えずに行動したのかと思っていた学園長は、予想外の答えに眉間に手を当て呻いた。


「まあ…、お前なりに考えたっつうのはわかった。だがよ、俺がその密偵なのかもしれなかったんだぜ?その場合はどうしたよ?」


するとアキトはシルバーナを優しく見つめた後、真っ直ぐ学園長を見据える。


「その場合は、もう他に頼れる方が居ないので、シルバーナ様を連れて逃げるつもりでした。そしてアビス王国に行って穏健派に彼女を保護してもらおうと思っていました。」


次期フェルミ公爵であるシルバーナならば、穏健派に匿って貰えるだろうとアキトは考えていた。


無論、フェルミ公爵がわざわざ逃亡先にヨミ国を指定していたのは、アビス王国内が危険であるためなのはアキトも理解していた。しかし、ヨミ国内ではシルバーナを保護出来る有力な人物に思い至らず、更にアビス王国の密偵が潜り込んでいる現状、アビス王国内にいるよりも危険であるとアキトは判断したのである。


「お前…、簡単に言うがかなり難しいぞ?最悪死ぬかもしれんのに、そこまでの覚悟があるのか?」


学園長の挑発するかの様な視線も気にせず、アキトは自分の心のままに力強く主張する。


「はい、もちろんです。シルバーナ様を守ると…、誓いましたから!」


シルバーナはその言葉を聞いて、顔を赤らめ瞳を潤ませていた。


(アキト様、そこまでの覚悟を…、私は何と言って感謝を表せば良いのでしょう。ですが、もしもアキト様が危ない目に遭うのでしたら私は…。)


そこまで考えてふとアキトを見ると、アキトはその視線に気づき、こちらを見て微笑んだ。シルバーナは自らの体温が急上昇するのを感じて思わず顔を背けた。


「があっはっは!いいねぇいいねぇ!見知らぬ嬢ちゃんのために命張るたぁ良い根性してんじゃねぇか。初めて会った時は、肉も女も喰えねぇ意気地なしの情けねぇクソガキだと思ったのによぉ。

なかなかどうして、骨のあるでっけぇ男じゃねぇか。」


学園長は何が嬉しいのか非常に上機嫌で饒舌に語っていた。


「だけどよぉ、さすがに携帯の電源は入れて置こうぜ?急な連絡があるかも知れねぇんだからな。」

「いや、あの~、それは…。」


アキトは歯切れ悪くなりながら、携帯の繋がらなかった理由を伝えた。


「前言撤回。やっぱお前小せぇわ。」


学園長の呆れた言葉が部屋に静かに広がった。

私事の関係でこれからの更新速度が遅くなりそうです。


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