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カベタス・サマナー  作者: 休眠熊
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第18話

相変わらず読みにくい文章しか書けなくてすみません。

「遅れて申し訳ありません。この付近の道路に何者かが爆発物および毒ガスを仕掛けたとの報告が有り、対策をしてから出発せざるを得ず、手間取りました。」

「わかりました。まあこちらは無事ですから余り気にしないで下さい。」


警察の特殊車両の中でコウガは説明を受けていた。近くにはアキトとシルバーナも一緒であった。スナイパー2人は警察車両に収容され、タウロは別の救急車に収容されていた。


(なる程、騒ぎでこの辺りの道路を閉鎖し、家から人々を出さない様にしましたか…。それに加えて、人払い用の導術も使用されていましたね…。それでも、警察の中にスパイがいるのは確定ですね。それと、もしかしたら学園内にも。)


アキトの住む寮と学園長の屋敷は学園を挟んで反対側にあり、尚且つアキトの住む寮は少々辺鄙な所にあったため、例え車で移動したとしてもそれなりの時間がかかるが、それでも二十分も移動時間が有れば着く距離にはある。

これほどの短時間で道路を封鎖しコウガ達の乗った車のみ封鎖した所に誘い込むには、コウガの行き先を良く理解した上で予め封鎖の準備をしておかなくてはならない。

仮に早く封鎖の準備ができたとしても、特殊車両が用意できていない理由がない。


政府関係者から連絡を受けた学園長は、すぐにコウガにアキト達の保護を、警察にバックアップを要請した。コウガの行き先が寮であると知り、帰り先が学園長の家であることを知るのは、一部の警察関係者と学園関係者のみ。その者のいずれかが暗殺者達に内通し、コウガ達の車を襲撃させたのは間違いないだろうとコウガは踏んでいた。


(これからは、どこに敵の目があるかわかりませんから、慎重に行動しないといけませんね…。)


そこまで考えた所で、コウガはアキトに向いて話しかけた。


「先ほど学園長に連絡を入れて、代わりの車両を用意して貰うことになりました。もうすぐ着くと思いますので、出発の準備をお願いします。」

「はい、わかりました。シルバーナ様、大丈夫ですか立てますか?」

「はい、私は大丈夫です。アキト様。」


アキトの問いに元気に答えるシルバーナ。少し前まで襲撃に震えていたので心配していたアキトであったが、シルバーナの様子を見て大丈夫だと安堵のため息をついた。


(やはり強いお方ですね…。しかし、意志が強い程、無理していても自分で気付かないこともありますからね。しっかり僕が支えないと。)


そうこうしている内に、学園長の使いを名乗る者が来たとの連絡が入り、コウガ達は警察官に別れを告げて特殊車両から出て行った。



「大変でしたね、コウガ先生。ですが、流石ですね。襲撃者達を撃退してしまうとは。」


学園長から新たに派遣された車両には、同じ学園の教師であるコチヤが乗っていた。


「いえ、ほとんどは逃がしてしまいましたし、其処まで大層なことは…。」

「いえいえ、それでも凄いですよ。学園長も流石だと感心していましたよ。」


短い会話の後、アキト達はコチヤの車に乗り込み、改めて学園長の屋敷に向かって行った。

屋敷に向かう途中、コウガはシルバーナに問いかけた。


「シルバーナ様に質問があります。純血導盟騎士団という名にご存知ありませんか?」


それはタウロが所属しているであろう騎士団の名前であった。シルバーナは少し考え、何か思い出したようであった。


「その名前には聞き覚えがあります。確か強硬派の団体の一つだった気がします。」


聞けば、純血導盟騎士団は、近年のアビス王国の軍事縮小計画により近々取り潰しが決まっていた騎士団の名前であった。


「かつては高名な騎士を輩出した名門であったのですが、近年は有名な名前を利用し、『貴族でも騎士になれる』と謳い高い月謝を貴族達から貰いながら、訓練内容を易しくして質の悪い騎士を輩出すると専らの噂でした。

それでなくても、一部の官僚と裏で繋がり、税金などの面で優遇を受けており、早く取り潰すべきだという声もありました。」


その騎士団は前国王のデモロドに対して、表面では従いながらも裏で反発していた。それが今回、強硬派のマクウィスが王となるため、団体存続の為に暗殺の仕事を引き受け、その手柄を以て高待遇で取り立てて貰おうと画策したのだろうとシルバーナは語った。


「ですが、何故ヨミ国の銃で襲撃してきたのでしょうか?導族ならば導術を使った戦いの方が得意なはず…。それに彼らの騎士団は導族主義的な考え方をしていて、人族の武器である銃はかなり毛嫌いしていたのに…。」

「それは、フェルミ公爵殺害の犯人をヨミ国の反導族派であると偽装するためでしょう。」


シルバーナの疑問に、コウガは簡潔に答える。


「フェルミ公爵は穏健派筆頭、そんな方が殺されたとあれば、まず疑われるのは対立する強硬派です。その追求を逃れるために、ヨミ国内で銃を以て襲撃してきたということです。」

「つまり、穏健派と対立しないため…ということですか。ヨミ国への亡命が割りとすんなりいったのも彼らの策の内、まんまと嵌められてしまいました…。」


シルバーナは肩を落とした。自分たちのせいでヨミ国に迷惑をかけている現状を申し訳無く思っている様であった。


「それに、今はアビス王国内は結構荒れていると聞きました。今回の件はその不満を逸らす面もあると私は考えています。」

「?、確かに、今王国内は国王の急逝、王子達の亡命などで混乱しており、民は不満を抱いております。新しい王がデモロド王を殺したという噂も聞こえてきた位でした。しかし、穏健派の私達を殺した所で、どうして不満が逸れるのですか?」


コウガの考えに疑問を呈すシルバーナ。


「フェルミ公爵は民に慕われる方、そんな方やその親族がヨミ国の人族に殺されたとあれば、ヨミ国に対する感情は悪化します。

そこで民衆を扇動し、ヨミ国との戦争に突き進み、ヨミ国への敵愾心で王に対する不満を塗りつぶすつもりでしょう。敵を作ることで不満をそちらに向けさせようとしているのです。」


それを聞いていたアキトは発言の許可を取って口を挟んだ。


「なる程、その為のビデオカメラですか。人族に間違えそうな格好も、人族がシルバーナ様を襲った証拠として映像を納めるためだったのですね。」

「はい、そうですね。恐らくは、アビス国内の穏健派も未だ勢力が強く、民衆も嫌戦的なのでしょう。穏健派の口を黙らせ、民衆を焚き付けるための材料が不足しているため、今回の暗殺をそれに利用しようとしているのでしょう。

外交官がやけに挑発的だったのも、ヨミ国から手を出させ、反撃を正当化するため。つまり彼らは対立する派閥を弱めつつヨミ国に国民の不満を向けさせ、強硬派の王が今立つことを認めさせようとしている訳です。」


そこまで聞いたシルバーナは怒りに震え、思わずコートを握る手に力が入る。


「あの人達は…、様々な技術的な支援を受けた大恩あるヨミ国に牙を向け、更に自国を戦火に巻き込み数多くの人々に苦しみを強いさせるなんて…、どこまで愚かなのでしょう!」


そこで、憤るシルバーナをアキトが宥めた。


「まあまあ、シルバーナ様、余り怒りに任せるのはよろしくないですよ。怒りに我を忘れては視野が狭くなり、冷静に考えられなくなります。今は何より暗殺者に殺されず、ヨミ国とアビス王国との間に戦端を開かせないことが何よりも大事なのですから。」

「アキト様…、すみません、少々頭に血が上ってしまいました。」

「いえ、謝ることはないですよ。それに、シルバーナ様がヨミ国を“大恩ある”と言ってくれたことにとても感謝していますし、民の事を大事に思う素晴らしい方だと再認識できましたしね。ただ、やはり怒った顔は見たくないです。可愛い顔が勿体無いですからね。」

「か…、かわ…!はう…!」


アキトの不意打ち気味の言葉に、油断していたシルバーナは思わず赤面する。


「それと先生、一つ気になることが。」


そんなシルバーナを一先ず置いておいて、アキトはコウガに質問する。


「何でしょうか?」

「敵暗殺者がカメラを持ち、銃で攻撃してきたということは、フェルミ公爵はまだ殺されていないのでは?」


アキトの発言にシルバーナは目を見開いた。


「ええ!どういう事ですか!?」

「…これは推測になるのですが、もしもフェルミ公爵を銃撃で殺せたのなら、それだけで焚き付けの材料に充分だと思うのです。シルバーナ様を襲う際に銃を使う必要、その様をビデオで撮る必要が余り無いのではと…。」


アキトの指摘にコウガは目を細めた。


「確かに、その可能性もありますね。しかし、タウロが炎導術でフェルミ公爵を殺害したと言っていました。」

「え…、それでは…。」

「ええ、導術で殺害してしまったから、シルバーナ様を銃で殺す様を撮ろうとしたのかもしれません。だから、学園の生徒が犯人と言ったのでしょう。訓練されていない人族では、上手く導術を扱えないですからね。」

「しかし、仮にも地竜皇帝とまで呼ばれた方が、そんな簡単にやられるとは思えないのです。」


コウガの言葉に尚も食い下がるアキト。


「それは私も考えました。実際にタウロと戦って、そこまでの実力では無いこともわかりましたしね。ですから、炎導術を受けた際にわざとやられた振りをして上手く逃げた可能性もありますね。


恐らくあのエミリオとかいう騎士もそう考えていたのではないでしょうか。私がタウロと戦っている間も周りを気にしていました。今思えば、あれはフェルミ公爵がもしかしたら生きていて、シルバーナ様を襲う際に何処かから邪魔してくる可能性を考慮していたのでしょう。シルバーナ様はどうお考えですか?」


コウガとアキトの希望的観測に対し、シルバーナは浮かない顔であった。


「私としては、そうあって欲しいとは思います。只、お祖父様は“地竜”の種族なのです。地竜は銃弾や剣のような物理的な攻撃に対する防御力が非常に高いのですが、炎や水などの自然現象系統導術に対する防御力がかなり低いのです。

かつてはそのような導術使いは数が少なく、お祖父様は戦場でかなり活躍していたと仰っていました。しかしここ最近は導術使いが増え、またお年を召してしまったので昔の様には戦えず、それ故一線から退いておりました。お祖父様はその方が気が楽だと仰っていましたが、悔しさが滲み出ていました…。もしもタウロの炎導術がお祖父様に当たってしまったのなら、もしかしたら…。」


そこまで言ってシルバーナは黙った。アキトはシルバーナに希望を持たせようと気を使ったことがかえって逆効果だったとわかり、焦る。


「だ、大丈夫ですよ!必ずフェルミ公爵は生きていますって。少なくとも僕はそう信じています。希望を持って下さい、あなたが諦めてはいけません。」

「アキト様…、そうですね、まだ何も決定的な証拠が出た訳ではないのです。私が諦めてはお祖父様に叱られてしまいます!」


空元気ながら、アキト達に気を遣わせまいと振る舞うシルバーナを見て、アキトは自分は無力だと痛感し、嘆息した。

それでも、何かの役に立ちたい、目の前で必死に頑張る小さな子の助けになりたい、そんな思いがアキトの心に溢れ出し、気付くとアキトはシルバーナを抱き締めていた。


「!、アキト様…?」


突然のアキトの行動に、シルバーナは頬を紅潮させながら困惑する。


「大丈夫、大丈夫ですよ。あなたは必ず僕が守ります。どんな事があっても見捨てません。

僕は無力で、あなたのお祖父様の代わりにもなれません。ですが、体を張ってあなたを守ること、あなたを受け止めることは出来ます。

どうか頼って下さい、甘えて下さい、僕にあなたの重荷を背負う手伝いをさせて下さい。

だからどうか、どうか…。」


気付くとアキトは涙を流していた。暖かな雫がシルバーナの服に落ち、みるみるうちに染み込んでいった。


「す、すみません!あれ、僕どうして泣いて…。」

「アキト様…、有難うございます…。」


見ると、シルバーナも泣いていた。

アキトの暖かい涙が自分の為に流されていることに気付いた時、もう耐えることができなかった。アキトのその姿がどうしようも無く愛おしく、溢れる心が涙に変わり、目元から感謝を零していた。


「シルバーナ様?大丈夫ですか?どこか痛いのですか?」

「ふふっ、大丈夫、私は大丈夫ですよ…。」


シルバーナは笑った。泣きながら笑っていた。とても嬉しくて泣いて、安堵して笑って、シルバーナの心は満たされた。


「ただ…、私の為に体を張って守るのはやめて下さい。私を庇ってアキト様が傷つくのは見たくありませんから。」

「いえ、シルバーナ様、それは…。」

「それでも何でもです!ただ、私も死にたくはありませんので、共に生きましょう。あなた様が私を庇うのでは無く、互いに助け合ってなるべく互いに傷つかないようにしたいのです。」

「シルバーナ様…、わかりました。なるべく努力します。」


シルバーナは一度離れた体を再び密着させ、アキトはそれを優しく抱き締めた。互いの心臓の鼓動を重ね、体温を共有し、2人は互いの存在を確かめ合っていた。それをコウガは微笑ましく感じ、しばらくそっとしておこうと思っていたが、学園長の家が見えてきたため、仕方なく2人に話しかけた。


「もしもし2人共、そろそろ学園長の屋敷ですよ。」

「ハッ!はいィ!すみません!私…あう…。」

「気付かせて下さり有難うございます。」


コウガの声に我に帰り、大胆なことをしてしまったと赤面するシルバーナと、純粋にコウガに感謝するアキトであった。


「私…、最後まで話に加われなかったなぁ…。」


一人だけ完全に蚊帳の外であったコチヤの寂しい独り言は、夜空に吸い込まれて消えていった。

新キャラが空気です。

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