表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カベタス・サマナー  作者: 休眠熊
18/132

第17話

先生無双回です。

恐怖で動けなくなったタウロの巨体を、コウガは首を片手で掴み易々と持ち上げた。


「ぐ…、があ…、だずげ……ガハァ!」


苦しみの余りもがくタウロを、コウガは地面に叩きつける。強かに背中を打ち付けたタウロは肺の中の息をほとんど吐き出し、続く言葉を失う。


「誰が喋っていいなんていいましたか?」


コウガの色の無い声にタウロは息を呑むが、それでも反抗的な態度をとろうと努力する。


「おやおや、まだ教育的指導が足りないと見えますね。」

「何が…指導だ…暴力教師め…!」


それはタウロの必死な強がりだったのだろう。しかし、その声は明らかに恐怖で震えていた。


「確かに体罰は子供の教育には余り良いとはいえませんが…。最近はPTAが騒ぎますからね…。」


コウガはそこで言葉を切ると、再びタウロの角を掴んで持ち上げ顔を近付ける。


「でもあなたは子供ではありませんし、今回のケースはまあ、特別と言うことで一つ。」


コウガの顔はヘルムで隠れて良く見えないはずなのに、タウロには何故か満面の笑みを浮かべる魔王の顔が見えた気がした。

刹那、タウロの視界が反転し空が見えた。タウロは次に来る痛みを予想し絶望の顔をした。


「先ずは愛の鞭です。但し、鞭はあなた自身が務めなさい!」


タウロを持ち上げては背中から投げ落とし、また持ち上げては投げ落とす。

タウロは、振り回される度に頭の血が下に行き貧血で軽く気を失いかけては、次の衝撃の痛みに目を覚ます。


「さて、愛の鞭はこの位にして…次は土下座の練習です。しっかり頭を地面に着けるのですよ!」


一頻りタウロを投げたコウガは、そう言うとタウロを空中で半回転させて足を掴む。

そしてヌンチャクを振る要領でタウロを振り回して地面に頭を叩きつける。

叩きつけたコンクリートの地面は、次第に歪み、凹み、裂けて粉砕されていった。

足を持って振り回されたため、今度は頭に血が昇り、顔が真っ赤になって、切れた鼻や口から夥しく出血、辺りに血しぶきを撒いていた。


「エミリオ様…、タウロを助けなくて良いのですか?」


タウロの惨状を見た他の暗殺者が、エミリオに対して不安そうに尋ねた。


「良い。これは神聖な決闘だ。相手が卑怯な真似をしない限り手を出すことはならない。それに、タウロは色々と余計なことを喋り過ぎた。この場で死ぬならそれも良し。命あって敵に捕縛されたなら…」

「されたなら?」

「隙を見てタウロを殺す。証人を敵に渡してはならない。失敗したら一度引く。」

「…わかりました。」


そうこうしている内に、十二分に痛めつけたタウロに最後の説教を始めた。


「さあ!最後は実践!実際に土下座しなさい!しっかりとアビス王国の方を向いて謝りなさい!心からこれまでの行いを悔いて、更正することをここに誓いなさい!」


コウガは掴んでいたタウロを思い切り上空に投げ上げた。

綺麗な側転宙返りを何周も描きながら、タウロは空に舞い上がった。

そして、コウガもジャンプして飛び上がり、空中で緩やかに落ちかけているタウロを逆さまに掴むと、足でタウロの上半身をロックし、きりもみ回転しながらタウロの頭を地面に叩きつけた。


「ぎやああああああああああ‼︎」


叫び声を上げながらタウロは頭を地面に突き刺して、そのまま頭を地面に埋めたままうつ伏せに倒れる。丁度、アビス王国の方角に土下座をするような形になって、気を失った。


「さて、彼はこんなになってしまいましたが、まだやりますか?他に誰か私の指導を受けたい方は?」


挑発するコウガに対して、エミリオは冷静に答えた。


「コウガ殿、そなたの武勇、見事であった。私としても是非貴君と“ケン”を交えたいが、どうやら時間が来てしまったようだ…。」


耳を澄ませると、パトカーのサイレンの音が聞こえて来た。


(ようやく来ましたか、予想より時間がかかりましたね…。まあ、恐らくは警察に潜んだスパイのせいでしょうが。)


エミリオはきびすを返し、部下に言葉を投げた。


「やれ。」


短い命令で察した部下達は銃を構えて発砲する。

その銃弾の行き先は、コウガでもシルバーナでもなく、地面に刺さったタウロであった。残りの六人が三方から一斉に銃撃を仕掛けたため、コウガ一人でタウロを庇いきることは不可能であった。


「させません!」


しかし、タウロに向かう凶弾は、タウロの命を刈り取ることが出来ず、硬い物に弾かれて虚空を舞った。コウガのリビングアーマーに包まれたタウロがそこにいた。


「その創造召喚、そのような使い方も出来るのか!益々持って素晴らしい!亜人にしておくのがもったいない位だ!」


エミリオは驚嘆してコウガを褒め称えた。


「あなたに誉められる謂われはありません。」

「つれないな、まあ構わないが。それでは私たちはこれで一先ず退散しよう。騎士タウロはそちらの好きにすると良い。コウガ殿、また戦場で相見える時を楽しみにしている。」

「出来れば次に会うときは、場所は法廷が良いですね。」


エミリオはフッと短く笑い、部下に告げた。


「さあ!引き上げだ!スナイパーに各自撤退するように連絡しろ!」

「エミリオ様…。」

「どうした?」

「スナイパーの2人と連絡が取れません…。」


エミリオはそれを聞いて、驚いてコウガの方を見た。


「スナイパーの方々は、少し前に片付けさせて貰いました。そちらに居られると、少々厄介だと思いましたので。」

「いつの間に…、そうか、最初の閃光の時か!」

「…あなたに答える義理はありませんね。」

「…お見それいたした。」


エミリオの見当は妥当であった。コウガは、最初の閃光の瞬間リビングアーマーを4体、車の後ろに出現させ、コウガに暗殺者達の注目が向いていた間にその場を離れさせ、スナイパーを探しに行かせたのである。

コウガの車の位置を狙撃できる位置は余り多くなかったため、虱潰しに探して特定、スナイパーを取り押さえたのである。


エミリオは仲間に指示し、最初に倒れていた男を移動させ、車に乗り込んだ。そのまま車は走り出し、暗闇の中へ消えていった。



(本当なら、追い掛け捕まえるのが良いのでしょうが、今はアキト君とシルバーナ様を守るのが役目、深追いはしません。しかし、なかなか大変なことになっていそうですね。)


車の中からこちらを不安そうに見てくるアキト達に、小さく大丈夫だと手を振る。

そして近付いて来るパトカーを、訝しげに見つめた。


「一体どこまで深く、広く入り込んでいるのでしょうかね…。」


その小さな呟きは、大きくなってきたサイレンの音に掻き消され散っていった。

これでも死なないように手加減してます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ